80年代以降、バブル経済崩壊後の景気の浮き沈みはあったものの、貸付件数の漸減傾向は変わっていない。一方で、やはり貧困世帯にかかわりの深い生活保護の被保護世帯数は、ここ10年で約1.8倍の伸びを記録し、昨年12月には過去最高の115万世帯を超えた。
生活福祉資金貸付の対象者は、生活保護にまでは至らない、いわゆるボーダーライン層に位置している。とはいえ、これだけ対称的な利用動向に現れるということは、この貸付制度自体の使い勝手の悪さを現しているのは間違いない。事実、昨年から今年にかけて、厚労省の社会・援護局が開催した「生活保護制度に関する国の地方と協議」においても、取りまとめにおいて「生活福祉資金貸付制度をさらに活用しやすいものとすべきである」という指摘があった。
多重債務者の債務整理を想定した一時生活再建費などに注目
今回の制度見直しのポイントは、大きく分けて3つある。第一に、現行で10種類ある融資メニューの統合と再編成を行ない、利用者にとって分かりやすいものにすると同時に、多様な資金ニーズを包括的に取り込めるようにしたこと。第二に、連帯保証人を確保できない利用者についても、貸付を行なえるようにしたこと。第三に、原則として年3%となっている金利について、連帯保証人を確保した場合は無利子、それ以外でも1.5%に引き下げを行なうというものだ。
生活困窮者の側から見れば、連帯保証人不要や金利の引き下げという点が注目されるところだが、最も大きなポイントは一番目の融資項目の再編成という部分だろう。具体的には、現行10種類のメニューを、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4つに整理する。中でも目玉となるのは総合支援資金で、リーマンショック以降の不況対策を念頭に置いたうえで、失業や減収などによって生活困窮している人の実態を反映させた枠組みとなっている。