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写真と詳細リポートで振り返るゲームオーケストラコンサート“PRESS START 2009 -SYMPHONY OF GAMES-”

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●企画者5人のコメントもお届け!

 

 2009年8月2日、東京・池袋の東京芸術劇場にて開催された、ゲーム音楽のオーケストラコンサート“ファミ通PRESENTS PRESS START 2009 -SYMPHONY OF GAMES-”。初の夏開催、初の1日2回公演と、初めて尽くしだった同コンサートは大盛況のうちに幕を閉じた。その模様は速報記事として概要をお伝えしていたが、今回は公演中の写真を交えながら、各楽曲の詳細について振り返りたいと思う。

 

 ちなみに、“PRESS START”は2006年から始まったゲーム音楽のオーケストラコンサート。作曲家の植松伸夫氏、酒井省吾氏、ゲームデザイナーの桜井政博氏、シナリオライターの野島一成氏、そして指揮者の竹本泰蔵氏の5人が企画者となって、毎年ゲームメーカーやハードの垣根を越えた名曲をゲームファンに届けている。そんな“PRESS START”も今年で4回目。指揮は前述の竹本泰蔵氏、演奏は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団が担当した。

 

第1部 

『ペルソナ4』

<アトラス>

作曲:目黒将司 編曲:外山和彦 ソプラノ:高橋織子 ピアノ:江草啓太


 “PRESS START 2009”はボーカルつきの楽曲からスタート。『ペルソナ』シリーズの“ベルベットルーム”の曲としておなじみの『全ての人の魂の歌』を歌うのは、ソプラノ歌手の高橋織子氏。ピアノとストリングスの音色をバックに、原曲さながらの力強くも物悲しい歌声を披露した。続いて、おだやかな旋律から一転して奏でられる激しいメロディーは、『ペルソナ4』バトル曲の『Reach Out To The Truth』。原曲はボーカルつきのロックだが、“PRESS START”ではボーカルなしのオーケストラアレンジに。アレンジが変わっても印象的なメロディーは健在で、原曲とは違う新たな一面を見せていた。そして、1曲目を締めるのは『ペルソナ4』タイトル画面BGMの『記憶の片隅』。原曲と同じくピアノの旋律をメインにしつつも、オーケストラによる豪華な演奏となっているのが印象的だった。

 

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『スーパーマリオブラザーズ』

<任天堂>

作曲:近藤浩治 編曲:栗田信生 

 

 誰もが知っているおなじみのテーマからスタートした『スーパーマリオブラザーズ』は、実際にゲームを遊んでいるかのようなメドレー形式に。『地上BGM』から『水中BGM』へ、そして『地下BGM』へと流れ、再び『地上BGM』へ。会場で実際に聴いていた人は、マリオがピョンピョンと飛び跳ねながらステージを進む姿が浮かんだのではないだろうか。そして、最後は『ゲームオーバー』の曲で演奏は終了。オーケストラによる優雅な演奏になっても、なじみ深いメロディーの強さは薄れず、原曲の素晴らしさを再確認できるものだった。

 

 ここで司会者の坂本安代氏が登場し、企画者の5人を紹介。植松氏、酒井氏、桜井氏、野島氏、竹本氏はそれぞれ今回のコンサートについて意気込みを語った。続いて登場したのは『ペルソナ』シリーズの音楽を手掛けるアトラスの目黒将司氏と、『スーパーマリオブラザーズ』や『ゼルダの伝説』で知られる任天堂の近藤浩治氏(近藤氏は昼公演のみ)。目黒将司氏は、『Reach Out To The Truth』について「ロックでボーカルの入った曲がどうアレンジされるか心配だったのですが、すばらしかったです」とコメント。一方の近藤浩治氏は、“PRESS START”皆勤賞。今回演奏された『スーパーマリオブラザーズ』について「25年まえに作った曲なので、今日来てらっしゃるお客さんの中には、生まれていない人もいるかもしれません。当時は、ファミコンで3音だけを使って作った曲なのですが、今回のすばらしい演奏でカラフルな曲になってうれしく思います」と語った。
 

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▲壇上に上がった目黒将司氏(左)と近藤浩治氏(右)。ふたりは、企画者からの質問に答えつつ、自身が担当した曲の制作秘話を語っていた。

