<ガイドprofile>
氏名:田中館 忠夫(たなかだて ただお)
派遣国:シリア
指導科目:グループ・コーディネーター(繊維工業専門学校)
活動期間:2006年3月~2007年3月
派遣前の職業等:石油会社勤務
【シリア基礎情報】
国の正式名称 : | シリア・アラブ共和国 |
首都 : | ダマスカス |
人口 : | 1,836万人(2006年シリア統計局推定) |
言語 : | 公用語はアラビア語、都市部では英語・仏語が通用。 |
通貨 : | シリア・ポンド/1ドル=52.8シリア・ポンド(公定レート)(2005年世銀) |
構成人種 : | アラブ人85%、他にアルメニア人、クルド人、パレスチナ人 |
宗教 : | イスラム教85%(スンニ派70%、アラウィ派12%)、キリスト教13% |
現在のJICAボランティア数 : | 青年海外協力隊員 41人/シニア海外ボランティア 17人
(2007年9月30日現在) |
赴任時の日本からの行き方 : | ■成田(日本)⇒アジア経由で15時間。ヨーロッパ経由だと16~18時間。直行便はない。 |
【 田中館版シリア共和国ガイド 】
Q:
日本人はどれくらいいますか?いるとすればどんな方、目的の方が多いのですか?
A:
シリアに滞在する日本人は最近では250人前後。日本大使館及びJICA関係者が大半で、民間企業で働く人は限られています。随伴家族を含めてJICA関係者が100名前後と最大勢力となっています。これもJICAのプレゼンスが大きい一因です。
Q:
シリアでの一番の楽しみは何ですか?
A:
世界最古の都市ダマスカス。4000年の歴史を誇る城壁に囲まれたオールド・ダマスカスの片隅に立つことからシリアでのボランティア活動は始まります。何といっても、シリアの一番の楽しみは、世界遺産5つを含む古い遺跡を探訪することにあります。旧約聖書のアベルとカインの世界から、キリスト紀元の始まる時代のローマ帝国の栄光、ウマイヤ朝イスラム帝国など、目で見る世界史を辿ることのできる観光地が国中に散らばっています。そして、ボランティアは、シリアでは他のどの国でも見られない程のJICAの知名度が高いおかげで、シリア中どこへ行っても熱烈歓迎を受けます。裏を返せば、そこにはシリアの置かれた難しい政治情勢から、訪問する外国人の数が極めて少ないという事情があります。そんな中で、貴重な遺跡群を独り占めにできるような旅は、シリアを任国とするどのボランティアも満喫する一番の楽しみです。交通費の安さもその楽しみを加速します。
Q:
あなたが一番気に入っているスポットや名所はどこですか?
A:
シリアで一番異国を感じるのは、やはりパルミラ遺跡辺りで内陸の砂漠の景色を見る時と、強い太陽と乾燥した空気に接する時です。海と山に囲まれた日本で育った日本人には、何としても身の回りに水の湿気が必要です。そんな強い太陽の日差しの下、ラタキアの“コートダジュール・ド・シャム”とフランス風に名づけられた、地中海のビーチリゾートに立つ時、何ともいえぬ安堵感を覚えます。ここは、すっかりバカンス気分に浸れる息抜きの場所です。これは、内陸を旅行しながら雄大なユーフラテス河の流れを見る時の気分にも通じています。
Q:
シリアであなたが一番ビックリしたことは何ですか?
A:
イスラム暦の第9の月ラマダン(断食月)です。私たちには断食という辛い修行の課せられる月という印象があるのですが、現実には一年で一番人々が高揚した気分を楽しめる、ちょうど日本のしきたりからいうと、師走の慌ただしさが巡ってくる月です。空腹で仕事の効率などすっかり落ちてしまうのですが、そうした経済観念などすっかり忘れて、煌々と光り輝く夜の世界で人々が行き交う賑わいは、全く価値観の違う異文化を見せつけられる格好の季節行事となっています。ラマダン明けの連休には、皆が着飾って遠くの親類縁者を訪問しあいます。
Q:
シリアでのスーパースターや有名人はどんな方ですか?(可能であれば)
A:
やはりテレビに一番多く映るスーパースターは、若干41歳の若きバッシャール・アサド大統領でしょう。シリアはこの若き大統領と共にグローバル化の波に翻弄されながら、改革開放を唱えて新しい国づくりに懸命です。古くから歌姫として有名なスーパースターといえば、何といってもウム・クルトゥーム(エジプト)とファイルーズ(レバノン)に尽きます。毎日、朝と夕方にこの二人の歌がラジオを通して流れると、人々は古き良き時代を懐かしみます。日本でいうと昔の美空ひばりに相当するスーパースターです。
Q:
シリアで有名な日本人は誰ですか?
A:
何といってもシリア滞在4年半という前JICA所長でしょうか。シリアの置かれた国際的立場から、海外からの経済援助が限られる中、JICAの孤軍奮闘がことに目立ちます。そのJICAを率いてきたシリア事務所長の姿はどこへ行っても圧倒的な人気です。サッカー選手としてJICAチームを率いてピッチに立つ姿も目立っていました。そして、毎年JICAカップ(UNRWAサッカー大会)の応援に駆けつけるJICAのオフィシャル・サポーター北沢豪選手も事務所長と並んで有名です。
Q:
シリアでの日本人のイメージはどんな感じですか?
A:
シリアは外国人の滞在者が極めて少ない国です。したがって、日本人は外国人としてその姿形の分かりやすさから大変目立ちます。どこへ行ってもすぐ声をかけられますし、子供たちが集まってきます。大人しくて礼儀正しいと思われているせいだと思います。やはり、車や電化製品のイメージから工業先進国で、頭のいい国民だという印象を与えています。ただ、東アジア人で一番有名なのはカンフー映画のジャッキー・チェンなので、映画ファンの若者たちは日本人を見ても「チンチョンチャン」と声をかけてきて、中国人、韓国人と区別がつかないのは当然のこと。たまに日本人の中には、中国人と間違えられたと腹を立てる人もいますが、シリアの人はこうして声をかけてくるのは、親愛の情からで何も悪気はないと言います。
Q:
あなたのお気に入りの名物料理は何ですか?
A:
私はお酒好きなので、シリア料理の中ではクッベという、餃子、春巻きに似たひき肉詰めの揚げ物が好きでした。週末にテニスをやって汗をかいた後、このクッペを肴にビールをぐい飲みすると、何ともいえない充実感を持てたものです。シリアでこのクッペが特別なのは、その形にあります。シリアの北部アレッポ近郊ジャバル・ホス地方の古い住居の姿が、このクッペという料理と全く同じ形をしていて、こちらの方はコッペと呼ばれていますが、どちらがどちらか区別がつかなくなってしまう人もたくさんいます。ちょうどラグビー・ボールを半分にして建てたコッペの姿は、大変珍しいジャバル・ホス観光の目玉にもなっています。2006年には、この地方で活動する青年海外協力隊員が、この手作りコッベの住宅造りに挑戦して話題をさらいました。コッペの他、シリアの名物料理を求めるなら、まず「食の都」アレッポに駆けつけなくては。
※この記事は、青年海外協力隊員が派遣中の現地の様子を主観に基づき記事にしたものです。
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