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きょうのコラム「時鐘」 2009年9月28日
廃止された小矢部川の如意(にょい)の渡しと小松の安宅の関には、そっくりの源義経伝説がある。一行を怪しんだ役人の前で、弁慶が主人の義経を打ち据える芝居を打って、難を逃れた
山形の鼠(ねず)ケ関にも、同じ伝説が残る。関所や渡しを通るたび、義経は気の毒なことに弁慶から暴力を振るわれたのだが、これはあくまでお話の世界。敗者や弱者に味方する「判官びいき」が、耐える英雄を生んだ きょう自民党の新総裁が誕生する。総裁選は盛り上がりに欠けたが、出直しの第一歩である。多数の議席を占めていた間、政治を志す新たな人材は、入り込む余地がなくて、よその党に多く流れたとされる。今度は逆のことが起きるかもしれない 加えて、判官びいきもある。鼠ケ関では、関守が義経主従に宿の世話までした、と地元の人に教わった。苦難の旅は支持者を増やし、やがて報われる。私たちはそんな筋書きが大好きである それには汚れ役の弁慶と、耐える義経という人材、役回りが欠かせない。芝居と政治とを一緒にするのは乱暴に過ぎるが、人の心をとらえる仕掛けに、さほど違いはないだろう。 |