 

『かまいたちの夜/弟切草』

<チュンソフト>

作曲:CHUNSOFT 編曲:外山和彦 チェレスタ:江草啓太


 チェレスタの穏やかなメロディーから始まったのは、『かまいたちの夜』のタイトル画面で流れる『レクイエム』。チェレスタからストリングスと楽器が増え、物悲しいメロディーは徐々に拡大していく。その後、同じく『かまいたちの夜』のシリアスな場面などで流れる『悪夢』へとつながり、続いて『弟切草』の『館までの道で』と『奈美の思い出』へ。曲が移り変わるたびに、ゲームの情景を思い出すせいか、会場全体の空気は引き締まり、そこはかとない恐怖が広がる想いがした。

 

『幻想水滸伝』

<コナミデジタルエンタテインメント>

作曲:コナミ矩形波倶楽部 編曲:山下康介 ピアノ:江草啓太

 

 『幻想水滸伝』で演奏されたのは、オープニング曲の『幻想の世界へ』。今は亡き、作編曲ピアニストの羽田健太郎氏が編曲したアレンジバージョンを元にして、山下康介氏がオーケストラ用に編曲。これから始まる冒険を予感させる、オープニングに相応しい壮大な中にも透明感溢れるメロディーが奏でられた。
 

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『ファミコンここまで出てるのにメドレー』

<アイレムソフトウェアエンジニアリング/インテリジェントシステムズ/カプコン/コナミデジタルエンタテインメント/サン電子/任天堂/ハドソン/バンダイナムコゲームス>

編曲:酒井省吾 ピアノ:江草啓太


 ファミコンの名作の曲をメドレー形式で演奏するもの。巨大なスクリーンにはモザイク状のタイトルが表示され、曲が進むにつれてモザイクが薄れてタイトルが明らかになるという、クイズ番組のような演出が行われていた。夜の部では、曲がわかった時点で手拍子をする演出が加わるものの、どんな曲にもすかさず手拍子がつくという、観客として集まった人々のゲーム音楽への知識がうかがいしれる一面も。なお、この曲は昼の部と夜の部で演奏される曲目が異なり、両方の公演を聴いた人にはちょっとうれしい内容だった。詳しい演奏リストは、こちらの記事のセットリストを参照のこと。
 

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▲巨大スクリーンにつぎつぎと映されるゲームタイトル。『ゼルダの伝説』などの一部の曲では、曲がかかった直後に観客から拍手が湧き起こるなど、多くの観客がタイトルを見るまえにゲーム名がわかっていたようだった。演奏直後にMCで登場した桜井政博氏が、「“もっと聴きたいメドレー”でしたっけ?」と語るように、どの曲もメドレーではなく1曲丸々聴きたいと思われるものだった。

 

『PORTAL』

<VALVE>

作曲:Jonathan Coulton 編曲:かみむら周平 ボーカル:大塚茉莉子 ギター:窪田晴男 ピアノ:江草啓太


 続いての曲のまえに、桜井政博氏と野島一成氏が登場。つぎに演奏される『PORTAL』のゲームについて説明を行った。『PORTAL』は、一人称視点のシューティング(FPS)にパズル要素を加えた斬新なゲームで、海外で多くの賞を獲得している。桜井氏は壇上でXbox 360のコントローラーを手に、巨大スクリーンで『PORTAL』を実演プレイ。ときおり失敗を交えつつ、ゲームの内容をわかりやすく説明し、その後に演奏される曲『Still Alive』がゲーム中のどのような場面で演奏されるのか、その背景などについても説明を行っていた。一方、野島氏は同曲の訳詞を担当。また、同じく『PORTAL』にハマったことを語っていた。

 

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▲『PORTAL』をプレイする桜井氏。ゲームの説明をしながらも、同作のアイデアのすばらしさについて言及していた。

  

 『Still Alive』を歌ったのは、歌手の大塚茉莉子氏。原曲は、プレイヤーに試練を与えるコンピューターが歌っているものだけに、大塚氏はかわいらしくも無機質なイメージで歌い上げていた。
 

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▲ポップなメロディーに対し、あえて感情を込めずに歌う大塚茉莉子氏のかわいらしい歌とともに、第1部は締めくくられた。


