「八ッ場ダム」よりもっとひどい!? 自然破壊・税金無駄遣いのダム紹介します(下)
2009年09月29日07時15分 / 提供:PJ
【PJニュース 2009年9月29日】(上)からのつづき。これらにもまして、仰天したのが「釜無川の砂防ダム群」だ。南アルプス北部、山梨県と長野県の県境にある鋸岳を源頭とし、下流は富士川となるのが釜無川だ。この川の源頭域から約5-6キロまでの流域がひどい。砂防ダムの展示場と化している。場所はと言うと、中央道の小淵沢インターから国道20号線に出て諏訪方面に少し走ると武智温泉の看板がある。そののどかな細い道を進むと車両通行止めのゲートに突き当たる。ゲートをくぐって歩いて進むと、辺りの様子ががらりと変わる。過疎が進んだ冬景色が一転して、「砂防ダム銀座」といった様子のにぎやかな光景に変わった。
まずは添付の写真を見て欲しい。真新しい砂防ダムがこれでもかというほど並んでいる。それらダムの一つ一つには地元の小学生が描いた絵がはり付けられ、書いた本人の名前まで彫られている(写真右中)。5年もたっていない真新しい砂防ダムなのだが、すでに土砂で埋もれてしまっているものも多い(写真左中)。展示場といっても立ち入り禁止区域となっているので、一般通行人は入れないことになっている(写真左下)。だが、登山地図には登山道として記されているし、鋸岳から下山してくるとおのずとこの道に出てしまう。しかも、不思議なことに、その立ち入り禁止区域に一般通行人に富士川のことを説明する立て看板が立っている(写真右下)。一般通行人が通行禁止では、ダムに絵を添えた小学生も立ち入り禁止なのだろう。なんのための記念碑なのか不明だ。
砂防ダム工事現場には数年で埋没してしまう砂防ダムのために川を両側と川の中の計3本の作業道が付けられている。作業道が3本も必要あるのだろうか。この辺りは砂防ダム建設だけではない。崩れそうな山肌を削って、コンクリート張りにしてしまった斜面が山ほどある。そして、いまでもあちこちで続いている。この工事をするために、また作業道を敷く。工事が終わったら要らなくなってしまう道や橋だらけなのだ。このため、山容は姿を変えてしまい、時折谷間に響き渡るシカの甲高い鳴き声が、山の悲鳴に聞こえてきてしまった。
作業道の脇にあった立て看板にこう記されていた。「富士川は南アルプスを水源とする日本3大急流の一つです。約3キロ上流の釜無川本谷が流域の人々に恵みを与えてくれる清流の水源となっています。-富士川水源碑設置委員会」。
そう、ここは小学校の教科書にも出てくる日本三大急流の源流なのだ。急流なので周りは険しい山々なのは当然だ。そこにあえて砂防ダムをこれでもかというほど造る必要があるのだろうか。国土交通省は、教科書に出てくる急流を、急流でなくしてしまいたいのだろうか。
しかもこの「急流」、実は源頭域の5-6キロだけしか続かない。その下流は広々とした河川敷が拡がる緩やかな流れが甲府盆地までつづく。この川が国道20号線までたどり着く間には細々とした温泉宿が1軒あるのみ。ほぼ無人地帯といっていいだろう。なので、人家への土砂災害など考えられない。
この工事現場に行ったのは今年1月半ばの連休だった。雪が1メートルほどつもり、寒波が押し寄せる中、休日だというのに工事が続いていた。3月末までの予算消化のためだろう。看板には工期が3月31日までと記されていた。
これらの疑問があって、工事を発注している国土交通省関東地方整備局の富士川砂防事務所釜無川出張所に取材した。まず、釜無川沿いの道の通行止めについては「道はもともと私有地内にあって、作業をするために地権者から土地を借りて造った道路です。だから、一般の方の通行はお断りしています」との回答した。
そこで、次ぎの質問に移った。立ち入り禁止区域内には登山者や観光客用の立て看板、砂防ダムの小学生の名前入りプレートや富士川水源碑などがある。また「ご迷惑をおかけします。堰堤建設に必要な工事用道路を施行しています」という立て看板もある。立ち入り禁止区域内に、これら一般通行人を対象にした看板や記念碑があることに疑問を抱いた。これらについて聞くと、「あっ、そんなのありましたっけ。そうですよね、変ですね・・・」といって黙りこくってしまった。
次いでこれら工事の総工費や請負業者と地元政治家との関係などを質問したのだが、「報道担当はこの出張所にいないので、担当の者から折り返しご連絡いたします」と言って電話を切った。電話口からの印象だと、この担当者はこれらについてホントウに知らなかったのだろう。ただ、国交省の担当者からPJにはいまだ返事はないのが残念だ。
日本の山の中はダムだらけだ。産業のない山間地では致し方ないのかも知れない。時折、山の中で林道やダム工事の方々と立ち話をするが、不景気で生活が苦しいということばかり。その表情を伺っているだけでも、日本の地方は疲弊していることがひしひしと伝わってくる。
ただ、国はダム建設をする理由やその税金の使われ方をもっと説明すべきだ。ダムの工事現場だけでなく、その周り一帯を一般人の立ち入り禁止にしてしまうと、その地域一帯がダムの秘密基地のようになってしまう。こうすることによって、納税者が知らぬうちに自然破壊がまかり通り、税金のムダ使いがエスカレートしてしまう。釜無川源流域では、こんな印象を受けた。
