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為替90円割れの円高で日本はどうなる?

9月27日12時42分配信 サーチナ

 ドル円為替レートが90円を割り込むほどドル安・円高が進行しています。円高で日本経済や私たちの暮らしはどうなるでしょうか?

 民主党は、円高になると購買力が増す(=輸入物価が低下する)のでメリットが大きいと主張しています。しかし、実際には日本の大半の企業にとってはデメリットの方がはるかに大きいです。日本の典型的なモノつくり企業A社が、1ドル=100円から50円へと超円高になったとき、どうなるのかを想定してみましょう。

■1ドル=100円のとき

A社は、海外から原材料を輸入します。
原材料は100万ドルです。
1ドル=100円ですので、日本円で1億円費用がかかります。

A社は仕入れた原材料を加工して製品にします。人件費など製造コストや自社の利益として2億円必要です。そのため、(仕入れ費用1億円)+(製造費用2億円)=(製品価格3億円) となります。

A社はその製品を海外のB社に300万ドルで販売します。
300万ドルで販売して、B社から受け取った代金を1ドル=100円で円に換えればちょうど3億円が手に入ります。

■1ドル=50円の円高になったとき

A社が仕入れる原材料価格は100万ドルでしたね。
1ドル=50円の円高になれば、100万ドル×50円=5千万円。
A社は、以前の1億円と比べると、半額の5千万円で原材料を仕入れることができました。
これは大変なメリットですね。

民主党議員は、このメリットを説いています。
ここまでは円高メリットが大きいことは正しいです。

A社の社長も、仕入れ価格が半額になったので大喜びです。

早速、製造費用2億円を上乗せして、2億5千万円で海外のB社に販売しようとしました。今まで3億円だったものを2億5千万円で販売するのですからB社も喜んでくれるはずです。

しかし、どうしたことか、A社の販売担当者は、B社が製品を買ってくれないどころか激怒していると社長に報告してきました。なぜでしょうか?

日本円で2億5千万円の代金を手に入れるには、(製品価格2億5千万円)÷(為替レート50円)=500万ドル で販売しなければなりません。

同じ製品を以前は300万ドルだったのに、急に500万ドルで買え言われても、B社は払えません。B社はあくまでも300万ドルしか予算はないので、値上げするなら他の会社の製品を購入すると言ってきました。

代金300万ドルなら、為替レート1ドル=50円で、日本円に換算して1億5千万円です。A社は仕入れコスト5千万円でしたから、製造費用を今までの2億円から1億円に圧縮しないといけません。

A社の社長は派遣社員や正社員を含めた大幅なリストラや、給与・ボーナス引き下げや、下請け企業の切捨てを決断しなければならなくなりました。日本の工場を閉鎖して海外に移転することも計画中です。

 以上が、円高になれば、企業の売上が減少し、利益が減少し、税収が減少し、企業が海外に逃げ、リストラが横行し、失業率が上昇し、下請企業が悲惨な目に遭い、消費が冷え、さらに景気が悪化するという円高不況の構造です。

 日本には円高でメリットを受ける企業があるという主張もたまに見かけますが、多くの日本企業と日本人の生活が苦しくなるわけですから、円高で生じたメリットは日本全体の消費冷込、売上減少により、簡単に吹き飛んでしまいます。

 このような理論的な背景はともかく、「円高になれば株価が下がる」という客観的事実を見るだけで、円高が日本経済に悪影響ということがわかります。「私は株式投資してないから関係ない」というあなたの年金資産も日本の株式市場下落により確実に減少しています。(執筆者:為替王 編集担当:サーチナ・メディア事業部)

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最終更新:9月27日12時42分

サーチナ

 

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