民主党の鳩山由紀夫代表が首相に選出され、新内閣が発足した16日、県内では川辺川ダムや水俣病問題の関係者、フェリー事業者らから鳩山政権への期待や注文が相次いだ。
民主党がマニフェスト(政権公約)に中止と明記した川辺川ダム計画。中心部に水没予定地を抱える五木村の和田拓也村長は「終始一貫、ダム前提の村づくりをしてきた。国、県は約束したダム建設、生活再建事業を果たすべきだ」とあらためて事業継続を訴えた。
ダムに反対する人吉市の田中信孝市長は「中止の前提として、五木村再生策と代替案提示が必要」と強調。「(中止に向けて)前原誠司国交相が知事、市町村長の話を聞く場を設けると期待している。国、県、流域首長による『ダムによらない治水を検討する場』で国交省を動かし、積極的に代替案を示してほしい」と語った。
蒲島郁夫知事が財政難を理由に存続を決めた八代市の県営荒瀬ダム。地元住民でつくる「荒瀬ダムの撤去を求める会」の本田進会長は「新政権のもとで撤去費への助成が実現することを期待したい」と話し、国交相に陳情するため近く上京する考えを示した。
水俣病被害者団体は、7月に成立した被害者救済法への賛否にかかわらず、新政権に期待を表明した。救済法を支持する水俣病被害者芦北の会(津奈木町、約270人)の村上喜治会長は「なかなか救済が進まないことにいら立ちがあった。新環境相は一刻も早く各団体との話を進め、10月中には具体的な救済内容を決めてほしい」。
救済法を批判してきた水俣病不知火患者会(水俣市、約2400人)の大石利生会長は「民主党は、われわれが主張していた関西訴訟最高裁判決を尊重する立場。官僚に惑わされず、すべての被害者救済を実現できるかどうかを見極めたい。まずは環境相が現地を訪れ、患者の声を聞いてほしい」と訴えた。
フェリー事業者は、高速道路無料化に危機感を募らせた。長洲町と長崎県雲仙市を結ぶ有明フェリーの西田寿美生事業部長は、政府に無料化見直しを求める考えを示し「民主党は地方を元気にすると訴えてきたのだから、地方の足を守る視点を持ってほしい。せめて高速道の影響で減収した分は補てんを検討してほしい」と要望した。
自民党の支援で就任した蒲島知事は、民主党政権へのスタンスを「イチローのようにどんな投手、どんな政府であっても、ヒットを打ち続ける知事でありたい」と表現してみせた。
前原国交相とは古くから親交があり、「大変立派で信頼できる方」と川辺川ダム問題の解決に期待を表明。水俣病問題では「被害者の意向を吸収する方向で、救済の具体的内容が詰められると思っている」と語った。
=2009/09/17付 西日本新聞朝刊=