北朝鮮労働党機関紙の労働新聞が7月6日付で、「我々の将軍様と最後までともに進もう」というスローガンの宣伝で、捏造した写真を掲載していたことが、11日に確認された。これは、北朝鮮指導部が今年7月以降、金正日(キム・ジョンイル)総書記の後継問題についての内部論議を中断させているという観測が相次ぐ中で出てきたものであり、注目される。
労働新聞1面下段に登場した問題の写真は、金総書記が7月初めに平安北道(ピョンアンプクト)大溪島(テゲド)の干拓地を訪れ、労働者とともに撮ったものだ。現場にあったスローガン版には、「偉大な金正日同志を首班とする革命の首脳部を命で死守しよう」という文句が書かれてある。00年代初期から登場したお馴染みの内容だ。
しかし、その上に大きな文字で、「我々の将軍様と最後まで志をともにしよう」と書かれたスローガン版は、後にフォトショップ・プログラムを利用して合成したものだ。まるで、橋の上に大きなスローガン版が置かれているように見えるが、よく見ると捏造した写真であることが分かる。北朝鮮メディアが、金総書記が登場するいわゆる「1号写真」を捏造して、2つのスローガン版を一度に登場させるのは異例のことだ。特に、その時点が、金総書記が姿を現わして健在であることを確認させた7月初めであり、金総書記を中心に再び一つになることを住民に強要するための宣伝・扇動に乗り出したものと分析される。
金総書記に対する忠誠を訴えるスローガン版の内容は、時代によって変化してきた。00年代以降、「敬愛する最高司令官金正日同志のために服務する」というスローガンがよく登場したが、昨年8月の金総書記の健康悪化以降は、「偉大な金正日同志を首班とする革命の首脳部を命で死守しよう」というスローガンが主に利用された。
いっぽう、ワシントンポストは11日、国内の対北朝鮮関連団体や国内外の専門家の発言を引用して、金総書記の健康が回復し、7月以降、三男の金正雲(キム・ジョンウン)への継承問題が北朝鮮内部でほとんど言及されていないと報じた。特に、北朝鮮情報誌の「臨津江(リムジンガン)」を発行する日本のアジアプレスの石丸次郎代表は、「以前は、非常に騒々しく、後継者の公式指名がまもなく行なわれると見られたが、今は後継問題と関連して高官らの公式活動がまったくない」と話したと、同紙は伝えた。これに先立ち、北朝鮮の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長は10日、日本共同通信とのインタビューで、「(後継問題が)現時点では論議されていない」と明らかにした。
最近、北朝鮮を訪問したある民間団体関係者も11日、「北朝鮮当局者が、『まだ将軍様(金正日)の指導力が堅固だ』と話した」と東亜(トンア)日報に伝えた。北朝鮮専門インターネット・メディアのデイリーNKは最近、北朝鮮内部の情報筋を引用して、「7月初めまで盛んだった『白頭(ペクトゥ)の青年隊長・金正雲将軍が、社会主義強盛大国の建設を先頭で指揮している』という宣伝が、今は完全になくなった。学校で、生徒たちに行進や全体集合をさせる時に、金正雲を称賛する歌『歩み』を歌わないよう指示が下された」と伝えた。
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