30日の衆院選で自民党は壊滅的な敗北を喫した。今回の政権交代劇に何を見たのか。漫画家のいしいひさいちさん、コジローさん、大枝桂子さんの3人に、漫画好きの麻生太郎首相に贈る一コマを描いてもらい、解説を加えてもらった(いしいひさいちさんはご本人の意向で漫画のみ)。【聞き手・小松やしほ】
「子ども手当」を打ち出して親をあやして政権交代はしたけれど、民主党にしても、本当に子どものことを考えた政策になっているのか。子どもを未来の労働力としてしか見てないようでは怖いなあ、というのが私の一番強い思いです。今の子どもが幸せになれる社会をつくれば、その結果として、安心できる社会にもなってくる。そういう順序で考えてほしい。
子育て支援のために、赤字国債を発行して、子どもにツケを回したら意味がないという話を聞きますが、実態がよく分からない。赤字が増えたら、日本は沈没すると言われますが、実際どうなのでしょう。マスコミもきちんと検証してほしいと思います。
麻生さんは、この選挙期間中にまた「金がないなら結婚するな」と失言をしたようですね。たとえウソでも(?)「格差をなくして、安心して子どもを産めるようにします」というのが政治家なのに。麻生さんのセリフも「金がないのに子ども産むなよ」にすべきだったでしょうか。(談)
当初は、ガタガタの自民党と、麻生首相が盛んに言っていた「経済再生までに全治3年」の言葉をひっかけて、瀕死(ひんし)でベッドに横たわる麻生首相に「全治3年」というセリフをつけた構図を考えたのですが、麻生さんの特徴と言えば「漢字が読めない」ところだったなあと思い直し、この絵になりました。
前回、小泉純一郎首相の郵政選挙の時には期待していませんでしたが、今回は本格的な政権交代になるということで、久しぶりにわくわくしながら見ました。結果的には、予想以上に民主党が議席を取ったなあという感想です。
漫画を描く側から見れば、自民党の方が茶々を入れやすい。麻生さんと鳩山さんを比べても、麻生さんはすきだらけですが、鳩山さんは至極まとも。現状では、自ら「宇宙人」と言っている、その風ぼうから入るしかないかな。後は、小沢さんの陰の影響力がどう降りかかるか注目です。敗残の自民の方が分裂含みの話題などあって、ネタとしては期待できそうですね。(談)
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■人物略歴
1951年、岡山県生まれ。03年日本漫画家協会賞大賞、06年菊池寛賞など受賞多数。代表作に「がんばれ!!タブチくん!!」。朝日新聞朝刊に「ののちゃん」、サンデー毎日に「お笑い・いしい商店」連載中。
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■人物略歴
イラストライター。主に、育児・政治系出版物制作にかかわる。現在「3・4・5歳児の保育」(小学館)で保育思想マンガなどを連載中。著書に「世界に学ぼう! 子育て支援」(フレーベル館)など。
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■人物略歴
1953年、高知県生まれ。4コマ漫画を得意とする。90年「ぶったまゲリラ」で文芸春秋漫画賞。代表作に「バンカー野郎」「いも虫ランド」など。現在、サンデー毎日に「いつでも梅を」連載中。
毎日新聞 2009年9月3日 東京夕刊