1990年代の中後半、「苦難の行軍」で数百万人が飢え死にしてから、北朝鮮の全域で「チャンマダン」という市場ができた。配給システムがきちんと働かなくなったためだ。医者や教師、研究員など、専門職の従事者も市場で副業をしなければやっていけないほどになった。03年からは総合市場が公式に認められた。市場の中に販売台を設けた商人はそこそこ金を稼ぐ。ほとんどは地面に板を敷いて物を売る「メトゥギ」、安価なものを高いところへ持っていって売る「ダリギ」、包みを担いで歩き回りながら売る「トットッイ」で生計維持に汲々としている。北朝鮮の「市場経済」は、もはや取り返しが付かなくなったという見方も出ている。
◆北朝鮮は4月に住民総動員令の「150日戦闘」を宣布した。12年、強盛大国建設の突破口を開くための食料など、生産活動にまい進しようというキャンペーンだ。保安員(警察官)は、「寝たきりの人を除いては皆、農村へ行こう」という方針に従って、道端で会う人は直ちに逮捕し、農村へ連れていった。今日、この戦闘が終わると、23日からは年末まで「100日戦闘」がまた始まる。「150日戦闘」の失敗を自ら認めたものと分析されている。
◆労動新聞は、「核兵器より威力的な一致団結の威力を残さずに発散しよう」と督励したが、効果がなかった。こうしたやり方の総動員令は、金正日(キム・ジョンイル)が後継者時代から愛用してきた手口だ。1974年、「70日戦闘」を皮切りに、これまで10回近い「戦闘」をやった。しかし、度重なる総動員令は、かえって計画経済を駄目にする要因になっている。限られた資源と労力を特定分野に過度に集中させるためだ。今回の「戦闘」は、息子の金正雲(キム・ジョンウン)が仕切ったという。しかし、失敗に終わったため、後継者構築作業を中断したという観測も出ている。
◆昨今の北朝鮮には「山犬(権力者)と狐(金持ちの商人)だけが残った」という言葉が流行になるほど、政権への反感が激しい。零細商人にとっては「戦闘」に動員されれば、生計維持が困難になり死刑宣告も同然だ。反抗と小規模なデモも展開してみるが、過酷な処罰の前では恐怖の雰囲気だけが広がる。核実験とミサイル発射による国際社会の制裁と食料支援の中断で、罪のない北朝鮮住民ばかりが崖っぷちに追い込まれている。金正日政権の終焉が近付いていることがここからも感じられる。
陸貞洙(ユク・ジョンス)論説委員 sooya@donga.com
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