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【暮らし】療養病床 削減なら介護の質低下 民主党は計画凍結の方針 報酬減り職員が減2009年9月24日 民主党を中心とする連立政権が発足した。介護、医療の分野では、同党が療養病床削減計画の「当面の凍結」を打ち出していることが注目される。計画通り削減されるとどんな問題が起きる可能性があるのか。療養病床の現場を預かる医師に話を聞いた。 (佐橋大) 東京都八王子市の上川病院は、百二十六床すべてが介護療養病床。入院患者の平均要介護度は4・5と重い。ほとんどが認知症と、脳血管疾患、腎臓病、がんなどの疾患を併発し、少しのことで健康状態が悪化してしまう人たちだ。 患者の急変に備え、医師は二十四時間体制で詰める。認知症で意思をうまく伝えられない患者たちには、わずかなしぐさでトイレに導き、体調変化にも気付いてくれる看護や介護の職員は、心強い存在だ。ここで最期をみとられる患者は76%。医療の必要度が高く、特別養護老人ホームなどに移れる人はほとんどいないという。 同病院の吉岡充理事長は、療養病床の中に、認知症の患者が暴れないよう、患者をベッドに縛り付けるところがあることを認めつつ「うちは患者さんの尊厳を保つため、拘束をせず、おむつも極力しません。他の病院にも広がってほしいが、削減計画が進めば、それも難しくなる」と話す。 ◇ 削減計画では、介護療養病床は廃止され、介護療養型老人保健施設(新型老健)などへの転換を求められる。新型老健では、法律上求められる看護・介護職員数こそ療養病床と変わらないものの、医師の常駐は義務でなくなる。介護報酬も安くなり、施設の収入も減ってしまう。 削減計画が実行されたとき、吉岡理事長が描く将来像はこうだ。 収入源に伴い、施設は職員を法定定員ぎりぎりまで削らざるをえなくなる。職員減に伴い、介護、医療の質が低下すれば、ベッドへの縛り付けが再び日常化。患者の健康状態が悪化しかねない。医師が常駐しないため、状態が不安定な患者の受け入れは困難に。施設を追われる介護難民が大量に発生し、在宅に戻された患者の家族には、たんの吸引や認知症への対応など、重い負担がのしかかる−。 ◇ 日本慢性期医療協会常任理事で、療養病床のある愛知県碧南市の小林記念病院の小林武彦理事長は「老人だけの問題と思いがちだが、救急医療にも悪影響が及ぶ」と警告する。 救急病院は、症状の安定した入院患者を順次、療養病床などに移し、新たな急患に対応する。療養病床が減れば、この流れがせき止められる。 「救急医療を機能させるためにも、療養病床が必要」。そう指摘する小林理事長は「核家族化や介護者の高齢化、医療の進歩による介護の長期化で、医療と介護の必要性の高い高齢者が在宅に戻ることは、今後さらに困難になるだろう。療養病床の必要性は減らない」と続ける。 削減計画に現場の反発が根強いのは、社会保障費削減のため、唐突に策定された経緯があるからだ。小林理事長は「国民が高齢期にどんな医療、介護を望み、そのためにどこまで金銭的な負担をするかコンセンサスがない。これをまずつくるべきだ」と主張する。 <療養病床> 長期療養が必要な患者が入院する病床。介護保険適用の介護型と、医療保険適用の医療型がある。2006年の医療制度改革の一環で、厚生労働省は、介護型12万床を廃し、医療型25万床を15万床に削減する計画を立てた。その後、「患者が行き場を失う」との批判から、医療型の削減目標を22万床に緩和している。
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