第2部

『大神(おおかみ)』

<カプコン>

作曲:上田雅美/山口裕史/JUN 編曲:かみむら周平 三味線・尺八:HIDE-HIDE ピアノ:江草啓太


 独特の筆で描かれたようなグラフィックだけでなく、音楽の評価も高い『大神(おおかみ)』の楽曲で第2部が開始。和楽器デュオの“HIDE-HIDE”による三味線と尺八が、荘厳なオーケストラとのアンサンブルの中で鳴り響き、独特の雰囲気を構築していた。演奏されたのは、『始まり』、『両島原 其の二』、『「Reset」〜「ありがとう」バージョン』の3曲。

 

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▲三味線と尺八の独特の音色を響かせたHIDE-HIDE。とくに尺八の迫力は、会場中の観客の意識を引き込むほどのものがあった。

 

『エースコンバット・ゼロ ザ・ベルカン・ウォー』

<バンダイナムコゲームス>

作詞:NBGI[河野一聡] 作曲:NBGI[小林啓樹] 編曲:外山和彦 ソプラノ:高橋織子 ギター:窪田晴男/後藤貴徳


 『エースコンバット・ゼロ』から演奏されたのは、“PRESS START 2007”でも披露された『ZERO』。この楽曲に関し、作曲者であるバンダイナムコゲームスの小林啓樹氏は「男どうしの友情がぶつかり合う、男の葛藤を描いた曲です」とゲームの背景も交えながら解説していた。楽曲では、“PRESS START 2007”同様、高橋織子氏がフラメンコ風の曲を情熱的に熱唱。窪田氏、後藤氏両名のギターもオーケストラと絡みつつ、フラメンコならではの演奏を披露していた。
 

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▲曲の聴きどころについて聴かれた小林啓樹氏は、「情熱を表現する方法としてギターを使ったフラメンコをフィーチャーしました」と語った。

 

『リズム天国』

<任天堂>

作曲:米政美 編曲:外山和彦


 第2部の3曲目は、なんとオーケストラを使った生演奏で遊ぶ『リズム天国』。多数の楽曲が収録されている本作の中からは、『忍者』という曲を演奏。ゲームでは、白忍者が放った矢を黒忍者(プレイヤー)がテンポよく刀で叩き落とす、という内容だった。演奏では、白忍者役として企画者が登場し、観客の中から選出された人がその白忍者のリズムをマネしてパーカッションを叩く黒忍者役になるというもの。昼の部では酒井氏と桜井氏が、夜の部では野島氏と植松氏が白忍者役に。ゲームと同じようなリズムを刻む酒井氏と野島氏に対し、桜井氏はゲームと異なるリズムを混ぜ、植松氏にいたってはお尻を使ってタンバリンを叩くなどのパフォーマンスも。しかし、舞台に上がった観客は皆が堂々と同じリズムを叩き、植松氏に選ばれたお客さんも植松氏のアドリブを即興で返すなど、見事なパフォーマンスを見せた。その後、『リズム天国』作曲者の米政美氏が白忍者となって叩いたリズムを、今度は観客全員が手拍子でマネることに(夜の部では白忍者を野島氏と植松氏が交互に担当)。曲に合わせた一糸乱れぬ手拍子が観客席から発せられるなど、オーケストラコンサートでは類を見ない演目になっていた。
 

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▲オーケストラをBGMに『リズム天国』を行うという、非常に豪華な遊び。観客だけでなく、白忍者として舞台に立った企画者も楽しそうにリズムを刻んでいた。

 

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▲『リズム天国』作曲者である米政美氏みずからのお手本プレイ。会場は、手拍子で忠実に再現していた。

 

『ファンタジーゾーン』

<セガ>

作曲:Hiro(セガ) 編曲:中村暢之 ギター:窪田晴男


 多彩なパーカッションでサンバのリズムを表現したステージ1の『OPA-OPA!』から始まった『ファンタジーゾーン』。色彩豊かなゲームを現すように賑やかで楽しい演奏は、『SHOP』のテーマを挟み、つぎのステージの『KEEP ON THE BEAT』へ進むなど、『ファンタジーゾーン』のサウンドトラック『セガ・ゲーム・ミュージック VOL.2』と同じ、実際にゲームを遊んでいるような構成に。ステージの曲に合わせて、ときに静かに、ときに壮大に、原曲のイメージを幅広く解釈して演奏していた。なお、詳しい演奏順はこちらを見てほしい。

