和歌山

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支局長からの手紙:被害者に寄り添う/下 /和歌山

 犯罪などの被害者に「一人じゃないですよ そばに私たちがいます」と、寄り添う紀の国被害者支援センターは、寄付金などで運営し、ボランティアが支えています。40時間以上の研修を受けた直接支援員16人が、電話や直接相談に応じます。さらに、10時間以上の研修を経て約20人のボランティア支援員が補助活動を担当。今夏、8日間の研修を終えた介護福祉士の資格を持つ女性(54)は、「多岐にわたる講師、ご遺族の話を聞き、被害者たちが受ける痛み、無念さを実感した。人ごとでなく、一人一人が出来ることをしなければ。私もヘルパーの経験などを生かしながら、何らかのお手伝いをしていきたい」と話していました。

 同センターの電話相談(073・427・1000)は、月~金曜日の正午~午後4時と木曜日午後6~9時。年90件ほどの相談があります。最近では、女性が殺され、幼子が残された事件で、親族里親制度を活用。おばあさんが「里親」となることで、補助金も受けられるようになりました。活動の広がり、充実が期待されます。

 私は研修を取材していて、何人もの講師から「報道などによる2次被害」という言葉を聞かされ、身につまされました。

 色が変色した手紙を今も大切にしています。ちょうど20年前の10月、大阪府岸和田市で鉄道事故によって幼児を失った父親からのものです。「初七日が過ぎました……二度とこのような痛ましい事故が起こらないよう、報道が頑張ってください」と書かれています。事故直後、記事に添える幼児の顔写真を入手するため、遺族宅を訪れました。大抵は追い返されるのですが、ご両親は「一番可愛い写真を載せてやってください」とアルバムを差し出してくださいました。でも私はその後、別の取材に追われてこの事故のことを忘れていました。思いがけず手紙をもらって頭を殴られたような衝撃を受け、今も戒めとしています。

 さて、10月異動で支局員が転出しますので、ごあいさついたします。【和歌山支局長・嶋谷泰典】

 ◇「なぜ」を求め続け

 「帰れ!」。海南市で昨年9月、女子高生が特急電車にはねられ、事故現場近くで聞き込みをしていた時の一言でした。「事故のことについて教えてほしい」と尋ねた途端に男性の顔は赤くなり、玄関の引き戸の鍵まで落とされ、追い返されてしまいました。

 後からわかったのですが、男性は偶然にも、亡くなった女子高生の父親でした。秋雨の中、何時間たっても死者の身元は明らかにならず、事件か事故かもはっきりしないまま。記事の締め切り時間が迫り、私の「知りたい」という気持ちは焦るばかりで、遺族宅とは知らずにこの家を何度も訪れていました。今思えば、相手に自分を押しつけていたのかもしれません。

 和歌山で記者生活を始めて1年半。少し早いですが、石川県の北陸総局に異動します。別れ際になっても「早く記者らしくなれ」と言われていますが、和歌山で学んだ「なぜ」「許せない」を追求する姿勢を忘れず、記者として歩んでいきたいと思います。ありがとうございました。【宮嶋梓帆】

毎日新聞 2009年9月28日 地方版

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