北朝鮮は、後継論議を中断したのだろうか。最近、北朝鮮内部で、後継論議の中断を暗示する様々な兆候が感知される中、形式上、北朝鮮のナンバー2である金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長が10日、日本の共同通信とのインタビューで、「現時点で論議されていない」と明らかにした。専門家たちは、この発言の真偽と背景について錯綜した分析を出している。発言内容は事実かも、事実でないかもしれない。また、その背景は、北朝鮮指導部の合理的な判断に従ったものかもしれないが、一方では、独裁体制の非合理性を現わしたとも言える。これにともなう4つのシナリオを分析した。
南成旭(ナム・ソンウク)国家安保戦略研究所長は11日、「文字通りのようだ」と評価した。金正日(キム・ジョンイル)総書記が当分の間、後継問題を公開的に論議するなという指示を下したと見ることができるということだ。南所長は、今年金総書記の健康が回復し、国政を再び掌握することになり、支配エリート内部の権力分散を防ぐためにこのような決定をしたと推測した。特に、後継者に浮上した金総書記の三男・金正雲(キム・ジョンウン)に対する「コネ作り」が深刻化し、内部疎通と政策決定の混乱が表面化したことが、直接的な原因である可能性が高い。
実際、最近北朝鮮が重要な対外政策で、過去と違った混乱を見せているというのが、政府当局者らの見方だ。金総書記が先月16日、玄貞恩(ヒョン・ジョンウン)現代(ヒョンデ)グループ会長に会い、韓国側に特使弔問団を派遣するなど、韓国への融和局面が続く中、軍部の一部で今月6日に、臨津江(イムジンガン)の黄江(ファンガン)ダムの水門を開き、韓国側に人命被害を生んだ事件を起こしたことが代表的だ。北朝鮮指導部内でも、4月の長距離ロケット発射と5月の核実験をめぐり、後継者の功績づくりのために過度に米国を刺激した挑発行為だったとの非難が出ていたという。
国防研究院の白承周(ペク・スンジュ)安保戦略研究センター長は、金総書記の精神的な障害による気まぐれと考えることもできると見ている。白センター長は、「金総書記が、昨年末と今年初めに、側近に後継論議の公論化を認めるサインを与えたが、最近は『私がいつそんな意味で言ったのか』と言って決定を覆した可能性がある」と話した。金総書記が昨年、脳血管系の疾患の治療を受けて以来、集中力障害と老人性痴呆症などのために、過去に下した決定を覆したり、覚えていない可能性があるということだ。
白センター長は、「金総書記はすでに昨年下半期以降、米国と核交渉をする過程で、相反する判断を下すケースが現れていた。最近、日本の対北朝鮮専門家の間では、北朝鮮の最高政策決定者である金総書記の精神と心理状態を重要な分析対象とする風潮が現れている」と伝えた。
世宗(セジョン)研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)上級研究員は、「金永南委員長が、北朝鮮の核心エリートの1人であることは確かだが、だからといって彼が言う言葉をそのまま受け入れるのは、ナイーブな態度だ」と話した。そして、金氏親子の3代世襲に対する国内外の非難世論を避けようという目的が最も大きいと説明した。北朝鮮は、74年に金総書記を後継者に内定しても、80年の第6回労働党大会まで、この事実を公式に確認しなかった。
京畿(キョンギ)大学の南柱洪(ナム・ジュホン)教授は、「日本のメディアは最近、後継者に指名された金正雲を集中的に取材している。最近ある日刊紙が、金正雲(Jong−un)の名前が『キム・ジョンウン(Jong−eun)」』と書かれた内部文書を発見して報じるなど、敏感な内容が流れると、金永南委員長が、日本メディアに対して、『後継者をそっとしてほしい』と警告したと見られる」と説明した。
また、南柱洪教授は、「金永南委員長の立場では、そのように話すしかなかっただろう」と語った。北朝鮮のような徹底した独裁国家で、一介のエリートが最高指導者の健康や後継者問題を事実どおり外部に公表することは不可能だということだ。金永南委員長が、名目上北朝鮮を代表する人物ではあるが、聖域でもある後継問題を語る立場ではないということだ。昨年9月9日の政権樹立60周年記念行事に金総書記が健康悪化で参加しなかった時も、金永南委員長は翌日の共同通信とのインタビューで、金総書記の健康について「問題はない」と嘘をついていた。
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