参考フラッシュ:夢と魔法のファンタジーみたいなやつ 当サイトで公開中のフラッシュに登場するキャラクター「ネズミーマウス」。 黒くて丸い耳に赤いパンツと黄色い靴、白い手袋。どこから見てもミッキーマウスを匂わせている。 これを今更「全て私のオリジナルデザイン」と主張する気はない。 ただ、それがオリジナルを単に複製した二次使用ではなく、パロディであることを意識して作ったつもりだ。 まさか、あれを見て「ミッキーが悪態ついてる〜」と子供でも思わないだろう。 どう見ても偽者だ。 このキャラクターのパロディとは著作権の世界ではやっかいな存在で、法律上、厳格な決まりがないのだ。 だからコモンセンスという曖昧なもので左右される。 パロディ?パクリ?著作権って何だろう。そしてミッキーマウスの著作権はどうなっているのか? それらを踏まえて、ネズミーマウスとディズニーの著作権上の関係について考えてみたい。 |
ネズミーマウスは黒か?・・・白か?それともネズミ色? |
(1)著作権は永遠に不滅です!ネズミーマウスがムービーの最後で声高らかに宣言する。さすが「ミスター著作権」が言うと説得力があるものだ。 だが、果たして著作権は永遠なのか?早速、ミッキーマウスで検証してみる。 ミッキーマウスの初出は一般に1928年の米アニメ映画「蒸気船ウィリー」だとされている。 既に70年以上の月日が経ったが、いまだにミッキーの著作権はディズニーの手中にある。 なぜか?著作権保護期間が、ことあるごとに伸ばされ続けているからである。 1998年に延長の改正があったのは記憶に新しい。 このため、2004年に切れるはずの「蒸気船ウィリー」の著作権が再び延長されてしまったのだ。 それによりミッキーマウスの著作権も延長である。 ミッキーの著作権が切れそうになる度になぜか保護期間が延びてしまう。米著作権保護法がミッキーマウス保護法と揶揄される所以である。 しかし、これはあくまでもアメリカの話。 日本とアメリカはともにベルヌ条約に加盟している。 ベルヌ条約とは、著作権に関する国際条約である。 この条約により、日本国内ではミッキーマウス保護法は適用されず、日本の著作権法が適用される。 著作権保護期間はそれぞれの国の法によって定められたものに従うのが条約上決まっているからだ。 ミッキーマウスは映画の中のキャラクターであり、一般に「映画の著作物」の一部と考えられている。 映画の著作物は日本では公開後50年で切れる。戦時加算を入れてもプラス10年の60年で1988年。 日本の著作権法で考えた場合、「蒸気船ウィリー」はとうの昔に著作権が切れているのだ。 当然、ミッキーの著作権も切れている。 プールの事件が起きたのは、どうやら1987年、まだ著作権がぎりぎり切れていなかった時らしい。 だからこの件に関しては、正当な主張だろう。良いか悪いかは話は別だが。 また、現在著作権が切れているのは、あくまでも蒸気船ウィリーとそれに登場するクラシックミッキー(黒目)であり、白目のミッキー他は著作権が生きている。 更には商標権はディズニーが所有しており、ミッキー等を商用目的で利用するのはNG。 しかし、それらに触れなければ、蒸気船ウイリーの映画を勝手に上映したり、黒目のミッキーを複製して公表することは著作権上、なんら問題はないのだ。 日本国内では、ディズニーはそれらを警告または訴える権利をもはや持っていない。 小学生たちよ!今ならプールの底にミッキー(黒目)を描いてもディズニーは何も言ってこれないぞ! (2)パロディが違法ならパーマンも違法だ桃太郎や金太郎、ピーターパンにシンデレラ、人魚姫、これら著作権が消滅したものをパブリックドメインと言う。 著作権が切れたミッキーもパブリックドメインだろうか? 狭義で考えた場合、答えはイエス。 広義で考えれば、ノーである。 一般に著作権と呼ばれるのは著作者財産権を指す。 著作者イコール著作権所有者ではない。 作曲家が自分の著作権をレコード会社に売った後に、その曲をレコード会社の許可なくインターネットで無料配布したとする。 当然、違法である。 著作権者はそのレコード会社だからである。 このように一般に譲渡されている権利が著作財産権である。 (1)の通り、ミッキーの著作財産権は消滅している。 しかし、日本には著作財産権とは別に著作者人格権というものがある。 これは著作者が譲渡を不可能とする著作者自身の権利。 そして、著作者人格権の中には同一性保持権というものがある。 その名の通り、著作物の同一性を保持する権利で、著作者の名誉を汚したりするような勝手な改変を行ってはいけないのだ。 著作者人格権は著作者の死後も、殆ど消滅することはない。 