 

 続いて壇上に上がったのは『ファンタジーゾーン』のグラフィックデザインを担当したセガの近藤正樹氏と、同作の音楽を担当したセガのHiro氏。ポップな曲が出来上がった経緯について、Hiro氏は「近藤が作ったポップな絵に負けない陽気な曲を、と考えてできた曲です」と秘話を明かした。演奏を聴いた近藤氏は「20年以上まえに作ったゲームが、こんなにすばらしい演奏になって感激しています」と感慨深そうに語った。
 

『俺の屍を越えてゆけ』

<ソニー・コンピュータエンタテインメント>

作詞・作曲:樹原涼子 編曲:外山和彦 歌:樹原涼子 ギター:窪田晴男/後藤貴徳 ピアノ:江草啓太


 『俺の屍を越えてゆけ』のオープニング曲『花』を歌うのは、原曲と同じく作詞・作曲を務めた樹原涼子氏。樹原氏は、オーケストラをバックに会場全体に響く力強い声で熱唱。曲が終わると、のびのびと歌い上げた樹原氏に、会場全体からは惜しみない拍手が送られた。ちなみに樹原涼子氏が歌った『花』は、桜井政博氏が“PRESS START”公式サイトで「思いつく限りで、ゲーム内容にもっとも一致しているテーマ曲」と評する名曲。

 

 本編最後の演目『テイルズ オブ レジェンディア』のまえに登場したのは、作曲を担当したバンダイナムコゲームスの椎名豪氏と、植松氏、酒井氏。椎名氏は、「とても緊張しています」と言いつつ、演奏される楽曲『melfes』について解説し、ゲームの中で登場する独自言語の言葉を使ったタイトルだということを話していた。椎名氏と植松氏、酒井氏はふだんから親交が深いようで、椎名氏がお酒が飲めないといったお話や、幼少のころにエレクトーンを習っていたことが明かされた。しかも、客席には椎名氏がエレクトーンを教わった恩師の姿も。

 

 続いて演奏された『melfes 〜輝ける青 Concert version』は、今回のためにアレンジされた曲。『テイルズ オブ レジェンディア』のタイトル画面で流れる同曲は、オーケストラの真骨頂とも言えるような雄大なメロディーで観客を魅了した。

 

アンコール 

『ファイナルファンタジーX』

<スクウェア・エニックス>

作曲:植松伸夫 編曲:浜口史郎 ピアノ:江草啓太


 会場からの鳴り止まない拍手のなか、アンコールとして演奏されたのは『ファイナルファンタジーX』のタイトルデモなどで流れる『ザナルカンドにて』。当然ながら曲名が一切伏せられた状況で、突如流れ出す印象的なピアノのメロディーに、会場からは息を飲むような引き締まった空気感が流れる。

 

 その後、企画者の5人が登壇。昼の部では、自身の曲『ザナルカンドにて』の指揮を振る竹本氏の姿を見て、植松氏が涙を流すというひと幕も。続いて、司会の坂本氏から、「『星のカービィ』の『GREEN GREENS』をぜひともお願いしたいです! 桜井さんもいらっしゃいますし」というおたよりが紹介される。桜井氏は、「『カービィ』やりませんよ。内輪受けになったらダメだと思うので、『FF』だけは別格ですけど」と話すものの、植松氏から「楽屋の曲順紹介に『星のカービィ』って書いてあったよ」というネタばらしに、会場からは笑い声とともに大きな拍手が。

 

 そんな経緯を経て演奏される『星のカービィ メドレー』について、桜井氏は「初代『星のカービィ』のメドレーです。『スーパーデラックス』などを混ぜこぜにせず、あくまで初代のみにしています。ぜひお聴き逃しなく」と解説。なお夜の部では、ここでコンサートの翌日(8月3日)に誕生日を迎える桜井政博氏へ向けて、会場全体で『ハッピーバースデートゥーユー』を歌うサプライズが行われた。
 

