2009年09月27日(日)
使い捨て社会「あらためて」 製造業への派遣労働原則禁止 失業者期待 業界困惑、対応探る
 |
ハローワーク甲府で求人情報を検索する人たち。派遣労働の環境改善を新政権に期待する声は多い=甲府市住吉1丁目 |
|
鳩山内閣を誕生させた民主、社民、国民新の3党連立政権が合意事項に位置付けた製造現場への派遣労働の原則禁止について、派遣切りされた失業者たちは、働き口が少なくなることに不安を感じながらも「使い捨てされる世の中をあらためる制度をつくってほしい」と、雇用安定の一歩につながると期待する。一方、メーカー側は業績に応じて調整できた人材を失うことに困惑、対象外となる請負など間接雇用に切り替えることを検討している。派遣業界は「労働力が海外にシフトしてしまう」と契約の減少を懸念していて、「派遣は悪」というイメージを覆そうと、全国規模の反対署名活動を展開している。 「使い走りのように働かされた揚げ句、収入と住居を一度に奪われるなんて…」。ハローワーク甲府に通っている甲府市の男性(36)は、愛知県の自動車部品製造会社で派遣社員として働き、昨年8月に契約を打ち切られた心の傷が今も癒えないという。 会社の寮を出てから友人宅を転々、住み込みのアルバイトもしたが、今年7月、実家に戻った。「年老いた両親に迷惑をかけられない」とハローワークに通い始め、仕事を探しているが、希望する新規求人はめったにない。 衆院選では、民主党候補に一票を投じた。「仕事がない中、派遣でも働きたいという気持ちはあるが、社員に比べて低い賃金、会社の都合で突然契約を打ち切られる…。そんな世の中にストップをかけてほしい」。政権交代が実現し、大きな期待を寄せる。 派遣労働に関する規制緩和で労働者間の格差が広がったことに反発してきた、山梨ユニオンの今福庸夫執行委員長は「早急に労働者派遣法の改正に着手するとともに、失業保険なども実効性ある制度に変えてもらいたい」と要望する。 一方、製造現場は困惑気味だ。電子部品製造業のエノモト(上野原市)は派遣社員の新規採用は抑え、社員と現在いる派遣社員で対応するという。国中地域の大手機械製造会社は、派遣から請負や契約社員など別の雇用形態への移行について検討を始めた。担当者は「請負は業務指導が直接できないため、派遣社員の方が使い勝手がいい。契約期間も弾力的に調整できる」と本音を明かし、新政権の動きに反発する。 製造業などに人材を派遣しているアルビス(中央市)は、有料職業紹介や請負など業務の多角化を進めて、規制強化に備える。ただ「日本は中小企業が多く、全員を正社員として雇ったり、自社で求人をするのは難しいのではないか。製造派遣を全面禁止すれば製造系の中小企業はつぶれ、大企業は海外に労働力を求めてしまうだろう」(同社担当者)と懐疑的な見方だ。 一方、日本人材派遣協会(東京)は6月から派遣法改正に反対する署名活動をインターネット上などで開始。これまでに約57万人分の署名を集めたという。
|
|
|