きょうのコラム「時鐘」 2009年9月26日

 朝からびろうな話で恐縮だが、自宅トイレの洋式便器に座って小用を足す男性が33%いる、という調査結果があった。粗相をしがちな幼児ではなく、立派な大人の話である

「座り派」は増える傾向にあるという。トイレの作法も、いろいろである。立ち位置を定め、背筋を伸ばして虚空に目をやり、しばし、物思いにふける。あれこそ男の作法と思っていると、いまに「守旧派」と言われるようになるかもしれない

街の食堂で、似たような光景を見掛けた。二人連れの若い女性が親子丼を注文し、「スプーンもちょうだい」と声を掛けた。やがて届いた丼に彼女たちはスプーンを突っ込んで、ほお張り始めた。カレーライスを食べるみたいに

確かに、汁気を含んだご飯は、はしでは扱いにくい。中華料理の丼物は、レンゲを使う。不器用なはし使いはみっともないが、丼物にスプーンの組み合わせは、幼児の食事風景にしか映らない

「座り」トイレとスプーンの食事は、似て非なるものだろう。奇妙に見えて案外そうでない作法と、こっけいなだけのもの。暮らしが便利になると、人は時々、はき違えをする。