9月28日のながさきニュース
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長崎新聞
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伊藤前市長射殺事件、あす控訴審判決 「死刑」か「無期」か量刑焦点

| 城尾哲彌被告 |
長崎市のJR長崎駅前で2007年4月、選挙運動中だった伊藤一長前市長=当時(61)=を射殺したとして、殺人や公選法違反(選挙の自由妨害)などの罪に問われ、一審長崎地裁で求刑通り死刑判決を受けた元暴力団幹部、城尾哲彌被告(62)の控訴審判決が29日、福岡高裁で言い渡される。
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長崎地裁は2008年5月、元暴力団幹部、城尾哲彌被告(62)に求刑通り死刑判決を言い渡した。弁護側は量刑不当で事実誤認があるとして控訴。一審判決が「民主主義を根底から揺るがした」と指弾した事件は高裁に舞台を移した。
控訴審の審理は、今年1月から6月まで3回。弁護側は▽犯行は単純で被害者は1人▽民主主義制度や選挙制度を否定していない−などと主張し、減刑を訴えた。一方、前市長の妻、十四子(とよこ)さん(63)は意見陳述書で「処罰感情は一審の時から変わることはありません」と、あらためて極刑を求める考えを示した。
被告は控訴審でも「市の不正」を主張することに固執し、遺族の反感を買った。被告と長崎市とのトラブルのうち、一審判決が意図的に起こしたと認定した市道での車両事故について「わざとではない」と主張。市が事故の関係書類を偽造したと訴えた。
殺害の動機に関しては「目と目が合った時に体が反応した」と多くを語らず、殺害に至るまでに別の要素や動機があったのか、被告の口から「新事実」が飛び出すことはなかった。市長射殺事件とは、およそ懸け離れた事故などに時間が割かれ、一審同様、空虚な印象さえ残して控訴審の審理は終結した。
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最大の焦点は死刑の維持か否か。死刑選択の目安とされる1983年の最高裁判決、いわゆる「永山基準」は犯行の罪質や結果の重大性、特に被害者の数などを考察し、刑事責任が極めて重大な場合に「死刑選択も許される」と慎重姿勢を示した。
これ以降、死亡被害者1人で殺人の前科がなく、身代金目的の殺人などでもない被告への死刑は回避される傾向が続いた。しかし近年、厳罰化の流れが加速。一審長崎地裁は行政対象暴力、選挙妨害として異例の犯行という点を重視し、死刑を選択した。
「被害者が複数でなければ死刑にできないと解釈するのは誤り。永山基準は既に過去のものだ」。土本武司筑波大名誉教授はこう指摘する。「永山基準は『原則無期懲役、例外死刑』だったが、山口県光市の母子殺害事件で被告の元少年に死刑を選択して以降、それが逆転した。特に酌量すべき事情がない限り、決然と死刑を選択すべきだ」
一方、石塚伸一龍谷大法科大学院教授(刑事法)は市長射殺事件について「死刑か無期か、五分五分」とみる。一審判決が選挙運動中だという事実を過剰に評価しているとし「政治、選挙テロだというのは結果論。私怨(しえん)による事件で、それほどの計画性もうかがえない。正当に事実認定すれば死刑判決は突出して重い」と話している。
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