保護期間の期限が定められていないからだ。 同一性保持権とは何か?音楽で言うと、作詞者が死んで50年以上経っても、替え歌を歌っちゃいけないよ、ということ。 百年経とうが駄目なものは駄目だ。遺族が駄目だと言えば駄目。 この同一性保持権というのが曲者で、この不明瞭故に常軌を逸した権利まで派生するため、実際にはその判断は常識に委ねることになる。 買ったマンガ本に落書きしただけで同一性保持権違反だと訴えられても、流石にそりゃないよ、とそうなる。 ここで問題になるのが、パロディである。 ネズミーマウスがまさにそれだが、これが実にやっかいだ。 著作財産権はクリアしていても、著作人格権をクリアしなければネズミーマウスの命は危ない。 単純に著作者人格権に従えばパロディは全て違法だ。しかし前述の通り、それではあんまりだ。パロディは違法か? 改めて考えてみる。 パロディに関わる有名な裁判にマッド・アマノ事件がある。 雪山の写真を元にコラージュを発表したアマノ氏が訴えられた事件で、パロディにまつわる裁判として有名な話だ。 この裁判では、 「他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴をそれ自体として直接感得させないような態様においてこれを利用する場合」に限り他人の著作物を無許諾で利用できる がマッド・アマノ作品はそれに当たらない、と敗訴している。 パロディが負けた、という印象が強いが、着目すべきは「他人の著作物を無許可で利用できる」という点だ。 全文を意訳すると、あまり似せちゃうと問題だけど、だからと言ってパロディを禁止するわけじゃないよーという解釈が自然だろう。 あくまでも一つの判例に過ぎないが、パロディ自体は違法ではない。 ネズミーマウスはパロディだ。判例が記すとおり、パロディそのものは禁じられないのだ。 ああああ、でも、「表現形式上の本質的な特徴」をビンビンに感じるぞ、ネズミーマウスには!! (3)どうでもいいが初代ミッキーはフェリックスのまがい物みたいだかつてサザエボンというキャラクターがあった。 サザエさんの髪型とバカボンパパの顔をもつユニークなキャラクター商品で10年ほど前に大ヒットしたが、裁判により違法とされ、その姿を消してしまった。 この裁判では、サザエボンは単なる合成キャラクターに過ぎず、パロディではないとはっきり否定されている。 要はパクリということだ。 ネズミーマウスもご覧の通り、合成キャラクター。 それでも私がパロディと主張する理由は、サザエボンと違って、作品上のキャラクターとして、ネズミーは活動しているからである。 ミッキーマウスをイメージさせるキャラクターを使って、ディズニー批判をする。風刺を目的とした立派なパロディだ。 パロディである以上、似せる必要があったのだ。似せなければパロディとして意味がない。 そして全く同一であっても面白くない。似ていながら全く別物であることが理想だ。 あの容姿はパロディの為だと考えている。 だからパロディ上のキャラクターであり、単なる盗用とは考えていない。 しかし、それはあくまでも私の主張であり、ネズミーがパロティとして認められないなら、或いはパロディであったとしても(2)の「表現形式上の本質的な特徴を直接感得する」キャラクターだったならば、どうだろうか。 残念ながら、私は素直に諦める。 仮に世間の人の多くが無問題と認識してくれたとしても、私は諦める。 著作者人格権を所有する人々が駄目と言って、裁判官も駄目と言えば、諦める。 でも、ディズニーが駄目と言うことは出来ない。 なぜなら、ミッキーマウスは「映画の著作物」であるからだ。 一般に著作者人格権は法人にも存在する(日本の著作権法の変なとこ)。 しかし「映画の著作物」の著作者人格権は、法人著作であっても、映画に関わる演出家や美術家など個々の製作者に存在する。 ディズニーは著作者人格権を持っていないのだ。 ネズミーマウスは著作権的に黒かも知れない。でも、それとディズニーとは全くもって無関係な話だ。 日本国内において「蒸気船ウイリー」とそれに登場するミッキーマウスの著作権は財産権、人格権ともにディズニーにはない。 (4)ドンキーコングはキングコングに勝訴したこれまでの話は日本国内での話。 しかし、ネズミーマウスのフラッシュがインターネットで公開されている限り、国際的な視点でも考えねばならない。 このサイトは米国からのアクセスを前提に英語表記になっている。そして本家ディズニーはアメリカの法人。 アメリカの法律に準拠して考えた場合も考えてみる。 (1)の通り、「蒸気船ウィリー」の著作権が生きているから、ミッキーの使用は不可。 アメリカは著作権に関して特に厳しい国だ。 