保坂展人のどこどこ日記
政治、経済、文化を幅広く語る。
 



今日は参議院議員会館に赴いて、民主党の松野信夫参議院議員(公共事業チェック議員の会幹事長)と今後の議員の会の活動のあり方について打合せをした。八ッ場ダムや川辺川ダムについて世論の関心が沸騰している今、超党派の議員の会の役割も大きいとの認識で一致した。10月の下旬にも、新議員に呼びかけて新体制を構築してメンバーの拡充をはかることにした。

昨日のエントリー(「八ッ場ダム、とめどなく溢れる思考停止報道」)に関して、たくさんの関連ブログや反響を頂いた。新聞・テレビ・週刊誌とメディアが発達しているはずのこの国でも、メディアの深層に仕掛けられた「八ッ場ダム、途中でやめるなんてもったいない」という論調は、またたくまにユキダルマ式に膨らんでお茶の間を席巻した。

私たち公共事業チェック議員の会では、八ッ場ダムなどの大型公共事業が中止された場合に、「ダム建設予定地に居住する住民の生活再建・地域振興」に寄与する法案作成の実務作業を手がけていた。「中止するなんてダムに振り回された住民はどうなるのか」ということは、当然ながら考えてきたことなのだ。ところが、国土交通省には「ダム建設と引き換えの補償」というスキームしかない。ダム建設を受け入れれば金は出すが、反対して作らせないならビタ一文やらないよという高圧的な態度を河川局のダム役人に取らせてきたのは、歴代の自民党政権なのだということを忘れないでおきたい。

しかし、このダムは最初の計画から57年も経っているのだ。水需要(利水)や防災(治水)の環境が変わって、国が「ダム建設の必要は薄れ、工事途中であっても中止をすることになった」という判断はありえるのだ。その時に必要になるのが「生活再建・地域振興」に国が予算をつけるという仕組みだ。しかし、歴代自民党政府は、「ダム中止」後の住民支援スキームをつくることを回避してきた。大型公共事業が止まってしまっては困るからである。今回の八ッ場ダム中心問題も、住民支援のための生活再建・地域振興をセットで考えなければならない。

石原慎太郎東京都知事は、「異常気象が深刻化しており、日本だったいつ干ばつにさらされるかわからない」と述べているが、まるで八ッ場ダムが止まると東京の水需要に影響を与えるかのような言い方である。利根川水系にはすでに11のダムがあり、これらのダムの夏の利水容量は4億3329㎥だ。渇水が心配される夏に、八ッ場ダムは洪水調節のために水位を下げるので利水容量は2500㎥が加わるに過ぎなくて、わずか5%増えるだけである。

八ッ場ダム問題で深刻な影響を受けたのは、間違いなく水没地区の住民をはじめとした周辺の地域の人たちである。しかし、そもそもこのダムが必要だと計画を立案したのは半世紀前の旧建設省の役人たちである。「強酸性の水など首都圏の水ガメには無理があります」という声があがれば、「それなら石灰を入れて中和してしまえ」という発想で、すでに中和作業は45年にわたっている。

 時のアセスという言葉がある。57年も経過して、国土交通省が自民党政権で「動き出したら止まらない公共事業」の論理で走り続けたのだから、必要があってもなくてもダムをつくろうというのはおかしい。つくる必要があればつくるし、必要がなければやめる、ここは冷静な判断が必要だ。

ダムにも寿命がある。日本には、ダムをつくる技術はあっても、土砂やヘドロで埋まったダムを解体し、自然の川に戻す技術はない。百年先を見通せば、治水対策でもはるかに有効な河川の浚渫や護岸工事などをコツコツと積み重ねた方がはるかに安くすみ、税金も有効に活用される。続きは明日また。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 8 )



前の記事へ 次の記事へ
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
現在、コメントを受け取らないよう設定されております。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
 
この記事のトラックバック Ping-URL
 


ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません
 
・送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
 
 
四たび八ッ場ダム (夕暮菜日記)
タイトルがなんだかホッツェンプロッツのようになってしまった。 八ッ場ダムについて、ナイスな指摘があちこちにあるので、引用紹介しておきたい。 まずは『保坂展人のどこどこ日記(2009.09.24)』。 ====================================== 「中止するなんてダムに振...
 
 
 
八ツ場ダムに限らず、ダムには寿命がある (日々の小さな感動日記)
先日保坂展人さんのブログの記事に対する感想と言うか、意見をエントリしたんですが、24日付のエントリに重要な部分があったので、今回も紹介したいと思います。 詳細については語られていないが、ダムの寿命について少しだけ書いてあります。私は以前からダムの寿命につ...
 
 
 
 八ツ場ダムの報道について (政治)
八ツ場ダムについての報道、少し偏っているような気がします。 ダム賛成派の報道が九割以上しめていると思います。 どうしてこうもダム反対派の報道が見られないのでしょうか。 何かの力が働いているのだろうか。もしくはマスコミの程度が低いだけなのだろうか。 私は八...
 
 
 
読売新聞は脳死状態 (日本の片隅で「バカ!」と叫ぶ)
[PR] YouTube動画で振り返る、懐かしい青春の日の名曲たち JALがダッチロール 状態に陥り、ハードランディング が濃厚となっている。日航 の西松社長といえば中期再生プラン発表にあたり、御自身の年収を960万円(日航パイロットの平均年収1954万円の約半...
 
 
 
「もう、黙っちゃいられん!」NHK(日本偏向協会)に抗議のFAXを送りましょう! (BLOG版「ヘンリー・オーツの独り言」)
昨日の夜の7時のNHKのニュースを見ていて「あれっ?」と思うことがあった。というのも昨日まで八ツ場ダムの建設中止に対して反対する地元関...
 
 
 
金曜日  憂楽嘲(ごまめの翁)ブログの目次 (護憲+グループ・ごまめのブログ)
09年9月25日  金曜日  憂楽嘲(ごまめの翁)ブログの目次 1・国際関係見出し{/arrow_r/}(ここからお入り下さい) 2・オバマ大統領と鳩山首相・国連演説・鳩山の訴え{/arrow_r/}(ここからお入り下さい) 3・行革・ムダ・ダム・不正。裏金{/arrow_r/}(ここからお入り下さ...
 
 
 
ワイドショーのコメンテーターは、マニフェストの意味を理解していない。 (ひげログ人)
昨日の出勤前、テレビのニュースを何気なく見ていたら、聞き捨てならないせりふを聞い
 
 
 
塩森恵子 『純情娘 ガテン系』 (集英社・「you」 連載中) その3 (Die Weblogtagesschau laut dem Kaetzchen)
 連休は忙しかったので,ようやく塩森恵子さんのマンガ評論が書けます(笑)  かつての巨匠「少女マンガ家」の 武田道子 が老後を過ごそうと,実家の跡地を5階建ての賃貸マンションへ新築して欲しいと,仕事の姿に惚れた 黒沢塔子 が専務を務める「黒沢工務店」へ仕事...