えっ…横審　朝青ガッツポーズ承認！？

両国国技館で行われた横綱審議委員会

ガッツポーズ問題をめぐって、横審がまさかの方向転換だ。場所後恒例の横綱審議委員会が２８日、東京・両国国技館で行われた。会合では秋場所千秋楽の土俵上で披露した横綱・朝青龍（２９＝高砂部屋）のガッツポーズ問題で白熱したが、冒頭での師匠・高砂親方（元大関・朝潮）の謝罪もあってか、ガッツポーズ容認論が出るまさかの展開に。朝青龍バッシングの急先ぽうだった内館牧子委員（６１＝脚本家）も反発を受けるなど、横審の足並みがついに乱れた。

朝青龍に対して厳しい意見を浴びせてきた横審が突然、その矛を収めた。この日の会合では千秋楽の土俵上で朝青龍が見せたガッツポーズをめぐって約２０分間議論が交わされたが、会見で経過報告した鶴田委員長の見解は、まさかの容認論だった。「（ガッツポーズに関する）一般ファンの気持ちは違う。協会も考えながら対応した方がいい。違和感はないという声が圧倒的に多い。委員の中でもいいんじゃないかという意見もあった」。さらに「（個人的には）ガッツポーズは良くはないが違和感はない」と“大甘裁定”を口にした。

伏線はあった。この日、師匠の高砂親方（元大関・朝潮）が出向いて「ああいうことをしてしまい、誠に申し訳ない」と会合の冒頭で頭を下げた。「朝青龍も連れてくる予定でしたが、どうしても外せない用事があって。ご勘弁ください」と先手を打つと、盛り上がりかけたバッシングの嵐は一気に収まった。

もちろん強硬な意見も出た。石橋委員は「ガッツポーズ禁止」のルール化を要望し「３度目（のガッツポーズ）は問題になりますよ」と厳しい態度で接することを示唆。内館委員も「私個人としては絶対いけないと思う。朝青龍はいつも反省しているからオオカミ少年と一緒」と強硬論を唱えた。だが「ガッツポーズを許すのか」「誰が教育するのですか」と武蔵川理事長（元横綱）に詰め寄った内館氏に、他の委員から「あなたは朝青龍が嫌いなのか？」との声が飛ぶなど、ついに足並みはそろわなかった。

初めて朝青龍のガッツポーズが問題となった今年初場所後には厳しい処分も辞さない構えだった横審も気が付けば腰砕け。内紛寸前の話し合いの末、朝青龍への処分は見送られた。だが、時代にマッチした価値観が相撲界に必要なのかどうか。「伝統文化」を標榜（ひょうぼう）する大相撲が迷走し始めた。