【ニューヨーク上野央絵】鳩山由紀夫首相は国連総会出席のため滞在中の米ニューヨークで、米英豪中韓露6カ国とそれぞれ就任後初の首脳会談を23日終えた。首相が打ち出した温室効果ガス削減の中期目標「2020年までに90年比25%減」に各国首脳から高い関心が寄せられるなど、「運に恵まれた」(首相同行筋)滑り出しとなった。ただ、その他の衆院選マニフェスト(政権公約)を会談で自ら持ち出すことは控え、個人的な信頼関係作りを優先する「安全運転」ぶりも目立った。
「他国が自国の義務をあいまいにしている中で、鳩山首相が突破口となるような決断を行う用意を示したのが非常に印象的。首相の表明は重要だった」
23日昼(日本時間24日未明)、ロシアのメドベージェフ大統領は鳩山首相との会談で、前日22日夜の国連気候変動サミット首脳夕食会での印象を盛んに強調してみせた。鳩山首相は「高い評価に感謝する」と応じた。
「『25%削減』のスピーチは、多くの首脳に感銘を与えたようだ」。首相同行筋は首脳会談をこう振り返る。
鳩山首相は首脳会談にあたって、自らに言い聞かせたことがあったようだ。どの会談でも、相手国との懸案には深く踏み込まず、ひたすら個人的な信頼関係を作ることに専念することだった。
「今ここに私が来ているのはオバマ大統領と米国民に感謝するためだ。皆さんがチェンジという勇気を与えてくださったから政権交代できた」。鳩山首相は23日午前(日本時間23日夜)、オバマ米大統領との会談冒頭、首相就任前の今月3日に電話協議で述べた言葉を繰り返した。
その一方で、政権公約に盛り込んだ東アジア共同体構想については、米国内の一部にある「日本の米国離れでは」との懸念に配慮してか言及しなかった。同様に「緊密で対等な日米関係」を巡っても、連立合意に盛り込まれた日米地位協定改定の提起や沖縄・米軍普天間飛行場を含む米軍再編計画見直しといった具体論はおろか、「対等」という表現も使わなかった。
李明博(イミョンバク)韓国大統領との会談でも「新政権は歴史をしっかり見つめる勇気を持った政権」と強調する一方、靖国神社参拝問題については、日中首脳会談同様、言及しなかった。
今回の一連の首脳会談で第1目標だった信頼関係構築についてはまずまずの成功と踏む首相。ビギナーズラックに終わらないよう、先送りした諸懸案の解決に向けた努力が今後求められる。
毎日新聞 2009年9月24日 22時10分