関心の高まりが高投票率に→それが自民に不利
自民の負け!民主の勝ち?かどうかは今後に

▼民主圧勝ムード
今度の選挙は風が吹く、というより大気が移動している気がする。
風は一部の空気の流れだが、いまの自民大敗、民主圧勝ムードは、一部や一時的なものでない。押しとどめようもない地殻変動的なものだ。
生ぬるいよどんだ空気が、新鮮な冷気に入れ代わるようなものか。

マスコミ各社は「民主党300議席」の世論調査結果を大きく見出しに打った。こういう予想は控えめに行われるものなので、本番ではこれを超えるものになる可能性が大きい。自民党は二桁転落、かつての社会党並みの少数政党の第一歩になるかもしれない。これは自民党の負けなのは確かだが、民主党の勝ちになるかどうかはしばらくたたないとわからない。

自民大敗を見越して、地方の保守系議員の動きはにぶい。あまりの民主圧勝ムードに様子見を決め込んでいる向きもある。これでは自民党は勝てない。

世論調査のアナウンス効果には、激励票や同情票が集まるアンダードッグ効果(負け犬効果)と、その逆のバンドワゴン効果(勝ち馬効果)があるといわれているが、今回の場合は勝ち馬効果の方が強いだろう。歴史の転換点でその逆のことをしたがる人は投票には行かないものだ。

政権選択選挙─というのが多くのニュースの見出しだ。こう報じられては自民党に投票する人はますます少なくなる。この見出しじたい民主党への投票を促すようなものだ。自民党としては抗議したいぐらいのものだろうが、そんなことをすれば逆効果になるのでそれもできない。

民主党への期待もあるだろうが、政治への関心の高さがうかがえる。以前はあった白けムードはない。これも自民党にとって不利だ。「無党派層は眠ってくれればいい」といって大きな非難を浴びた森喜朗元首相の発言を思い出す。

普段投票しない人が投票すれば政治は変わる。人々が投票に行かないのは、自分ひとりぐらい行かなくても大勢に影響ないと思うからだ。しかし、自分の一票が影響を及ぼしそうだとわかると俄然変わる。世論調査で投票に行くと答えた人はこれまでになく多い。期日前投票率は前回の1.7倍にまでふくらみ、全体の一割がこれで投票したようだ。実際私も投票してきたが、時間帯によっては列ができ、順番待ちの状態だ。

こういう人は、保守的票をいれる可能性は少ない。これまでと違うことを期待する人たちがこれまでと違う行動をとるわけだから改革ベクトルの票となる。それが各紙が民主圧勝と予測するベースになっている。

▼マニフェストは問題でない
マニフェストが言われているが、政策など問題ではない。保守政権から革新政権に代わるわけだから、政策よりもっと根っこの大事な部分が革命的変革を起こすはずだ。
自民党は政権選択でなく、政策選択をアピールしているが、どこまで有権者の耳に届くだろう。政策をいう前に「総裁を一年ごとに変えません」とマニフェストに書くべきだろう。

マニフェスト論議が盛んなのはマスコミが取り上げやすいからだ。項目別に細分化され、問題点が列挙されている。そのままテレビ番組の進行表にもなる。新聞記事もこれを下敷きにすれば書きやすい。ネットでも多く触れられているがたいした意味はない。いっぱし事情通ぶるにはマニフェストをなぞればいい。

投票する際の判断理由は年金問題がトップだ。極めて当然だ。自民党が首相を何人も変えて総選挙を引き延ばさなければ、これが選挙の争点になっていたはずだ。年金問題はこれまでに多く話題になりすぎて、マスコミで扱われることが少なくなっているが国民の最大関心事だ。年金選挙になるのを避けているうちに政権交代選挙になってしまったのが実態ではなかろうか。

政権交代の効用は個々の政策ではなく、社会全体をとりまく環境が変化することが大きい。それは目に見えない形で国民生活に影響を及ぼす。まず裁判の判決が変わるだろう。こんなことはマニフェストには書かれていない。あってはならないこと─などというのは建前で、これまでも上を見て判決文を書いていた裁判官が政権交代で変わらないわけがない。裁判が変われば世の中も変わる。日本はなんといっても法治国家なのだ。

▼予算の根拠は
民主党の政策に対して、予算の根拠を示せと自民党は言っているが、まだ政権をとったわけでもない党が予算の根拠など示せるわけがない。どだい無理な注文なのだが、それをいうと「なんだ、ダメじゃないか」といわれるので民主党はそうはいえないだけだ。

自民党の枠組みの中で民主党の政策を実行しようとすれば予算はたりなくなるのは当たり前だ。財布がひとつしかないのにふたつの商品を買おうとするようなものだ。しかし、実際政権をとれば、それまで自公与党が聖域として手をつけなかったところに野党民主党はズバズバ切り込めるのだからかなりの予算が出てくるだろう。
自民党が手を付けられなかった、官僚の天下り・渡りには年間12兆円もの税金が使われている。これは目立つ大口だけの話で、下流まで含めればこの何倍かになるだろう。この国は官僚が税金に寄生するのが合法化されてしまっている。長期政権下の国家にありがちなことだ。

▼ネガティブキャンペーン
自民党はきれいに負けたほうがいい。自民党は自由な党でもあるが、保守の党でもある。苦しくなって本性が出たのか、安全保障や日教組批判を強調したパンフレットを百万枚まいたという。これは今後の自民党にマイナスだ。
安全保障は大事な問題かもしれないが、現時点での優先順位は低い。これに影響されるのはよっぽど保守的な人だけだろう。一般有権者にいたずらに不安をまいているようなものだ。
組織率が3割に満たない日教組が教育をゆがめているというのも、実態から遊離した話だ。それより、総選挙前に銭谷真美・前文部科学事務次官を東京国立博物館館長に駆け込みで天下りさせる同省の体質のほうが教育をゆがめているのではないだろうか。

*私が入手した自民党のパンフレット。各地で百万枚がポスティングされたという。自民党支持者でも引いてしまうような内容ではないだろうか。

─追っかけ情報─
昨夜放送のテレビ朝日系「テレビタックル」の中で名前は不明ですが、どこかの政治家がこのパンフレットと、読者のコメントにある、色違いのような二種類のパンフレットが出回っていることを、実物を持ち出して指摘していました。自民党議員もその存在を認め、党本部から来たようだが、配布は各選挙事務所の判断─みたいなことを言っていました。
自民党パンフ自民党パンフ2

 

 

 

 

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