例えば、この総合支援資金の中には、生活支援費・住宅入居費・一時生活再建費の3つがある。これまでの貸付枠では、福祉費の中に「住宅改築等」を目的とした特別枠はあったが、「住宅入居」(しかも、敷金・礼金といった住宅賃貸にかかる費用を具体的に列挙)をはっきりと打ち出したものはなかった。非正規雇用の労働者が増える中、派遣村に見られるような失職と同時に住居まで失うという時代の状況を反映したものといえる。
また、一時生活再建費については、就職活動費などのほか、家賃・公共料金の滞納の立替、債務整理弁護士費用などという具合例があげられている。これらも現代的な貧困にまつわる状況を反映させたものといえる。
ちなみに、この「一時生活再建費」の創設は、多重債務問題に取り組む日本弁護士連合会が、今年6月に発表した「改正貸金業法の早期完全施行に向けたセーフティネット貸付制度の充実を求める意見書」において、「連帯保証人を貸付の要件としないこと」とともに示されていた課題である。
同意見書では、「各社会福祉協議会は、申し込みに際し多重債務者が判明した場合に、貸付金が債務の返済に使用される懸念から、貸付を拒絶する場合があるが(もっとも要綱上はそのような規定はない)、弁護士等の債務整理の受任などを条件に貸付を行なうよう要綱に明記すべきである」と記されている。
わが国の公的融資の場合、対象者が借金漬けであったりすると、その後の貸し倒れなどを恐れることもあって、極力対象から除外する傾向がある。つまり、役所的な感覚で「身ぎれい」な低所得者を選別するわけだが、いま時の貧困事情と照らせば、あまりにもバーチャルな感覚といえるだろう。
こうした感覚が、貸付実績の低迷を生んできた大きな要因とするなら、大きな一歩を踏み出したという点で評価していい。