日本に居ながら、ナマの英語に触れる工夫

Sep
26
2009
Author: cosine[Edit ] View: [9]
Category:一般的な話題 , 化学英語・日常英語





english_speaking_1.jpg

 グローバル化の流れにある現在、化学の世界に限らず、英会話スキルは各方面でもはや必要不可欠となりつつあります。しかし日本の英語教育はちょっとどころではなくアレで、読み書きは何とかできても、聴きとれないし喋れない人間が量産されているという惨状です。

 日本の英語教育が文法・英作文偏重になっているのがその主要因です。話に聞くところでは、日本の高校レベルの英文法とは、英語圏では大学でようやく矯正されるレベルなのだそうです。

そういったレベルのものをなぜムリして学習しているのか?――それを強行しようとする背景にあるのはは、先生側が点数・成績を付けやすいような教育システム、「管理側・オトナがラクできる」というモチベーションなのだと思えます。つまりは、真剣に子供の為を考えて作られたカリキュラムじゃぁ無い・・・残念ながら筆者自身、そういったことを感じる機会に度々恵まれたものです。


 そしてそんな英語の苦手意識は、日本人が国際社会を相手にするうえで、ハードルを上げる要因の一つになっています。いざ「海外で武者修行したい!」と思っても、使える英会話が出来ないために自信を無くして一歩引いてしまう・・・そういう人も数多く見ました。ある程度英語でのプレゼンを訓練してきた人間ですら、海外に出た途端、自分の英語の通じなさ具合に愕然とする・・・なんてことも少なくありません(何を隠そう筆者もそうでした)。


 世界を相手に戦う、グローバルな環境に対する苦手意識を減らすと言う意味合いからも、スピーキングとリスニングは訓練しておくに越したことはありません。
 
 そのためには数ヶ月なり一年なり、ネイティブスピーカーとムリにでも話さざるを得ない国で生活するというのが理想なのですが、現実問題としてあらゆるコストや人生計画と兼ね合いになってしまい、そう簡単にはいきません。多くの人にとっては、日本に居ながらにして質の高い英語に触れる工夫こそが必要です。


 幸運にも我々には、インターネットという強い味方があります。Webサービスを使えば、十分に高品質なリスニング・スピーキング学習をすることが可能になっています。


 今回は学生にも優しい、 ①お金を掛けない、②自分のペースで好きなときにトレーニングできる、という点に主眼を置いて、スピーキング・リスニング訓練に役立つ方法をご紹介しましょう。

 以下の内容は、どれも筆者の体験・個人的見解に基づいた記述です。合う合わないはもちろんあるでしょう。しかし、英語に触れる機会の多い学生・研究者・ビジネスパーソンの皆さんは、一つの意見として参考にしていただければ幸いです。

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  • どんな教材を使うのが良いか

 大学受験を経験していれば、リスニングのトレーニング経験も多少はあると思います。そのためにはNHKラジオ英会話などを聞くのが定番、と一般には言われているでしょうか。


 しかし個人的意見ではありますが、ラジオ教材はあまりオススメできません。


 (少額ながらも)教材にお金がかかる、というのも理由ですが、結局のところ解説が日本語なので、視聴時間に比してリスニングしている密度が意外に低いのが最大の理由です。加えて、理解を英語からではなく日本語解説に頼ってしまうというのも問題です。しかし30分なり、ちゃんと時間を使ってしまえるので、自己満足にはもってこいの典型となっているように思います。

 「英語を聞いて、日本語に変換せずに直接理解できる」ようになることがリスニングの到達目標ですから、あまり余計な日本語を耳に入れない方がベターなのでは、と思います。

 30分なら30分、「英語だけを短時間集中的に浴びるように聴く」勉強法を毎日続けること――結局そういう泥臭い方式こそが、遠回りに見えて一番効果的であるように思えます。 

 さらにラジオ教材の場合は、同じ時間帯に空き時間を確保できないと、続けていくことができません。夜遅くまで仕事をすることの多い実験化学者にとっては、電車通勤の時間など、合間を使って自分のペースで学習出来る教材が欲しいものです。NHKラジオのCDを買えばそれでもいいのでしょうが、ご存じの通り、毎月買うとなると結構な出費になります。