しかし、代わりにフェアユースという概念があり、公正利用であれば著作権者の許諾無く使用できる。 報道や研究目的などの利用がそれだ。 パロディも、フェアユースだと認められれば、当然問題はない。 パロディが公正利用?そんな馬鹿な?と思うかもしれない。 しかし、過去にプリティウーマンのパロディ歌詞での作品批判がフェアユースとして認められた判例がある。 パロディは批評の一形態として認められ、その中の批判で原作の売り上げが落ちても問題ないとの判決だ。 あくまでもこれは一例であり、蓋を開けてみなければどっちに転ぶか分からないが、前例が与える今後への影響は大きい。 ドイツでは自由利用の規定、フランスではまんまパロディ法があり、欧米ではパロディに関しての法が日本に比べ進んでおり、 パロディは文化促進の一端として認められる傾向がある。 シンプソンズなんかで大胆にディズニーのパロディが見られるのは、こういう背景があるからだろう。 そもそも「蒸気船ウィリー」がバスター・キートンの「蒸気船ビリー」のパロディであり、初期ディズニーと言えばパロディの宝庫だ。 前述のプリティウーマンでは、原曲がそのまま使われたパロディで、いわゆる替え歌である。 今世紀に入り、風とともに去りぬの舞台をそのまま使ったパロディ作も勝訴している。 日本でいうなら、俺ガン小説が認められたりすること(黒歴史だけど)。 アメリカでは幅広くパロディがフェアユースとして認められていることから、ネズミーマウスはパロディであり、フェアユースに該当すると私は判断した。 (5)アイワークスじゃねえの?本当は(1)の通り、日本ではミッキー(黒目)の著作権(著作財産権)は切れている。 「映画の著作物」であり「法人著作物」であることを前提にしているからである。 しかし、本当のところ、当時は誰の名義で公表されたか、はっきりしていないのが事実。 では、もしもミッキーが「美術の著作物」そして「個人著作物」であり、更にはネズミーマウスが認められるべきパロディではなかったら? 最後に、日本でミッキーの著作権(著作者財産権)が消滅していない場合について考える。 著作権が切れてなければ、(3)同様に私はやはり諦める。 日本にはフェアユースという概念がない。著作財産権が切れてなければ、前述の同一性保持権ばかりでなく、複製権他、問題が山積みだ。 しかし、これはあくまでも誰かの個人著作物だと立証されればの話。ミッキーの場合、じゃあ誰が著作者なのか?という問題を先に解決しないといけない。 個人の著作物だった場合、誰が作ったものなのかをはっきりとしなければならない。 ミッキーを生み出したのは誰か?それは分からない。 有力な説は、ウォルト・ディズニーとアブ・アイワークスの共同作である。 一般にアイワークスがデザインを、ディズニーが声と性格を与えたと考えられている。 アイワークスはディズニーを支え、そして愛想をつかしてディズニーの元を去った人。 個人著作物であった場合、著作権がディズニーのものなのかアイワークスのものなのか、或いは二人のものなのか、更に言えば全く違う誰かのものなのか、はっきりしなければならない。 「美術の著作物」であった場合、著作権を主張する前に、誰がミッキーの著作権を持っているのか、先にそちらをはっきりさせる必要がある。 ミッキーがディズニー自身の創作で著作権がディズニーに社に存在することが立証されれば、私は素直に諦めたい。 (6)あとがき(1)日本では、ミッキーの著作財産権は消滅している。 (2)パロディ自体は合法。 (3)著作者人格権はディズニーにあらず。 (4)アメリカではフェアユースに該当する。 (5)日本で著作財産権が生きていた場合、誰の著作物かが先に問題だ。 以上より、ネズミーマウスは黒かも知れないが、それを訴える権利をディズニーは持っていないという結論です。 法律には詳しくなく、資料もネットオンリーなので、ボロだらけの内容かと思います。 出来る限り簡潔にするため、新旧著作権法の違い等は割愛し、なるべくネズミーマウスに不利な条件を選んで考えています。 それでも客観性に欠ける面があったり、無知、勘違いがあるかも知れません。 そういった点があれば、ご指摘頂ければ幸いです。 それから、どちらかと言うとミッキーより「ねずみ男」の方が問題点が多いです。 水木先生の著作権がガッチリ存在しますので。 水木先生すみません。暖かく黙認して頂けることを心より願っています。 最後に、私、ディズニーが嫌いというわけではないです。好きなところもあるし、嫌いなところもあります。 ただ、著作権については、ジャイアニズム全開なところは何とかして欲しい、というのが正直な意見です。 |
文:管理人 |