貸し渋りを生んできた窓口体質は変わるのか?
では、今回の改正が利用頻度を大きくアップさせ、貧困対策としての目覚しい効果に結びつくだろうか。政策効果を予測する場合、それを利用する側にとって「使いやすい」あるいは「実感に即している」かどうかという点は大きなポイントである。だが、それだけでは政策は動いてはいかない。
もう一つ重要なポイントは、その政策に発するサービスを現場で提供する側の意識もあわせて評価の対象とすべき点にある。医療や介護を例にとれば、利用者負担は下がったが連動してサービス提供側への報酬が下がるとなれば、現場の人材不足やモチベーションの低下に結びつく。その点をどうバックアップしていくかという視点も同時に求められる。
今年5月、厚労省の社会・援護局が開催した主管課長会議において、「生活福祉資金貸付事業について」という資料が配布された。資料では、制度の利用低迷の背景が分析されているが、その中に「近年、自治体の財政歳入不足にともなう対応策として、社会福祉協議会に対し当該貸付原資を返還させ、貸し渋りを招き、需要に対応しきれていない都道府県が見受けられる」という一文がある。自治体の財政難にともなって「貸す側」の政策実行に大きな弊害が発生しているというわけだ。
そこで、厚労省では、今回の見直しに際して、「すでに各都道府県社会福祉協議会が有している貸付原資を整理し、活用できるものについて見直し後の貸付原資とする」としたうえで、資金ニーズに合わせて、貸付原資および欠損補てん積立金を100%国からの補助にすることとした。また、貸付に際して窓口となる市町村社会福祉協議会の相談支援体制の強化を図るため、必要な事務費についても予算措置を行なうとしている。
この大盤振る舞いの財源となるのが、麻生前内閣の肝いりである09年度補正予算の中の「セーフティネット支援対策等事業費補助金」である。気になるのは、この補正予算をバックにした特例という点だ。あくまで厳しい雇用環境下における時限的な政策と位置づけられているわけだが、果たしてこれで政策効果が上がるのかどうか。