『星のカービィ』

<任天堂/ハル研究所>

作曲:石川淳(ハル研究所) 編曲:池上正(ハル研究所)、安藤浩和(ハル研究所)

 

 『タイトル』から始まった『星のカービィ メドレー』は、軽快なテンポで各曲を演奏。『カービィ』ファンにはおなじみの曲『GREEN GREENS』などがオーケストラで壮大に彩られ、コンサート全体を締めるにふさわしい楽曲となっていた。なお、メドレーとして演奏されたのは『タイトル』、『GREEN GREENS』、『FLOAT ISLANDS』、『やきいもシューティング』、『デデデ大王のテーマ』、『エンディング』の6曲。

 

 すべての楽曲を終え、出演者全員が手をつないでお辞儀をする中、会場全体からの止むことのない拍手で大盛況のうちに公演は幕を閉じた。
 

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 公演終了後、企画者の5人にお話を伺うことができた。ここでは、興奮冷めやらぬ5人の声をお届けしよう。

 

植松伸夫氏

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――まずは、“PRESS START 2009”が終わっての感想をお聞かせください。

植松 楽しかった! ゲストが多かったですし、皆さん個性も違ったので客席で観たかったなあと思いますね。とくに『大神(おおかみ)』の尺八がスゴかったなあ。各楽曲ともすばらしかったのですが、あの曲は今回のピークのひとつだったと思います。皆さん、あの尺八の説得力には引き込まれるんじゃないかな。また、演奏していたHIDE-HIDEのふたりがカッコいいってのが許せないね(笑)。最近の若い人たちはカッコよくて、さらに何か才能を持っているっていう、天は二物を与えましたね。とにかく楽しかったです。また来年もやりたいですね!

――『リズム天国』の『忍者』でアドリブをされていましたが、あれは最初から考えられていたのでしょうか?

植松 いやいやいや。何かやりたいなあと思ってはいたんです。さきにお客さんに楽器を選んでもらうので、僕らはどの楽器が残るかわかりませんよね。だから、まえもって考えることはやめたんです。でも、何か楽器だけじゃなくて、口を叩いて音を出すといったことを思いついたらやろうと考えていたのですが、「もし、音がでなかったらどうしよう」と不安になって、声で音を出すことにしました。

――お客さんもノリよくついてきてくれましたね。

植松 そうですね。壇上に上がってくれた川崎くんね(笑)。助かりましたよ。あれでやってもらえなかったら、僕の空振りですからね(笑)。

――今回、植松さんにとってよかった楽曲は?

植松 やっぱり『大神(おおかみ)』がよかったなあ。あの曲は、かなり心に来ましたね。

――まだ開催は決まっていませんが、もし来年も“PRESS START”があるとして、抱負をお聞かせください。

植松 『忍者』みたいにお客さんといっしょに何か遊ぶのは楽しいと思う。舞台上に上がらなかった人も手拍子で参加してもらいましたが、やっぱり楽しかったんじゃないかな。あの手拍子の音圧から、みんな本気で楽しんでくれているなってわかりますよ。ああいうお客さんと何かできることが、“PRESS START”のおもしろみのひとつになってくるといいのかなと思います。できれば今後恒例にしていきたいですね。
 

<酒井省吾氏>

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――まずは、“PRESS START 2009”が終わっての感想をお聞かせください。

酒井 おこがましい言いかたかもしれませんが、年々レベルアップしてきたなと思います。企画者である自分たちも、昔はここまでお客さんに喜んでもらおうというサービス精神を持ち合わせていなかったのですが、それが少しづつ熟成されて、お客さんに楽しんでいただきたいという気持ちで作りました。楽しんでいただけたのならありがたいですね。

――趣向を工夫された内容になっていましたね。

酒井 毎年毎年ここまで受けちゃったら、来年どうするんだっていう思いもありますね(笑)。去年、『スペランカー』で皆さんに笑っていただけましたが、今年はこういう形でまた喜んでいただけていたので、去年を超えたかなと思っています。「じゃあ来年は今年を超えられるのか?」と思いますが、また頭をひねってがんばります。もし何か参考になるご意見がありましたら、公式サイトなどから投稿していただければと思います。

――酒井さんの中で、これがよかったという曲はありますか?

