第178回(2009年9月16日)

生活福祉資金貸付が大幅に改正

(田中 元=介護福祉ジャーナリスト)

 低所得者世帯に生活費などを貸し付ける生活福祉資金貸付制度が、今年10月から抜本的な改正になる。具体的には融資要件の緩和や貸付対象の改編などで、景気低迷によって貧困層が拡大する中、公的融資の側面から生活支援の強化を図ろうというものだ。生活保護の申請が急増する一方で、利用の低さが指摘されていた制度であるが、今回の改正により活発な利用が期待できるのか。また、低所得者の生活支援にどれだけの効果が目されるのか。新たな仕組みを分析してみたい。

生活保護の申請急増の一方で、貸付制度は漸減がつづく

 まずは生活福祉資金貸付制度について軽く触れておこう。

 生活福祉資金貸付制度は、1955年に制定になった「世帯更正資金貸付制度」を前身としている。1990年に融資対象世帯の所得制限を緩和するなどの一部改正とともに、現行の「生活福祉資金貸付」と名称変更された。貸付の原資は、国と都道府県からの補助金によって成り立ち、国の負担分は3分の2(一部融資枠は4分の3、事務費については2分の1)となっている。この原資は都道府県社会福祉協議会がプールする。融資希望者は市町村社会福祉協議会、もしくは地域の民生委員を通じて申請を行なう。

 貸付金利は年3%だが、修学や療養・介護等を目的とした資金の場合は無利子だ。低所得者世帯の生業を目的とした資金を例にとれば、貸付限度額は280万円で、据え置き期間は1年(災害等を受けた場合は2年に延長)となっている。消費者金融などに手を出すなど、多重債務に陥りやすい低所得者世帯にとっては、大きなセーフティネットの一つといえる。

 しかしながら、実際の利用は決して活発とはいえず、2008年3月末現在における貸付額は967億円で、貸付原資2065億円の半分にも満たない。利用件数も、1980年をピークに減り続けており、2007年度実績では当時の3分の1程度の約1万1200件。これは4年前と比較しても6割程度にとどまっている。

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