「大相撲秋場所10日目」(22日、両国国技館)
大関千代大海の負け越しが決定した。玉乃島に無抵抗で押し出される姿に、横綱審議委員会の石橋義夫委員は引退勧告を突きつけた。千代大海は11日目の23日から休場し、対戦相手の琴光喜は不戦勝となる。横綱朝青龍は稀勢の里を寄り切り、初日から10連勝で単独首位。横綱白鵬は鶴竜を逆転の取ったりで下し、1敗を守った。大関の琴欧洲、琴光喜はともに敗れ、2敗に後退した。
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心まで折れたのか-。突いて出た千代大海は、すぐさま相手の頭をはたくと真っすぐ後退。そのままあっさりと土俵を割った。その間わずか2秒3。あまりにあっけなく負け越しが決定し、館内からは大きなため息が漏れた。
力ない足取りで支度部屋に戻ると、「休みます」と11日目からの休場を明言。「いろんな悪いところと付き合ってきたけど、土俵上で力が出せないっていうのは…」。目を伏せ、唇をかみしめ、今にも泣き出しそうな表情で声を絞り出した。左ひざ、右ひじは全治1カ月と診断されている。「引退はないですよね」との質問には、「分かんない」とポツリ。
師匠の九重親方(元横綱千代の富士)は「満身創痍(そうい)で、大関の力が出せないので休ませます」と説明し、引退については「九州(場所)はチャンスある」と、きっぱり否定した。だが史上ワースト14度目のかど番となる来場所出場に、周囲の声は厳しい。
ふがいない相撲を会場で観戦した横綱審議委員会の石橋義夫委員は、「来場所(出場するのは)難しいのではないか。ほかの者の手本にならない」と痛烈に断罪。「わたしはかど番5回で辞めるべきだと思っている。相撲界のために、自分で決断してほしい」と、引退勧告まで突きつけた。土俵下で見届けた放駒審判部長(元大関魁傑)も「相撲になってない」と容赦ない評価を下した。
今年の春場所は、大関史上ワーストの2勝13敗を記録。全盛期の突き押しは見る影もなく、07年九州場所以来2ケタ勝利もない。史上最多64場所の在位を誇る名大関に、“決断の時”は迫っている。