1. HOME
  2. 物流業界ニュース
  3. 2009年8月
  4. 【今号の焦点】高速道路利用誘導施策の開始でフェリー、RORO船各社の経営が悪化

物流業界ニュース

今号の焦点 高速道路利用誘導施策の開始でフェリー、RORO船各社の経営が悪化

高速道路利用誘導施策の開始でフェリー、RORO船各社の経営が悪化

フェリー、RORO船の各業界団体が支援要望活動を活発化

緊急経済対策として国が高速道路の深夜割引拡大や週末祝祭日乗用車1000円乗り放題を開始したことで、フェリー、RORO船業界が大きな影響を受けている。

特に今年から始まった高速道路1000円制度以降は長距離フェリー業界の売上高は前年の同時期と比べると3割以上も減少。こうした中、長距離フェリーやRORO船事業者などで構成する各業界団体は国土交通省や主要政党に対する働きかけを本格化している。今年に入ってからのフェリー各航路のトラック輸送状況と業界の取り組みを見てみる。

●長距離フェリーやRORO船は減便や荷動き減で軒並み輸送実績が悪化

長距離フェリーやRORO船は各航路で進められた減便と利用者の減少によって航送台数の下落が続いている。08年度の長距離フェリーのトラック輸送実績は上期、下期ともに前年度の実績を割り込み、通期では前年度実績を17万台以上下回っている。各航路で減便を進めているため、前年同期のトラック航送実績を単純比較することはできないが全体としては大幅な減少基調にある。09年度に入ってからの輸送実績についても前年同期と比べて20%近い落ち込みが続いている。

長距離フェリーの航路数が多い九州〜阪神間についてみてみると、こちらの航路の08年度トラック輸送実績は北九州〜阪神航路で前年度比9.6%減、中九州〜阪神航路で同24.8%減、南九州〜阪神航路で同10.4%減、九州〜阪神航路全体でも同14.9%の減少となった。

続く4月、5月、6月の実績についても北九州〜阪神航路で前年同期比25.9%減、中九州〜阪神航路で同29.3%減、南九州〜阪神航路で同12.1%減となり、九州〜阪神航路全体では同24%の減少。北九州〜京浜航路でも同18.8%減となり、九州航路全体では同23.6%の減少を記録している。この傾向はトラック輸送だけでなく、旅客、乗用車、バスもほぼ同様だが、各車両別の内訳を見るとトラックは前年同期と比べて23.6%減と乗用車の同19.9%減、同バスの10.8%減と比較してもトラックが特に大きく落ち込んでいるのがわかる。

長距離フェリーの利用量減少には景気低迷による荷動きそのものの減少やバンカーサーチャージ実施による実質的な値上げなどが影響したといわれるが、さらに追い打ちをかけたのが高速道路の各種割引。昨年10月から実施された深夜割引拡大に加えて今年からは乗用車に限られるものの、土日祝日の1000円乗り放題が実施されたことで利用減がさらに加速した。今年のGW期間中の九州〜阪神航路のトラック輸送量に至っては前年同期比で約28%減と過去に例をみない大幅な落ち込みとなった。

●フェリー、旅客船、RORO船の各業界団体が要望活動を本格化

こうした状況のなか、長距離フェリーやRORO船各社は各業界団体や発着地別船社ごとに共同で国土交通省や各政党など関係先に支援を求める要望書を出すなど、活動を本格化させている。

大阪南港など関西発着のフェリー各社の幹部は6月末に業界を取り巻く環境が悪化している現状を国土交通省など関係各所に直接説明。7月には日本長距離フェリー協会と日本旅客船協会の両会長が国土交通省あてにフェリーと旅客船業界の支援に関する要望書「「平成21年度通常総会決議事項実現についての要望」をそれぞれ提出した。日本長距離フェリー協会が単独で支援要望を提出するのは今年に入ってから初めて。1、高速道路料金上限1000円を始めとする今般の高速道路料金の大幅値下げ実施を2年以上、延長しないこと。上限1000円の適用をこれ以上、平日に拡大したり、全車種平日3割引きなどの各種割引制度をこれ以上拡大しないこと。2、平成21年度第二次補正予算、平成22年度予算において、更なるフェリー、旅客船への支援措置の拡充を図ること。3、地方公共団体においても港湾施設使用料の軽減措置を含め、より一層の支援措置を講じるよう国が強力に指導すること。4、海上へのモーダルシフト推進施策を一層強力に推進すること、の4項目からなる要望書を提出した。

さらに今月に入ってからは九州発着の大型フェリーを運航する船社で構成する九州長距離フェリー協議会がモーダルシフトに関する公開質問状を主要6政党の政策担当者宛に提出。この質問状は高速道路の深夜割引拡大など高速道路に貨物や旅客を誘導する政策が採られることで逆モーダルシフト化が進む現状について、その対応策を尋ねたもの。これに対して自由民主党、民主党、公明党、日本共産党、社会民主党、国民新党の全政党から「長距離フェリーを含めた海上輸送手段の重要性はますます増加する」との認識を示す回答を得た。

長距離フェリーや旅客船の業界団体のほか、RORO船社を会員にもつ日本内航海運組合総連合会も傘下の内航大型船輸送海運組合がメインとなって各地方自治体を含めた関係各所への要望活動を展開。海事振興連盟での会合での要望のほか、民主党からのヒアリングなどにも対応し、RORO船業界への支援を求めている。

日本長距離フェリー協会の米田真一郎会長は「温室効果ガス削減の中期目標を達成するには運輸部門でのモーダルシフト推進が不可欠。しかし、今は逆モーダルシフトといっていいほど、高速道路の利用を促す政策が採られている」とした上で「長距離フェリー各社はコスト削減のために航路の再編や減便、運航時間の調整など様々な経営努力をしている。一方、高速道路料金の方は様々な引き下げが行われており、自助努力だけではこれに抵抗できない。異例の支援措置を講じてもらってはいるのだが、これをもって充分とは言えないのも実情」と語っており、フェリーやRORO船業界に対する更なる支援を求めていくようだ。

カーゴニュース8月25日号

powered by cargo news

富士物流は、物流・倉庫ソリューションの一括アウトソーシング(3PL)を実現します。