(cache) 極私的小説ベスト５０

２６位　『蠅男』　海野十三　（青空文庫）

長編。背丈はおよそ八尺もありながら、密室の中を煙のように自由に出入りする怪人「蠅男」の恐ろしき正体は？　奇想天外なる海野ワールドを堪能。怪奇探偵小説の快作。こんなに面白くて嬉しくなっちゃう。やったね。

２７位　『爛（ただれ）』　　徳田秋声　（青空文庫）

長編。会社員の男・浅井と所帯を持った元遊女のお増だが、浅井は女房持ちだった…。いろいろの女に心が移って行く身勝手な男一人に縋っていくしかない女の”爛（ただれ）”な生き方を淀みなく描いて出色の長編小説。

２８位　『甲州鎮撫隊』　国枝史郎　（青空文庫）

短編。病気のため、甲州鎮撫隊に参加できず、江戸で静養している沖田総司。浪人の斬り合いに巻き込まれた女・お力を匿ってやった総司は、彼女の介抱を受けるが…。総司を巡る二人の女性の姿を鮮やかに描く。

２９位　『野菊の墓』　伊藤左千夫　（青空文庫）

短編。二つも年の多い民子を政夫の嫁にすることはどうしてもいけぬ──。十五歳の政夫と十七歳の従姉・民子の無邪気で可憐な恋を引き裂く大人たち。「民さんは野菊のような人だ」。日本を代表する定番の純愛物語。

３０位　『殺人鬼』　浜尾四郎　（青空文庫）

長編。実業家・秋川駿三の邸を舞台とした連続殺人事件に挑む私立探偵・藤枝真太郎。秋川家の過去の秘密と意外な犯人は一体？　ヴァン・ダインの探偵小説「グリーン家殺人事件」を踏まえたストーリー展開がＧＯＯＤ。

３１位　『瓶詰地獄』　夢野久作　（青空文庫）

短編。流れ着いた無人島で暮らす兄・太郎と妹・アヤ子。互いに心惹かれ合う二人だが、神様の責罰（イマシメ）を恐れ、悩み苦しむ…。あなたは「悪魔（インセスト）の誘惑」に耐えられるか？地上の楽園、イコール、地獄！

３２位　『一の酉』　武田麟太郎　（青空文庫）（電子文藝館）

短編。料理屋で奉公する少女・おしげは、女蕩しの店の主人・豊太郎と関係を持ってしまう。それは母親とろくでなしの義父に復讐するような、酸っぱくて哀しい感情に押されてであった…。男を知った少女の心の変化を描く。

３３位　『片腕』　川端康成　（電子文藝館）

短編。純潔の少女から右腕を借りた男。「一晩だけれど、このお方のものになるのよ」。処女の母体から放たれた悩ましい「片腕」と添い寝する男…。「片腕」との奇妙な会話と遊戯は、実に官能的で、こ、怖い…。

３４位　『みごとな女』　森本薫　（青空文庫）

短編。戯曲。まるで親戚のような近すぎる関係であるが故に、恋人同士になり得ないあさ子と収…。「長い間他人に見られないで他人のすることを見ていた罰でしょう」。鮮やかな会話文と、彼女を巡る心理描写がお見事。

３５位　『オリンポスの果実』　田中英光　（青空文庫）

長編。ロサンゼルス・オリンピックに参加する日本代表選手団を乗せた客船。その船上で出会った高跳び選手の熊本秋子に一目惚れしたボート選手・坂本の恋慕と苦悩を、手記の形式で描く青春純愛小説の秀作。

３６位　『死剣と生縄』　江見水蔭　（青空文庫）

短編。女侠客”生縄のお鉄”の囚虜にされた竜次郎。お鉄から特別に江戸行きが許された竜次郎は、美人軽業師・小虎と道連れになるが…。二人の行く手を邪魔する無慈悲な悪僧が好キャラ。最高に楽しい。女は強し！

３７位　『耽溺』　岩野泡鳴　（青空文庫）

中編。「これからは、あなたの、め─か─け」。国府津の芸者・吉弥（きちや）に耽溺した作家・田村義雄。成り行き上、彼女の身請けをすることになるが…。中年男の卑小な現実を明るく楽しく描く。自然主義小説の秀作。

