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3回目の主要20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)は25日(日本時間26日午前)、世界経済が持続的な成長を続けるには、不均衡の是正と、環境技術の革新による「グリーン・リカバリー」が重要とする首脳声明を採択し、閉幕した。鳩山由紀夫首相の進める「子ども手当」などの内需振興策や、環境対策は成果を上げられるのか。【ピッツバーグ(米ペンシルベニア州)斉藤信宏、清水憲司】
「多くの国は、不均衡を軽減する必要がある」
G20の首脳声明は名指しこそ避けたが、米国の過剰消費に支えられてきた中国、日本、ドイツなどの輸出国に内需拡大を求めた。オバマ米大統領は25日の会見で「持続的な成長に向けた新たな枠組みを前進させた」と、不均衡是正の意義を語った。
対応を迫られた中国の胡錦濤国家主席は「しっかりした景気刺激策と内需拡大を進めることが重要」としながらも「中国は今年上半期、外需の大きな落ち込みにもかかわらず、7%成長を実現した」と大規模な財政出動の成果を強調。米国債保有残高が世界一であることを踏まえ、22日の米中首脳会談では逆に「米は財政赤字削減を」と要求した。
内需拡大よりも「金融規制が最優先」と主張してきたメルケル独首相は、声明に銀行の高額報酬制限が盛り込まれたことでようやく「満足して帰国できる」とコメントした。
輸出国と米国の足並みの乱れも見られる中、鳩山首相は閉幕後の会見で「外需依存で景気をリードしていくことができなくなった。内需振興に思い切って経済を転換させる」との考えを示した。民主党は政権公約で、▽月額2万6000円の子ども手当(10年度は半額)▽高速道路の無料化▽ガソリンなどにかかる暫定税率の廃止--などの内需拡大策を掲げている。声明は、民主党の政策にぴったり一致しているというわけだ。
だが、日本は80年代以降、米国側の圧力で内需拡大を掲げてきたが、外需依存体質は変わっていない。
鳩山首相は自民党政権との違いをアピールしているものの「子ども手当の多くは貯蓄に回る」などの指摘も根強く、内需主導型経済に転換できる保証はない。
「石油に依存しないエネルギーを日本が世界に先駆けてリード役を務める」。鳩山首相はサミット後の記者会見で、環境技術への意気込みを語った。
首脳声明は「クリーンで再生可能なエネルギーの増加」の必要性を訴えた。石油などの化石燃料に過度に依存した経済は、温室効果ガス排出に伴う地球温暖化を進行させる。地球環境が破壊されれば、経済成長もあり得ない。欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員長は「気候変動に対する取り組みなしに、全面的で持続可能な回復はあり得ない」と強調した。
太陽光発電や風力などのクリーンエネルギーの拡大は環境対策にとどまらず、省エネによって企業のコスト負担を下げるほか、新たな産業の育成にもつながる。オバマ米大統領は、クリーンエネルギーの開発に10年間で1500億ドル(約13兆5000億円)を投資し、500万人の雇用を創出する方針を表明。温室効果ガスの削減目標を「90年比25%削減」へと大幅に引き上げた鳩山政権も「削減するほど経済にマイナスになるという(自民党政権時代の)発想はもうやめよう。経済と環境両方が良くなるようにする」(直嶋正行経済産業相)と米国同様、環境対策を成長戦略の柱に位置付けている。
だが、クリーンエネルギーへの転換には巨額の投資が必要となり、短期的には企業、国民にとって負担増は避けられない。
このため中国やインドなどの新興国は「削減は先進国の責任」との姿勢を崩しておらず、温暖化対策の新たな国際的枠組みを決める国連交渉がまとまるめども立っていない。
十分な資金や技術支援を先進国側が示し、新興国と一体となって温暖化対策を進められるかが、今後のG20の課題になる。
毎日新聞 2009年9月27日 東京朝刊
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