 そういったことを加味するに、英語教材としてはネットで配信されているポッドキャストが現状最も優れているように思えます。ほとんどが無料ですし、テキストもWeb上にあるものが多いです。iPodがあればダウンロードして持ち運びも可能です。

 ただ、目的に合致しつつも良質なポッドキャストとなると、なかなか探しだすのが難しいと思われます。筆者の知る限りではありますが、日本人にとって役に立つ、優れたサービスを厳選して紹介してみましょう。

ESLPodcast.gif

 筆者がもっともオススメできる教材です。ESLとは「第2言語として英語を学ぶ」という意味です。すなわち最初から非ネイティブを対象として設計されている教材なのです。ですから速度はかなり適切です。

 アメリカの文化・生活・習慣に絡むトピックが豊富なので、「英会話はやや苦手だが、英語圏で過ごす予定のある人」にとってはぴったりの内容です。ネイティブがよく使うややくだけた表現も多く、受験教材とは一線を画する実用性があります。 500以上のトピックが公開されており、他の追随を許さぬ充実っぷりも魅力です。これが無料というのはまったく信じられないほどです。

 ポッドキャストですので、お手持ちのiPodに入れて持ち運べば、通勤電車や空き時間に手軽にリスニング訓練が出来ます。 iPodTouchであればテキストも画面表示されるので、紙媒体のテキストを持ち歩かなくてもよく大変実用的です。


buisnessEngPod.png

 ESL Podcastの速度になれてきたら、少々レベルの高い会話を聞いてみましょう。

 Busines English Podは、その名の通り、ビジネス英会話を主軸とするポッドキャスト。ビジネスの世界らしく、丁寧にお願いする表現とか、電話口での応対、メールの書き方などに関して、なかなか実用的なトピックが揃っています。

 海外留学すると、ラボメンバーと英語でディスカッションする機会が増えるので、そういった会話表現は嫌でも鍛えられるわけですが、実際そういう際でも使える表現が多用されているように感じます。ビジネス英会話と言うこともあり、お金に絡むトピックもよく取り上げられています。

 動画の教材も用意されていたりと、なかなかにバリエーション豊富なのも特徴。



VOANews.gif

 英語圏のニュースサイトであれば、最近はどこでも音声ファイルかポッドキャストをWebで配信しているものです。CNNBBCNHKにも英語音声ニュースのページがあります。とはいえ、これらはかなりレベルが高い! 正直ほとんど聞き取れないのではないでしょうか。

 そういう本格的ニュースはムリでも、時事的な内容を英語で聞けるようになりたい、と言う人にオススメなのがこのVOA News。英語を非母国語とする人向けに作られているので、比較的良心的なスピードで喋ってくれます。海外事情も仕入れることができて一石二鳥?


naturepodcast.png Nature Publishing Groupが化学にフィーチャーしたPodcastを配信しているのはご存じでしょうか?その名もChemPod 。日本語版でのサイトはこちらですが、更新は英語版より遅いです。配信されている音声自体はどちらも同じです。

 化学分野全般が対象で、内容は多岐にわたります。最新の研究事情・研究者へのインタビューなども聞けます。同類としては、Chemistry WorldのPodcastもあります。

 ただし当然ながら、容赦ないネイティブ速度なので、ある程度スローな教材で耳を慣らしてからのほうが良いかもしれません。


interactive-CD.jpg

 これは化学、しかも有機化学限定の教材です。東大薬学部の福山透先生の指揮により、日本人化学者の英語力改善を目指して企画編集された教材です。

 専門用語などはどう発音して良いのか分からないものが多く、カタカナ読みすると得てして通じません。例えばアンチ(anti)は"アンタイ"、ケトン(ketone)は"キートン"と発音しないと通じない・・・などなど。そういったあらゆる化学用語の正確な英語発音をまとめて、CDで配布しています。

 体験版のページがありますので、そちらで感じをつかんでみると良いでしょう。フルバージョンが欲しい方は、有機合成化学協会のページ記載の方法に従ってお求めください。1000円。


