前原誠司国土交通相は26日、八ッ場(やんば)ダム(群馬県)と川辺川ダム(熊本県)の建設中止に伴い、地元への補償措置を定めた新法を来年の通常国会に提出する考えを明らかにした。熊本県の蒲島郁夫知事や流域市町村長らとの意見交換会後の記者会見で述べた。
会見で前原国交相は、川辺川ダムについても八ッ場ダム同様、中止したほうが、継続した場合よりコストが高くなるとしても、中止の考えは変わらないことを明言した。
両ダムの中止を明記した民主党マニフェストで、補償措置がなされることが中止の前提と記載していると指摘し、「マニフェストに掲げたことを着実にやるため、できれば、補償措置の立法を次の通常国会に提出したい」と話した。
また、事業着手から長期間経過しても完成しない事業を中止するための事業評価を盛り込んだ法律も検討しているとしたが、「補償措置がなければ事業中止できない」として通常国会には補償措置の新法のみを提出する構えを見せた。
前原国交相は蒲島県知事らとの意見交換に先立ち、相良村の建設予定地を視察、その後、水没予定地の五木村住民との意見交換会に出席した。ダム本体工事の中止と生活再建事業の継続を明言した。
そのうえで、中止の理由を、計画策定から43年経過しても本体が未着工で川辺川ダムと球磨川にあるダムとで球磨川水系の水量調節をするとの治水策に疑問があると説明した。
前原国交相は会見で、「早期に専門家のチームを結成する」と述べ、国として川辺川ダムの代替治水案に積極的に関与する方針も表明した。専門家チームが八ッ場ダムの代替案も一緒に検討するかどうかは「決めていない」とし、人選も未定という。【石原聖】
毎日新聞 2009年9月27日 東京朝刊