３８位　『深川女房』　小栗風葉　（青空文庫）

短編。三年ぶりに再会した幼なじみの船乗り・金之助に縁談をすすめる魚屋の女房・お光だが、夫・新造の病気が良くないと知るや、一転して縁談をぶち壊しにかかるが…。現実的なお光の心理・行動がすこぶる楽しい。

３９位　『平賀源内捕物帳・萩寺の女』　久生十蘭　（青空文庫）

短編。若い娘ばかりが脳天を割られて殺されるという奇怪な連続殺人事件の意外な真相は？──。飄逸洒脱な平賀源内を探偵役とした捕物帳シリーズの一編。ユーモラスかつ緻密なストーリー展開が楽しい面白い。

４０位　『べんがら炬燵』　吉川英治　（電子文藝館）

短編。細川家お預かりとなった大石内蔵助らの接伴役となった堀内伝右衛門。年少の義士・磯貝十左衛門の剛気さに感服した彼は、娘・お麗の婿候補である修蔵の遊蕩に怒りを爆発させるが…。「忠臣蔵」物の好短編。

４１位　『駅夫日記』　白柳秀湖　（青空文庫）（電子文藝館）

短編。女学生・千代子を片恋する目黒の青年駅夫・藤岡。労働組合に携わる小林と知り合った藤岡は、駅夫を辞める決心をする。千代子の結婚相手は…。続編があったらぜひ読みたい。昔の山手線の様子が興味深い。

４２位　『イボタの虫』　中戸川吉二　（青空文庫）（電子文藝館）

短編。姉・美代の病気（肺炎）が急変し、もう駄目らしいと兄から聞かされた私は、母の希望で売薬「イボタの虫」を買いに行くことに…。親の意思に反して作家になることに好意を持ってくれた姉…。心理描写が秀逸。

４３位　『三の字旅行会』　大阪圭吉　（青空文庫）

掌編。毎日違った婦人客が、三時の急行列車の三等車の三輌目から降りてくる不思議。彼女たちを出迎える案内人の男から、「三の字旅行会」の存在を知った東京駅の赤帽・伝さん…。抜群に面白いユーモアミステリー。

４４位　『ニッケルの文鎮』　甲賀三郎　（青空文庫）

短編。診療所の先生が殴殺された。兇器はニッケルの文鎮。書生・内野の名推理で事件は解決するが…。無電（ラジオ）小僧の正体は？先生の研究書を巡る騒動を描く本格推理小説の秀作。女性の独白形式が楽しい。

４５位　『指と指環』　佐左木俊郎　（青空文庫）

掌編。綺麗な指環に相応しい女の指を偏執的に探し回る男。その指環は死んだ恋人・彰子への贈物だったのだ。ついに美しい指を持った女性を見つけるが…。星新一のショートショートのような味わい。オチが楽しい。

４６位　『脳波操縦士』　蘭郁二郎　（青空文庫）

短編。静養中の奥伊豆で、変わり者と評判の森田源一郎（森源）と出会った遠藤。森源の家に住む美少女・ルミに恋心を抱く遠藤だが、彼女は何と森源の脳波で動く精巧な電気人間だった！！　完璧な出来栄え。

４７位　『アルバトロスの夜』　長嶋有　（Anima Solaris）

短編。夜間プレーができるゴルフ場に立ち寄った駆け落ちカップル。プロゴルファーだった亡父の影響でゴルフ嫌いだった僕だが、ノー天気な恋人・ミサトのおかげでプレーを満喫するが…。痛快ＳＦコメディー。

４８位　『京鹿子娘道成寺』　酒井嘉七　（青空文庫）

短編。歌舞伎「京鹿子娘道成寺」の上演中、名優・岩井半四郎が殺害された。傲慢で無慈悲な性格だった半四郎に強い恨みを持つ犯人は？「道成寺」の所作事を見てみたい、そんな興味を涌かせる知的好奇心な作品。

４９位　『恋愛曲線』　小酒井不木　（青空文庫）

短編。恋しき女性・雪江の結婚相手である実業家Ａへの記念品として「恋愛曲線」なるものを贈ることにした科学者。失恋の絶頂×失恋の絶頂＝恋愛の極致！？大どんでん返しのラストに驚愕！すっ飛んだ発想力に敬服！

５０位　『解剖室』　三島霜川　（青空文庫）

短編。学術研究のために解剖される屍体が美しい少女のそれであると知り、胸を躍らせる医学生たちだが、解剖の執刀者である風早学士は、近頃、人知れず苦悩していた…。解剖学者の悲哀を描いた秀作。