酒井 ひとつに絞るとまた申し訳ないのですが、『ザナルカンドにて』がいちばんよかったですね。何度聞いてもいい曲ですね。

――ステージ上でパフォーマンスをされた『リズム天国』などはいかがでしたか?

酒井 竹本さんは「何で緊張しているの?」と言いますけど、いざ舞台の上で音を発するということがどれだけ緊張するか(笑)。でも、2000人近くのお客さんが「パン!」といっせいに手を叩いた瞬間の音圧というのはビックリしました。舞台に「ポン!」と勢いよく空気が来るんですよ。ボーリングで9ピン倒したときと、10ピン全部倒したときに違いはないはずなのに、10ピン倒してストライクを出したときは何か空気の勢いを感じますよね。あれに似た音圧の空気が飛んでくるのがよかったです。あれは舞台でしか味わえない、いいものを体験させていただきました。また違うアイデアで、何か参加型のものができるといいですね。

――まだ決まってはいませんが、来年の“PRESS START”に向けての抱負をお願いします。

酒井 来年も開催して、皆さんと触れ合うことができればと思います。本当にありがたい機会をいただいていますので、知恵を絞って新しい企画を考えます。
 

<桜井政博氏>

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――まずは、“PRESS START 2009”が終わっての感想をお聞かせください。

桜井 今回はラインアップだけを見ると、「コアかな」という印象を持った人もいると思うのですが、実際に聴いてみると全然そんなことはなく、むしろライトだと感じられると思うんです。それを、演奏を聴いたらわかるけれど、聴かないとわからないのが個人的に悔しいなと思いました。でも、全体を通してのそれぞれのバランスもよかったと思います。

――桜井さんにとって、今回の中でよかった曲は?

桜井 プログラム順では『ペルソナ4』を一番最初、『俺の屍を越えてゆけ』を最後から2番目という構成にしたのですが、バッチリハマっていたと思います。

――『リズム天国』などのお客さん参加型のものが取り入れられましたね。

桜井 わりとまえからそういうお客さん参加型のものをやりたいなと思っていたんです。だけど、お客さんが乗ってくれなかったらどうしようとか、そういう怖さもあって。今回、思い切ってやってみてよかったです。もしも、つぎに“PRESS START”がある場合に、つぎの方向性を占ういいサンプルになったんじゃないかなと思いますね。

――参加型のものはお客さんからも、出演者の方からも評判がいいようですね。

桜井 そうですね。でも、たとえば『ファミコンここまで出てるのにメドレー』は、ファミコン以外で何ができるかと考えると、けっこう難しいですからね。『セガマークIIIここまで出てるのにメドレー』とか……ダメか(笑)。

――なかなか浮かんでこなそうですね(笑)。

桜井 そうなんですよね。ファミコンだからこそできるということもあるので、やるならば慎重にやらないとなあと思います。

――まだ決まってはいませんが、来年の“PRESS START”に向けての抱負をお願いします。

桜井 “PRESS START 2006”から見ていただいている方ならわかるとおり、毎年いろいろなことを試してがんばっているんですね。もし来年も開催できるとして、可能であれば、いままでのものとはまたちょっと違う仕掛けができればより幸せだなと思います。ただ、それがユーザーの望むものから離れてはいけないので、アンケートや公式サイトの投稿欄で曲目希望などを書いてほしいなと思いますね。
 

<野島一成氏>

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――『リズム天国』の『忍者』は緊張されましたか?

野島 緊張しました(笑)。ステージに上がれば、緊張はどうにかなるだろうと思っていたんですが、ステージに上がる直前に桜井さんから「野島さん、リズム遅れ気味ですよ」と言われて(笑)。それで「あ、そうなんだ!」と自覚してから、急に緊張し始めてしまいましたね。いやー、ステージに上がってくださった方には申し訳ないことをしたなと。喜んでいただけていればいいんですが……。

――植松さんがかなりアドリブをされていましたね。

野島 本当は僕が植松さんのあとにやる予定だったんですが、植松さんがあとになってくれてよかったですよ。『忍者』のパーカッションパートは7回叩く場所があるんですが、リハーサルで僕が数えられなくなってしまって。これはヤバいなということで、僕が何かやらかしてしまっても、植松さんは何かその場を盛り上げてくれるに違いないだろうと思って植松さんにあとになってもらったんです。植松さんを信じてよかった(笑)。

――今回演奏された曲の中でお気に入りの曲は?