この続編として、国内初の砂防ダム取り壊しによる渓流の再生プロジェクトを掲載する予定です。【了】
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まずは添付の写真を見て欲しい。真新しい砂防ダムがこれでもかというほど並んでいる。それらダムの一つ一つには地元の小学生が描いた絵がはり付けられ、書いた本人の名前まで彫られている(写真右中)。5年もたっていない真新しい砂防ダムなのだが、すでに土砂で埋もれてしまっているものも多い(写真左中)。展示場といっても立ち入り禁止区域となっているので、一般通行人は入れないことになっている(写真左下)。だが、登山地図には登山道として記されているし、鋸岳から下山してくるとおのずとこの道に出てしまう。しかも、不思議なことに、その立ち入り禁止区域に一般通行人に富士川のことを説明する立て看板が立っている(写真右下)。一般通行人が通行禁止では、ダムに絵を添えた小学生も立ち入り禁止なのだろう。なんのための記念碑なのか不明だ。
砂防ダム工事現場には数年で埋没してしまう砂防ダムのために川を両側と川の中の計3本の作業道が付けられている。作業道が3本も必要あるのだろうか。この辺りは砂防ダム建設だけではない。崩れそうな山肌を削って、コンクリート張りにしてしまった斜面が山ほどある。そして、いまでもあちこちで続いている。この工事をするために、また作業道を敷く。工事が終わったら要らなくなってしまう道や橋だらけなのだ。このため、山容は姿を変えてしまい、時折谷間に響き渡るシカの甲高い鳴き声が、山の悲鳴に聞こえてきてしまった。
作業道の脇にあった立て看板にこう記されていた。「富士川は南アルプスを水源とする日本3大急流の一つです。約3キロ上流の釜無川本谷が流域の人々に恵みを与えてくれる清流の水源となっています。-富士川水源碑設置委員会」。
そう、ここは小学校の教科書にも出てくる日本三大急流の源流なのだ。急流なので周りは険しい山々なのは当然だ。そこにあえて砂防ダムをこれでもかというほど造る必要があるのだろうか。国土交通省は、教科書に出てくる急流を、急流でなくしてしまいたいのだろうか。
しかもこの「急流」、実は源頭域の5-6キロだけしか続かない。その下流は広々とした河川敷が拡がる緩やかな流れが甲府盆地までつづく。この川が国道20号線までたどり着く間には細々とした温泉宿が1軒あるのみ。ほぼ無人地帯といっていいだろう。なので、人家への土砂災害など考えられない。
この工事現場に行ったのは今年1月半ばの連休だった。雪が1メートルほどつもり、寒波が押し寄せる中、休日だというのに工事が続いていた。3月末までの予算消化のためだろう。看板には工期が3月31日までと記されていた。
これらの疑問があって、工事を発注している国土交通省関東地方整備局の富士川砂防事務所釜無川出張所に取材した。まず、釜無川沿いの道の通行止めについては「道はもともと私有地内にあって、作業をするために地権者から土地を借りて造った道路です。だから、一般の方の通行はお断りしています」との回答した。
そこで、次ぎの質問に移った。立ち入り禁止区域内には登山者や観光客用の立て看板、砂防ダムの小学生の名前入りプレートや富士川水源碑などがある。また「ご迷惑をおかけします。堰堤建設に必要な工事用道路を施行しています」という立て看板もある。立ち入り禁止区域内に、これら一般通行人を対象にした看板や記念碑があることに疑問を抱いた。これらについて聞くと、「あっ、そんなのありましたっけ。そうですよね、変ですね・・・」といって黙りこくってしまった。
次いでこれら工事の総工費や請負業者と地元政治家との関係などを質問したのだが、「報道担当はこの出張所にいないので、担当の者から折り返しご連絡いたします」と言って電話を切った。電話口からの印象だと、この担当者はこれらについてホントウに知らなかったのだろう。ただ、国交省の担当者からPJにはいまだ返事はないのが残念だ。
日本の山の中はダムだらけだ。産業のない山間地では致し方ないのかも知れない。時折、山の中で林道やダム工事の方々と立ち話をするが、不景気で生活が苦しいということばかり。その表情を伺っているだけでも、日本の地方は疲弊していることがひしひしと伝わってくる。
ただ、国はダム建設をする理由やその税金の使われ方をもっと説明すべきだ。ダムの工事現場だけでなく、その周り一帯を一般人の立ち入り禁止にしてしまうと、その地域一帯がダムの秘密基地のようになってしまう。こうすることによって、納税者が知らぬうちに自然破壊がまかり通り、税金のムダ使いがエスカレートしてしまう。釜無川源流域では、こんな印象を受けた。
この続編として、国内初の砂防ダム取り壊しによる渓流の再生プロジェクトを掲載する予定です。【了】
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パブリック・ジャーナリスト 小田 光康
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