「大相撲秋場所・11日目」(23日、両国国技館)
横綱白鵬が大関魁皇を寄り切って1敗を死守した。これで幕内勝率を8割に乗せ、自身を「双葉山の生まれ変わり」と称した。“双葉山化”を急ぐ白鵬に対し、個人後援会長からは「まだ早い」と苦言もあったが、白鵬は69連勝を成し遂げた『角聖』の後ろ姿を追う。
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双葉山を意識した取り口は慎重そのものだった。自分が得意ではない左四つになりながらも、白鵬は魁皇の体を起こし、一歩、また一歩。土俵際では逆転の投げを食らわないようにしっかりと腰を割って、相手を土俵の外へ寄り切った。
支度部屋では余裕たっぷりに「右おっつけがよかった」と振り返った。幕内戦績を376勝94敗とし、幕内勝率をちょうど8割に乗せた。8割の大台は過去には8割3分8厘の大鵬と8割2厘の双葉山しかいない数字。理想とする伝説の『角聖』に近づいている。
この日朝、宮城野部屋が宿舎を構える名古屋市緑区内で伝統工芸品「鳴海絞り」を作っている会社の4代目社長が、浴衣を持って部屋を訪れた。実はこの会社、2代前の社長が双葉山に浴衣を提供したという逸話を持っている。
浴衣を合わせた白鵬は、双葉山関連の書籍7冊も贈られ、ご満悦。「双葉山の前世はモンゴルの武士で、元寇(げんこう)で攻めてきたんだよ。それで九州で(双葉山が)生まれた。(自分は)1985年に、またモンゴルで生まれたんだ」と“双葉山の生まれ変わり”を主張した。
個人後援会の服部眞司会長は「受けて立つような形にこだわるのはまだ早い」と“双葉山化”を懸念するが、周囲を納得させるには信じる道を貫いて結果を出すことが一番。朝青龍との直接対決を残しての1差はまだV圏内だ。「(朝青龍と)2人で頑張っていきたい」と猛追宣言した白鵬。相撲道を極められるか。