|
きょうのコラム「時鐘」 2009年9月24日
もう脂が乗っていて、サンマがおいしい。秋の代表的な味覚だが、子どものころから、この北の海の魚と付き合ってきたわけではない
実物よりも先に、映画や漫画でサンマを知った。七輪の上でもうもうと煙を上げる焦げた魚が、果たしておいしいのだろうか。不思議だったが、食べてみると、確かにおいしい。おいしいが、何か物足りなさも覚える そう言うと、「懐かしさも味なんですよ」と、キザなせりふを店主が返した。そうかもしれない。いまの時期、カレイを食べると、ふと子どものころの情景がよみがえったりする。地物ではないサンマには、それがない 全国から旬の味が集まるようになっても、当地では値が張っても地物を求める人が多いと聞いた。新鮮な味はもちろんだが、加えていろいろな「思い出」も味わう喜びを求めているのかもしれない。寂しかった食卓の記憶も、時がたてば懐かしくなり、自分だけの隠し味になる 実りの秋は、とりわけうれしい。味が多少変わっていても、カキもクリもイチジクもおいしい。やっかみ半分がないでもないが、マツタケ何するものぞ、と思う。 |