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新たな地域振興モデル

2009年9月25日0時0分

 従来から地域振興の手段は、工場誘致と公共事業による国費の導入、補助金の確保が基本だった。いわば外部資源依存型だった。国も地方も財源難の今、従来の手法だけでは目的を達成できない。

 このため近年では、地域産業の振興や新産業の育成、観光開発といった自助努力による地域活性化に取り組んでいる。考えられる多様な手段を講じているとはいえ、従来の公共事業などのような即効性は期待できない。何か効果的な振興策はないか、各地とも真剣に模索している。

 その一例として大阪府庁舎の老朽化、建て替え問題対策がある。破綻(はたん)した大阪市の第三セクターWTCの買収による移転案を再度府議会へ提案しようとしている。その狙いは、WTCのある大阪南港が関西やアジアの扇の要のような位置にある。その立地特性を生かして地方分権時代をにらんだ拠点となる都市圏へ育成したいと考えているようだ。

 ところで、住民にとっては市町村役場に比べ、都道府県庁はなじみが薄い。大阪の場合、都心部から臨海部までは離れているが、ここへ移転しても住民サービスの低下につながるとは思えない。

 実は明治以来、大阪の先覚者は都心の繁栄を港につなごうと苦心してきた。第6代知事の西村捨三は、知事退任後に大阪築港事務所の初代所長になった。戦後も歴代大阪市長らが臨海部の埋め立てやインフラ整備を進めた。都心部と港との直結は、大阪の悲願であったといえる。

 今回の提案が承認され、ブリュッセルでEU本部の関連産業が育ったように、ベイエリアに大阪府関連産業が発展し、沈滞気味の臨海部の活力源となれば、地域振興の新モデルになるかもしれない。(共生)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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