グローバリゼーションはアメリカナイゼーションだと反米派は主張するがこれは真っ赤な嘘だ。ハーバード大学教授のAkira Iriye氏の論文『Globalization as Americanization?』は強く上掲の考え方を否定する。グローバリズムは人・物の移動をより容易にしたため、現在ではパンデミックの危険性が指摘される始末である。そして1970年代のミュンヘンオリンピックにおけるパレスチナ独立運動家によるテロ行為も『パレスチナ問題』なる『ローカル』な問題をオリンピックと言うグローバルな場で、テレビを通じて『グローバルな問題』にした点では、テロリズムのグローバル化の方がアメリカより早かった。その他、環境問題も、アメリカ政府よりも各国のNGOなどの環境団体が動き『グローバル』になった。そもそも、アメリカにはモンロー主義に象徴される反グローバル思想が強く、国際連盟には不参加で、国連は成立させたが冷戦中も、現在も基本的に距離を置いている。地雷禁止条約、京都議定書などにもアメリカは加盟していないことからもアメリカこそ、グローバリゼーションと一致していないことは明らかだ。
グローバリズムは単一的価値観それも、アメリカに近い価値観を押し付けると言うが、現実に起きていることは『グローカライゼーション』で、『ローカル』色もグローバルの場に引き出されるため、先記の通り、パレスチナ問題が世界的紛争と認定されるきっかけになった。もっと書けば、グローバリゼションはリージョナルな結合体をも作り出しており、EUなどがそうだ。彼らは1930年代のブロック経済と違い、閉鎖的な域内共同体ではなく、開放的な域内共同体を形成している。これも、グローバリゼーションのお陰だ。そして、EUは、アメリカと常に対立し続け、ラムズフェルド元国防長官を『古いユーロッパ』と批判させるまでに成長した。
ちなみに、アメリカとてグローバリゼーションの影響を受けていないわけではない。1902年にイギリス社会の日常がアメリカ化したことを描いたことで有名なW.T.Steadの文章を一応引用しよう。
The average man rises in the morning from his New England sheets, he shaves with William’s soap and a Yankee razor, pulls on his Boston boots over his socks from North Carolina, fastens his Connecticut braces, slips his Waltham or Waterbury watch in his pocket, and sits down to breakfast.
このように、イギリス人の日常生活は1900年代初頭からアメリカの影響を強く受けていた。最近のアメリカの音楽史の研究者は、ドイツ音楽の影響を指摘している。(Jessica Gienow-Hecht)当時、アメリカはヨーロッパを憧れていた。現在も、政治家や知的レベルの高い方々は、日本人が英語の単語を使うようにフランス語の単語を混ぜてしゃべる。これも一種、アメリカがグローバリズムの影響を受けた一つだ。しかし、文化的影響も、アメリカ人が受け入れたから受け入れられたのであって、そこには一種の恣意的側面があり、グローバリズムとは違う。論文著者が指摘するのは、アメリカは21世紀に入り、よりローカルになり、グローバリズムはよりグローバルにしている。このようにアメリカナイゼーションとグローバリゼーションは必ずしも一致していない。逆に、グローバリゼーションを受け入れない日本は、世界経済からも見捨てられているが、、
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by libertarian0606
渡部昇一の妄想ワールド