栃木県足利市で90年に女児が殺害された「足利事件」で逮捕され、無期懲役の確定後に裁判をやり直す再審が決まった菅家(すがや)利和さん(62)が26日、大阪市北区で開かれたシンポジウムで「自白」に追い込まれた捜査段階の取り調べの様子を語り、「取り調べの全面的な録画・録音の実現」を参加した市民ら約260人に訴えた。
シンポは大阪弁護士会などの主催。菅家さんは「取調官に髪を引っ張られ、けとばされ、『やっただろう』と迫られた」と説明。過酷な取り調べが続くうちに「もうどうでもいい」と思い、「虚偽の自白をしてしまった」と振り返った。また、一審の公判の途中まで否認できなかったのは、「傍聴席に取調官がいるのでは」という恐怖心からだったと打ち明け、「取り調べが録画・録音されていれば、自白させられることはなかったと思う」と述べた。取り調べの一部分の録画・録音が実施されている現状については「一部だけでは絶対に犯人にされる」と批判した。
シンポには、大阪府枚方市の官製談合事件で大阪地検特捜部に逮捕され、無罪が確定した元副市長の小堀隆恒さん(63)も参加。取り調べで検事から「兄弟親族も全部調べる」などと迫られたと明かし、「取り調べの全面録画・録音が実現すれば、こんな過酷な取り調べはなくなるのでは」と語った。(阪本輝昭)