信長、秀吉、家康の天下統一のドラマ――誰もが知っている戦国時代を背景に、意外性に満ちたストーリーと観たことのない驚愕の映像美で贈るスーパー・エンターテインメント。『GOEMON』で大沢たかおさんが演じるのは、大泥棒の石川五右衛門の幼なじみであり、いつか侍になれる日を夢見て生きている忍者、霧隠才蔵だ。
｢自由気ままな五右衛門との対比となる存在ですよね。やっぱり人間、守らなきゃいけないものもあるし、自分だけ好き勝手するわけにはいかない。その葛藤は、才蔵にかぎらず、誰にでもあることじゃないのかな。だからこそ、彼が現実と必死に闘っている姿に共感できるんだと思いますね｣
　日本の時代劇のイメージを完全に超越し、アジアやヨーロッパのテイストを取り入れた美術と衣装。その中で俳優陣が繰り広げる華麗なアクション・シーンはこの映画の最大の見どころだ。
｢僕、格闘技が大好きなんで、アクション・シーンもすっごい好きなんですよ。もともと子供の頃から、ブルース・リーの映画の大ファンで。今回も演じている瞬間、もう自分はブルース・リーだと思い込んでいましたからね。声とか出したいなぁーみたいな(笑)。ただ自分がそれだけ実力があるかっていうと、ぜんぜん足りないんだけど……でも、アクションはやっぱりおもしろいですね！｣
　劇中｢自由を謳歌するなら、まわりを巻き込むな｣と才蔵が五右衛門に忠告するシーンも印象的。
｢自由の定義って難しい。無人島に行って、そこで生きていれば、確かにある面では自由だけど、逆に何かから逃げているような感じもするし。僕自身は、何かしらの枠や制限があるほうが、自由を感じられるような気がしてます｣

前実は役を作っているのはスタッフで、僕は肉体と魂を貸しているだけ

　ファッションモデルとして活躍していた大沢さんが、俳優に転向したのは26歳のとき。
｢若い頃は、仕事でも何でも失敗だらけだったなぁ。いばっていたり、みんなに迷惑かけたり。デビューした年に、自分の気に入らないテイクをOKにされたことが許せなくて、ゴミ箱を蹴飛ばして、テレビ局のスタジオを出てきましたから。バカでしょ(苦笑)?　29歳までは本当に誰の言うことも聞かなかった。でも、30歳前くらいに『みんな、よく許してくれるなぁ』って思ったことがあって。そのときに、自分の力だけじゃないんだなって気づいたんです。監督さんや脚本家さん、照明さん、カメラさん、美術さん、編集マン……実は彼らが役を作っていて、自分は肉体と魂を貸しているだけなんだなぁって。それからは、ひたすら感謝の日々(笑)。スタッフみんなのことが、かわいくて、愛おしくてしょうがないですよ｣
　そんな大沢さんが考える、真にかっこいい男性像とは?
｢人間って、いいときはいいんですよ。人も集まってくるし、自分も元気だし。でも生きていると、すごくキツイときってあるんですよね。うまくいかないときとか、何かを失ったときとか。そういうときでも、ちゃんと毅然としている男の人って、かっこいいですよね。あと、相手のつらさに気づいていながら、黙ってそばにいてあげる友達っていうのも、僕のまわりにはいて。他人の痛みや弱さを分かってあげられる人って、自分が痛みを経験したことのある人。そういう人を見ると、魅力的だなぁと思うし、自分もそうなりたいと思う。だから女の人はそういう男を見つけたほうがいいですよ。でもだいたい、そういう人って、けっこう早めに売れちゃってるんですよ(笑)。女性から見ても、やっぱりいい男なんでしょうね｣
　最後に女心をアセらせるようなことをサラッとつぶやいて、ニヤリと笑う大沢さんなのでした。

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