報告します! 状況 丁平地占領を企図していると判断される敵10A(1コMDを基幹に1コTKRの増強)は、甲平地西方約300qの地域で作戦準備中であり、その先遣がD日頃、主力はD+7日頃甲平地に進出してくると見積もられます。 敵10Aには、さらに1コAbnR及び1コAmblBnが増強されています。 それに対して我が軍の1A(2コD基幹)は、D+8日以降丙平地で敵10Aを撃破すべく、丁平地東方約200qの地域にあって作戦準備中であります。 「沿岸の北道沿いに作戦し、侵攻してくる敵をD+7日までB市以西に阻止し、Aの作戦を容易にせよ」との任務を有する1Dは、作戦計画に基づきD−3日行動を開始し、D−1日に配置が完了します。 1Dには、1コTKCo/TKGp、2コFABn、1コAACo/AAGp及び1コECo/EGpが配属されるとともに、1Dの作戦間、1コAvn/ATH(8機)が支援します。 彼我ともに海上作戦能力はないものの、航空戦力において、敵がやや優勢であります。 1Dの作戦構想 1Dは、1Aから先遣され、独立して比較的長期の作戦を担任する師団であります。また地形上は、東西約100qの縦深にわたる地域で、阻止に適する要線を有しています。 敵は1コMD基幹をもってD日以降攻撃可能であり、空中機動能力が増強されています。我は戦車、砲兵火力、対空火力および工兵が増強され、作戦準備日数は3日、阻止日数は8日であります。相対戦闘力は、総合的に敵が約3倍であり、対装甲で敵が約3.2倍、対人で敵が約2.5倍であります。 行動方針として、エ山・オ山を最終確保地点として、ア山からウ山の間で遅滞行動を行う案(O−1)と、エ山・オ山で陣地防禦する案(O−2)の2案があります。 自分はO−1の採用を提案します。 理由は二つです。その一つは、縦深約100qの間に遅滞陣地に適する要線が数線にわたって存在することです。二つ目の理由は、敵を阻止すべき日数が8日間と比較的長期であり、又敵の進出が早く、我に準備の余裕がないため、陣地防御によっては任務の達成が困難と思われることです。 さらに、任務分析から1Dの戦力はAにとって必要不可欠であり、戦力を温存してAの攻勢に参加することが必要であります。たとえ陣地防御によって敵を8日間阻止できたとしても、1Dの戦力が枯渇してしまえば、Aが攻勢に転じたときに敵10Aを撃滅するに足りる戦力が足らず任務が達成できません。 よって『師団は遅滞行動により、敵の侵攻をD+7日までエ山・オ山以西を阻止して、Aの作戦を容易にする』に決し、各陣地の部隊の配置及び保持日数を定めます。 保持日数は、作戦間地域の全縦深にわたり準備できる日数、使用可能な勢力特に土木機械力及び地形の強度を考慮しました。さらに、各遅滞陣地の戦闘様相を詳細に分析して、確実に任務達成が可能な保持日数になるように十分な注意をはらいます。 各陣地の戦闘力を説明いたします。 1,警戒部隊 (1)1コiCo(APC化):+1コTKCo (2)1コiPt 2,遅滞陣地守備部隊 (1)1コiR: + ATpt、TKCo (1コiCoをAPC化) ア山を占領 (2)2コiR(−): +2コATpt、2コTKCo イ山を占領 イ山から後退後エ山・オ山を占領 (3)1コiR(−) (1コiCoをAPC化) 当初予備 後退後ウ山を占領 3,予備隊 (1)1コiR(−) (1コiCoをAPC化) (2)2コiCo エ山・オ山において陣地構築及び後方警戒 (3)TKBn(−) : +1コiCo(APC化) (4)AT(−) とします。 次に、火力の編成の大綱ですが、DAについては、各陣地の戦闘間それぞれ1コFABnをもって遅滞陣地守備部隊にD/Sさせるとともに、DA主力をG/Sとして運用します。また、AH火力はD直轄とし、主として敵機甲部隊の突進阻止を行うとともに、予備隊及びDAと連携して対空挺・ヘリボン戦闘の火力として運用します。航空火力は、航空阻止によって敵の前進遅滞を図るとともに、近接航空支援を敵部隊、特に我がDA火力では不足する地域及び脅威の大なる部隊に指向するように準備します。 APC化の1コiCo(+1コTKCo)の警戒部隊を配置した狙いですが、早期から敵と接触を図り、敵の行動を事前に偵知するとともに、その前進を遅滞・混乱させること、また攻撃準備の妨害を目的としています。 ただ戦闘力が不足しているので、警戒部隊をTKBn(−)として、これにAPC化の1コiCoとATPtを配属するように修正したほうがよろしいかと思われます。 またDAの一部をア山前方に陣地占領させ、警戒部隊の戦闘に連携した火力発揮ができるように準備いたします。 さらに、乙平地及びA町南側に配置した予備隊をもって空挺・ヘリボン攻撃に対処できるように準備するとともに、各陣地を構築中の歩兵部隊及び工兵部隊をもって陣地の翼側及び白川の橋梁を警戒します。また、砲兵火力とAH火力を予備隊の戦闘に協力できるように準備しておきます。 ア山へ攻撃してくる敵に対しては、D日敵はまず警戒部隊をもって攻撃してくるものと思われます。これに対して、我はア山東側に陣地占領したDA火力を集中して前進を阻止します。これと並行して、近接航空支援及びAH火力を後続してくる敵機甲部隊に集中し、敵を赤側以西の努めて遠い地域に阻止・遅滞します。 敵がア山の陣前に迫ってきたさいには、DAによる火力集中を続行するとともに、ア山守備部隊の陣地に配置した対機甲火力をもって赤川の障害と連携して射撃を行い、敵の攻撃前進を赤川以西に阻止します。