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きょうの社説 2009年9月24日
◎里山・生物多様性保全 ため池の管理も要のひとつ
来年の「国連生物多様性年」に向けて、石川県内で生物多様性と里山里海の保全に関す
るセミナーやシンポジウムが相次いで計画されている。県は来年10月に名古屋市で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の関連会議を県内に誘致し、石川の里山里海の豊かさを国際的にアピールする取り組みを進めているが、里山の生物多様性保全で怠ってならないのは、県内に3千以上もある農業用のため池の管理である。ため池は農業用水の供給だけでなく、多様な生物をはぐくむ場であり、地域住民の歴史 ・文化資産ともなっている。一昨年の能登半島地震で、多くのため池が損壊したため県は今年、ため池が決壊した場合の対処法や日常の管理方法をまとめた手引きを作り、各市町や土地改良区などに配布したが、防災面だけでなく、ため池の多様な価値をもっと広く知ってもらい、保全活動に県民の協力を得る取り組みを強めたい。 県内のため池の多くは能登地域に集中している。かんがい用に不可欠であり、志賀町の 伝統祭事である「コダケ祭り」に代表されるように、水利と豊作を祈る神事を通して地域住民の暮らしと文化に深く結びついている。 普段は地元の土地改良区や生産組合、水利組合などが管理しているが、ため池が多くあ る中山間地域は高齢化と過疎化が進み、農業者だけで維持するのが年々困難になっている。このため、地域の住民グループなどが、ため池の堤防の整備や周辺の環境保全、本来の生態系を壊す外来魚の駆除などに協力する例が増えている。 県が今年夏に実施した生物多様性保全に関する県民アンケートによると、里山保全のた めに必要な取り組みとして最も多く挙げられたのは「ボランティアや地域住民参加の保全活動」であり、「機会があれば参加したい」と回答した人が6割を超えている。里山保全に対する住民の関心を、ため池にも向けさせたい。 県が策定を進めている「生物多様性戦略ビジョン」の中に、ため池の保全をきちっと位 置づけておくことも重要であろう。
◎中小法人税軽減 影響大きい「租特」見直し
民主党は衆院選マニフェスト(政権公約)に沿い、2010年度から中小企業を対象に
した法人税の軽減税率を現行の18%から11%に引き下げる方向という。中小企業支援のための税制改正案の一つであるが、企業の関心がさらに強いのは、民主党が財源ねん出策として打ち出している租税特別措置(租特)見直しの全体像がどうなるかである。今年度の租特では、中小企業の法人税率軽減のほか、企業の設備投資・研究開発減税や 住宅ローン減税、地価税の停止などさまざまな特別措置で計約7兆3500億円の減税が行われている。 民主党は子ども手当などの財源を確保するため、租特を全面的に見直し、一部を廃止す るなどして約1兆3千億円をねん出することを政権公約に掲げている。しかし、その内容はまだ明確にされておらず、見直しいかんで景気や企業活動に大きな影響を及ぼす恐れが指摘されている。 租特は、特定の政策目標実現のため、本則とは別に時限措置として税率を変更している もので、国税関係だけで300項目以上を数える。その中には長年にわたって実施され、特定業界の既得権のようになっているという批判を受けているものもある。多岐にわたる租特の効果を検証し、整理する必要があるのは確かであろう。 ただ、見直し作業は、財源のねん出に主眼を置くか、企業支援に重きを置くかで、おの ずと結果は違ってくる。民主党の租特見直しの基本的スタンスがいまひとつ分かりにくい。 中小企業の法人税軽減については、税率引き下げより、適用される所得額(現行800 万円以下)の拡大を求める声もある。企業経営の実態を的確に分析して、できる限り早く租特見直しの方向と内容を示してもらいたい。 民主党はまた、租特の見直しで課税ベースが広がれば、企業の国際競争力を勘案して法 人税率を見直すとしている。しかし、連立を組む社民、国民新党は大企業の法人税軽減には反対の姿勢を見せている。企業税制に関する鳩山政権の考え方も示してほしい。
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