早い話が

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早い話が:鳩山は軍国主義の味?=金子秀敏

 鳩山由紀夫首相について、いっとき米国メディアが反米、離米ではないかと書いたことがあった。「日米安保対等論」や「アジア重視」の真意を疑った。要するにハトヤマという名前が知られていなかったのだ。

 中国では、鳩山という名前は非常に有名だ。有名すぎてかえって面倒だ。香港の有力紙がこう書いていた--鳩山由紀夫と聞くと軍国主義の味がする。中国人ならだれでも知っている鳩山は文革時代の「紅灯記」に登場する悪役憲兵隊長だし、由紀夫は自衛隊にクーデターを呼びかけて切腹した過激な武士道崇拝者の名前だ。

 「紅灯記」とは、毛沢東の妻、江青が作らせた革命京劇で、共産党の地下党員である鉄道員とその娘の話。娘は、日本の憲兵に連行されて処刑された父が、実は、実の父ではなく革命の犠牲となった実の父の同志だったことを知り、2人の父の革命精神を受け継ぐ決意を固めるという筋立てだ。凶悪な猪首(いくび)の憲兵隊長の名前が、なぜか鳩山。

 これが映画になり、漫画本になった。首相の祖父一郎は東条軍閥政治に反対して軽井沢に隠遁(いんとん)していたというのに、中年以上の中国人の頭には鳩山は悪い軍人というイメージが刷り込まれている。ハト派を連想する人はいない。

 首相の父威一郎氏は1976年に外相に就任。日中平和友好条約の予備交渉に当たった。当時も、あの悪い鳩山の子かと勘ぐられて、悩まされたという。

 由紀夫首相は、野党時代から何度も訪中し、胡錦濤国家主席と「古い友人」の関係を作ってきた。だから、新首相に対する中国の反応は好意的だ。

 このところ中国のインターネットに、鳩山家4代と中国の深い関係を詳しく紹介した記事が流れている。

 曽祖父で衆議院議長になった和夫は、早稲田大学の校長として清国留学生を多数受け入れた。

 首相となった祖父一郎は、日中民間貿易協定に尽力。祖母薫の父、寺田栄は大アジア主義の政治結社、玄洋社幹部で、孫文の革命事業を支援した。

 父は外相としての実績のほかに、日本友愛青年協会会長として日中青年交流や中国人研修生の受け入れ事業を行った、などなどである。

 中国政府が厳しく管理するサイトで、こんなに詳しい紹介をするのはなぜだろう。中国人の誤った鳩山軍国主義イメージを消しておかないと、円満な対日外交ができないからだろうか。(専門編集委員)

毎日新聞 2009年9月24日 東京夕刊

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