きょうのコラム「時鐘」 2009年9月23日

 秋の折り返しとなる「秋分の日」。これから、しのぎやすくなる

毎日、近くの山を描き続けた画家に、じっくり取材をしたことがある。正月も炎暑のころも出掛けるのだが、描いた絵はどれも山肌は緑に包まれ、青空に雲が浮かんでいる。紅葉や冬枯れの山に向かって描いても、緑の山である

画家の目は不思議だと思った。目の前の山をそっくり写すわけではないから、山の色が違っても構わない。心に刻んだ色を、カンバスの上に生み出している。そうと分かっていても、つい「いつの季節の山ですか」と、尋ねてみた

おかしなことを聞く、という顔をされたが、「秋がいいかな。暑さ寒さも彼岸までと言うだろ」と応じてくれた。彼岸は、気候の変わり目を指すだけではない。暑さ、寒さのつらさや苦しさに耐えた心が和らぐときでもある。彼岸のころ、山も見事に晴れやかな姿になる。それを描きたい、と

寒暖の厳しい北陸では、とりわけ彼岸の安らぎが実感できるだろう。が、季節の移ろいに、さほど気を止めぬ日々である。晴れやかな自然や穏やかな暮らしに、喜びを見つける日でありたい。