「脱官僚」を掲げて衆院選に大勝した民主党は、約100人の国会議員を各省庁に送り込むなど政治家主導の意思決定システムの構築を目指しており、政と官の関係は大きく様変わりすることになりそうだ。55年体制成立以降の大半を自民党と歩んできた霞が関の官僚たちは、「これからどうなるのか」と不安や警戒感を高めているが、民主党との新たな関係づくりに向けた模索も始まりつつある。
自民党政権下の政府は、事前に党の部会などで了承を得られなければ、政策決定ができない仕組みだった。官僚は自ら立案した政策を党の族議員らに根回し、閣僚の国会答弁を作成することで政治に対する強い影響力を持った。自民党が続けてきた政府と与党の「二元体制」が、既得権益を守る動きや、省益優先などの弊害につながったと指摘される。
民主党は、政策決定を政府に一元化し、「官僚任せの政治に終止符を打つ」(鳩山由紀夫代表)方針だ。政治主導で政策を立案・調整し、官邸直属の「国家戦略局」を設置して予算の骨格策定に当たるなど、政と官の関係の抜本的な転換を目指す。「天下りのあっせん禁止」や「地域主権の確立」も掲げており、中央官僚は「霞が関を解体するつもりだ」と警戒感をあらわにする。
各省ともこれまで野党だった民主党とのパイプは細い。ただ、政と官との関係が変わることは、「族議員の抵抗でできなかった政策変更などもこれからは可能になるのでは」(経済官庁幹部)との期待する声もある。【平地修】
毎日新聞 2009年8月31日 東京朝刊