これによって敵は、警戒部隊での攻撃が不可能となり、MD主力を展開して攻撃準備を行うことになります。 ここでのねらいとしては、敵が警戒部隊を増強した程度の攻撃では前進が不可能であり、MD主力をもって攻撃しなければ前進できないと思わせることです。そう思わせるだけの十分な火力を集中させます。 展開中の敵主力に対しては、展開を遅滞・混乱させるため、DA火力及び近接航空支援の火力を集中します。敵は、我の視射界良好な地域で展開し攻撃準備することになり、その弱点に乗じて攻撃準備妨害の火力を効果的に集中すれば、敵の攻撃開始は相当に遅延するものと考えられます。敵が展開を完了し、攻撃前進を開始してきたら、DA火力を継続して集中するとともに、赤川の渡渉及び障害処理を行う敵の弱点を捉えて、ア山守備部隊の歩兵及び対戦車火力を指向します。これにより、D日においては敵をア山の陣前に阻止できるものと考えます。 予期に反して、一部の部隊が近接戦闘を余儀なくされた場合ですが、北道沿いに攻撃してきた敵とア山守備の1コiCoがD+1日昼頃に近接戦闘の状態になった場合を想定します。 この時点での行動方針として、ア山守備部隊による陣地の固守(O−1)、予備隊による攻撃(O−2)があります。 自分は0−2を提案します。 必要性からは、北道沿いの敵の攻撃を許せば、ア山における最も機動容易な方向から敵の突進を招く恐れがあり、また、遅滞行動全般の構想から1コCoの戦力喪失により、爾後の戦闘が非常に難しくなると思われます。また、師団の予備隊が健在し、地形上我の有利な方向からの攻撃であり成功の可能性が十分にあります。また一般的に『単なる敵の威力偵察又は一部の陣地地域の喪失等により、過早に全陣地にわたる後退は行ってはならない』といわれているとおり、ここはがんばりどころであると考えます。 また、第一次遅滞陣地における戦闘が簡単に瓦解した場合は、我が遅滞行動を行うという企図を早期に暴露することになりかねません。また北道正面は、我が離脱するためにも、絶対に確保しなければならないという必要性もあります。 よって、A町南側に集結中の1コiR(±)基幹をもって攻撃します。この間のDA主火力を敵の攻撃部隊に集中するとともに、近接航空支援及びAH火力によって敵の後続部隊を遮断します。状況によっては、乙平地南側のTKBn(±)+iCo(APC化)で攻撃するのもよいと思います。機甲主体の機動力を発揮して迅速に対処する必要性に迫られることもあると考えられるからです。 離脱の要領 所望の目的を達成した場合、又は主力が決定的な近接戦闘に陥る恐れがある場合に離脱に移ります。状況の許す限り夜間を利用します。さらに、企図の秘匿と積極的な欺瞞を行う必要があるでしょう。 それと重要な点が部隊の確実な掌握です。敵から損害を被ることなく、離脱を整斉と行って次の行動のための余力を保持することが、継続的な遅滞行動を可能にするために必要不可欠であると考えるからです。 予期の如く戦況が進展したとして、D+1日夕になってア山の遅滞陣地守備部隊を離脱させるに決したとします。そのさいの離脱要領ですが、ア山の各Co陣地に1コipt基幹、また北道沿いに1コTKptを配置し、これを残置部隊とします。 次いでAPC化の1コiCoにATpt、TKptを増強して収容部隊とし、ア山後方で北道沿いの要点に配置します。DAについては1コBnを残置部隊の戦闘に協力させ、主力は夜間に入ると同時に梯次に陣地変換し、次の陣地での遅滞戦闘に協力する準備を行います。暗くなると同時に離脱を開始しますが、その順序は後方にある部隊、次いで戦況の切迫していない部隊になります。 離脱のさいには、我が部隊の各個撃破を防止するため、後退する部隊相互間、後退する部隊と次の遅滞陣地守備部隊との連携を十分にとります。さらに砲兵部隊の陣地変換に伴う火力中断防止に着意する必要もあります。 イ山付近における戦闘要領ですが、イ山の遅滞陣地守備部隊は2コiR基幹です。ここでは陣地配備の重点を北道沿いにおき、2日間の保持日数を予定します。戦闘要領ですが、まず、イ山前方約10qに準備した偽陣地に1コiCo基幹(+TKpt、ATpt)を配置し、敵が接近してきた好機を捉えて射撃します。これに連携してFABnの火力を後続部隊に集中し、敵に過早の展開を強要します。敵が展開を完了する直前に、DA及び航空火力の擁護下に偽陣地の部隊は後退させます。ここでは、約半日敵の前進を遅滞する予定です。敵がイ山の遅滞陣地へ攻撃を開始するのは昼以降となり、イ山においては約1.5日の遅滞戦闘になると考えています。 しかしこの計画では、敵に過早に展開させることを目的としては、1コFABn程度では火力が不十分とおもわれます。ここではDAの主火力を指向するとともに、航空及びAH火力をも集中して、確実に敵の展開を強いた方がよろしいと考えます。 さらには障害を準備し、これと連携した対機甲火力を敵の接近経路上の要点に集中したいと思います。 兵站事項 火力及び機動力の発揮の裏付けとなる兵站事項についてですが、遅滞行動では事前の周到な準備と継続的な支援がかかせません。そこで、各遅滞陣地に主要の補給品を事前集積しておくとともに、戦闘開始以降は、前方の陣地に対する支援と、後方の陣地における支援準備を同時並行して実績します。前方から後退した部隊に対しては、火力発揮のための弾薬の再補給及び機動力発揮のための装備品の充足及び装備支援は特に重要だと考えます。 |