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水泳選手・入江陵介のお母さん 久美子さん:2

リズミカルな泳ぎ「ピアノ学ばせたから」

2009年9月15日

 中学生になるころから、男の子の体格は急成長する。ただ、陵介(19)にとってのその時期は、自分自身がクロールに向いていないことを痛感する時期となった。大阪近郊から泳ぎに自信がある子らが集まってくるイトマンスイミングスクールでは、泳ぎも体格も引き離され、どうしてもクロールで勝てないのである。

 しかし、陵介の性格からして、コーチに「背泳ぎをやりたい」と直接言うわけがない。言える立場でもない。陵介なりに頭を使って、「背泳ぎ転向」に向けて作戦を練っていたのだろう。

 「あの子らしかったですよ。コーチにさりげなく『僕、背泳ぎもできますよ』ってアピールするんです。アピールといっても、ただ練習まえとかあとに、コーチが見ていようと見ていまいと、黙々と背泳ぎで泳いでいるだけなんです」と久美子(51)は話す。

     *

 入江家はスポーツ一家というわけではないが、父の智英(53)は高校時代にラグビー、大学時代はアメリカンフットボールをやっていた。ただ、その体格や性格は兄の晋平(22)に遺伝したらしい。

 陵介はと言えば、音楽好きの久美子の性格を受け継いでいる。3人きょうだいのうちひとりぐらいは芸術の世界にと考えた久美子は、姉、兄ともども陵介にも幼稚園時代からピアノを学ばせた。

 「ピアノも、よく練習してました。陵介の進学を考え始めたころ、近所の夕陽丘高校に音楽科ができたんです。そこに進んで音楽家になってくれないかなって。私だけが思っていただけですが」

     *

 ところが、背泳ぎに出会ってから、陵介の水泳への熱の入れ方がまったく変わっていく。泳ぐたびに記録が伸びる。全国中学大会、ジュニアオリンピック、国体などで次々優勝し、中学3年生までに100メートルと200メートルでともに何度も中学新記録を塗り替えていく。

 当然ながら、久美子の「陵介を音楽家に」という夢も遠のいていった。

 「でも、陵介の泳ぎがリズミカルだって褒められると、あ、やっぱり、ピアノを学ばせたからだ、と思ったりします。親は、子どものどこかに、自分の影響を見つけたいものです」

 (敬称略、石川雅彦)

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