  • リスニング訓練の質・密度を向上させる工夫
 短時間の訓練で、「何となく聞き取れるかも?」からさらに一歩進むには、質と密度を向上させる必要があります。

 最初でも書きましたが、「日本語の解説がなるべく少ない教材を使う」というのがキーポイントに思えます。上述のポッドキャストは外国産なので、当然ながらオール英語です。それでも「これはリスニングの訓練だ」という意識のままでいると、漫然と聞くだけになってしまい、聞けたかどうかも確認しづらいです。


 さらに学習効率を上げるためには、ディクテーションオーバーラッピング(シャドウイング)を積極的に導入することがベストと思われます。

 ディクテーションとは、聞き取った単語を逐一紙に書き出す訓練です。聞き取れなかった単語は書き出せないので、なぁなぁで済むことがなくなります。これにより、聞き取り精度と、文脈類推力の向上が期待できます。

 オーバーラッピングは、テキストを見ながら英語を聞き、その英語通りにマネして口に出して喋る訓練です。シャドウイングはテキストを見ずに、耳に入ってきた言葉をそのまま繰り返す訓練で、オーバーラッピングの上級版です。リスニングとスピーキングの両方が同時に鍛えられるというのが特徴です。
 
 継続することによって、英語独特のリズム・アクセント・イントネーションが体験を通じて身につきます。つまりネイティブに近いスピーキングを自力で訓練できるのです。ジャパニーズイングリッシュは端から見ていて全く格好よろしく無いので、こういったことを行って、是非矯正したいところですね。

 オーバーラッピング・シャドウイングどちらにしろ、必ず声に出してトレーニングすることが重要です。スピーキングを訓練しているわけですから、そうでないと意味がありません。


  • 筆者の海外経験に基づく個人的見解

 筆者は日本時代、英会話に関しては比較的恵まれた環境にいました。
 ラボには留学生・ポスドクなども多くいて、英語で話す機会も沢山ありました。研究発表を英語でする文化でもあったため、普通の日本人よりは英会話に慣れていたつもりでした。
 
 ・・・にもかかわらず、いざアメリカに来てみると、あまりに英会話ができないことに愕然としたものです。『日本に来ている外国人は、やはり英語の出来ない日本人に合わせて喋ってくれていたんだなぁ・・・』と痛感したものです。
 
 英語圏では自分自身がアウェイの外国人(alien)なので、ネイティブスピーカーに「優しく喋ってね♪」などと期待はできません。嫌が応でも英会話ができるようにならないと、まさに死活問題なワケです。

 そういう危機感を感じたこともあって、アメリカに来て数ヶ月は、ESL Podcastを使って毎日30分シャドウイングを欠かさず行い、スピーキングを訓練しました。その甲斐あってか、今ではそれなりに口が回るようになり、日常会話自体にそれほど不自由がなくなりました。格好悪いジャパニーズイングリッシュも、ある程度改善されたように思います。別の言い方をすれば、そういう訓練方式でも英語圏でちゃんと通用するものが身につくということでもあります。


 またこれも個人的意見ですが、耳はネイティブの人達がわんさか居る環境にいると勝手に慣れるので、スピーキングの訓練こそが重要に思えます。受動的に訓練可能なリスニングと異なり、能動的に取り組まないと改善されないものだと思えます。何よりスピーキングができないと自分の意志がうまく伝わらないので、何かの機会に付けて相手の都合良いようにされてしまい、意図せず損してしまうことが多くなるように思えます。外国の人は日本人が考える以上にこちらの意図を察してくれないものです。


 英語圏にいると英語学習のモチベーションは上がらざるを得ませんが、日本在住の皆さんはどうでしょうか?

  皆さんは、「本当に使える英語学習」をしていますか?

  英会話教室にみすみすお金を差し上げるだけで、満足してはいませんか?

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  • 関連リンク

Chemistry@Nature.com

ポッドキャスティングで化学 (有機って面白いよね!)

英語の勉強したい人はiknowよりESL Podcast聞こうぜ  (fladdict) 率直でありつつ的を射た意見だと思います。この記事を書く上でも、大いに参考にさせてもらいました。是非一読してみてください。英語学習の投資効果は1時間あたり2万円の価値があるというのは、なかなかに重みと真実味のあるフレーズに思えます。




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