イチロー、１８年間一度もなかった退場処分

2009年09月28日08時32分 / 提供：スポーツ報知

　◆ブルージェイズ５ｘ―４マリナーズ＝延長１０回＝（２６日・トロント）　　マリナーズのイチロー外野手（３５）が生涯初の退場処分を受けた。ブルージェイズ戦の５回１死三塁。カウント２―０からの３球目の外角高めの球を見逃し、三振と判定された。これを不服として、バットの先端でホームベースの外側をなぞる行為が、ランギー球審に対する侮辱行為と判断された。日本人選手の退場は０２年、エクスポズ時代の大家友和投手以来、７年ぶり２人目。野手では初。なおイチローは５試合ぶりの無安打に終わり、チームも４―５で逆転サヨナラ負けを喫した。

　試合後、報道陣の前に姿を見せたイチローは不敵な笑みを浮かべていた。「いいネタができたね」。開口一番そうつぶやくと、よどみなく言葉があふれ出た。プロ生活１８年目にして初の退場処分にも「そうねえ。やっぱ僕、審判に対して優しいからね。そういうことだと思いますけど」とサラリ。故障者リスト入りやサヨナラ安打、サヨナラ本塁打など、今季は何かと“初モノ”の多いシーズンとなったが、「いいですねえ。いい感じですね」と、退場になった当事者とは思えないほど余裕たっぷりの表情だった。

　問題の場面は５回１死三塁。カウント２―０から自信を持って見送った、外角高めの直球をストライクと判定された直後のことだった。イチローが右手で持ったバットの先端でホームベースの外側の地面をなぞった。“ボールはこのコースを通過した”という仕草が、ＭＬＢの審判マニュアルでは侮辱行為に抵触。間髪を入れずにランギー球審が退場を宣告した。「（バットでの行為はアピールではなく）どっちかと言うと条件反射的な動きだけどね。でも（退場の）可能性はあるだろうけどね」と覚悟していた様子だった。

　退場となった１球以外にも、第１打席の初球や、退場となった第３打席の２球目もボール気味の球をストライクと判定されていたが、今回の判定そのものには不満を一切口にしなかった。ただ、祖父、父と３代続けてＭＬＢの審判を務めるランギー球審の即刻宣告には、“共同作業”としての完成度の低さを感じたようで、「作品としては、もうちょっと時間を置いておいてほしいですよ。もうちょっと間を味わいたい。そのへんは演出能力の問題じゃないですか」と注文をつけた。

　３打数無安打で打率を３割５分３厘に下げ、チームも逆転サヨナラ負けを喫したが、試合後は怒りをまったく感じさせない大物ぶりを見せた。

　◆大リーグの審判マニュアル　「選手が審判に対して、明らかな侮辱行為をした場合、例えば、ストライクを取られた球が通ったコースをバットや指などで示したり、無死か１死で三振に倒れた際に（バットなど）用具を残してベンチに戻ったケースでは、退場処分とする」と明記されている。