野島 『ファミコンここまで出てるのにメドレー』は、古い人間にはたまらないですね。全部聴きたい。あれだけで、ひとつコンサートができるくらいですからね。「そうそう、これありましたね!」っていう曲があってよかったです。でも、じつはそのあとの『PORTAL』でステージに上がる段取りを覚えるので精一杯でした。桜井さんのマイクをずっと持っているのが、意外と疲れるんですよ(笑)。だんだんと腕がプルプル震えだして、「桜井さん早くー」と思いながらも、ステージに立っているとスクリーンが見えないから状況も把握できませんでした。

――まだ決まってはいませんが、来年の“PRESS START”に向けての抱負をお願いします。

野島 また『リズム天国』をやりたいですね(笑)。リベンジしたいです。ステージへ上がるまえには、こういう手法は「2回目はないかな」と思っていたのですが、終わってみると「やってみたい」という思いがふつふつと沸き上がってきました。お客さんだけでなく、出演者も非常に楽しんでいましたので、またきっとこういった機会があるかもしれませんね。僕はまったく同じモノでもいいと思っているんです。また『忍者』でもいいじゃないかと(笑)。
 

<竹本泰蔵氏>

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――まずは、“PRESS START 2009”が終わっての感想をお聞かせください。

竹本 お客さんと遊ぶ企画があったのが、非常に楽しかったですね。それがいちばん印象に残っています。お客さんの反応がダイレクトに返ってきたというのがうれしかった。いままでは、こちらが演奏をして音楽をご提供させていただくという形だったのが、今度は楽しみもいっしょに返していただける。そんなパワーをもらった気がしました。

――本当のゲームを遊んでいるようなコンサートでしたね。

竹本 そうですね! ああ、いいコメントだ(笑)。本当に会場全体がゲームを楽しんでいるような雰囲気になってよかったです。

――竹本さんが指揮をされて、この曲がよかったなというのはありますか?

竹本 それは言っちゃマズイでしょ?(笑)。それぞれの楽曲にそれぞれの持ち味やいいところがあったので、なかなか比較はできませんよね。ただ自分の好き嫌いだけで言うと、アンコールでやった『ザナルカンドにて』が大好きなんです。あちこちで「好きだ」と公言していますから(笑)。

――その『ザナルカンドにて』を聴いて、植松さんが泣かれたようですが?

竹本 実際に見ていないので、それはわからないのですが(笑)、ただ僕が自然と指揮にすごく気持ちが入ったのは事実です。じつは、“PRESS START”以外でも何度も『ザナルカンドにて』の指揮を振っていて、日本中のオーケストラで広めているんですよ(笑)。

――『リズム天国』や、『ファミコンここまで出てるのにメドレー』など、お客さんとのやり取りがある曲は、指揮を振る中で違いはありますか?

竹本 やはり楽しいですよ。お客さんの反応がその場で返ってきますよね。通常は1曲が終わった時点で拍手をいただいたりしますが、その場その場の反応がダイレクトに返ってくるのですごく楽しいです。気分的にも指揮を振っていて乗ってきますね。

――まだ決まってはいませんが、来年のPRESS STARTに向けての抱負をお願いします。

竹本 今年の回で出た遊びの要素を増やしながら、よりオーケストラの深みも併せて楽しんでいただけるといいかなと思いますね。楽しい曲ばかりじゃなく、心にしみるようないい曲を演奏する、そういう両方のベクトルを探っていきたいです。
 

 お客さん参加型のインタラクティブなオーケストラコンサートとして、新たな一面を見せた“PRESS START 2009”。じつにバリエーション豊かな楽曲が披露され、中には演奏された楽曲に惹かれてゲームに興味を持った方も多いのでは。2006年から今年で4年目を迎えたが、ゲーム音楽オーケストラコンサートの代名詞として、今後もぜひ継続していってほしいとの声も多い。演奏してほしい曲のリクエストなどは、公式サイトで随時募集をしているので、興味を持った方はぜひ投稿し、来年の開催へつなげる一助となってほしい。


(取材・文章:世界三大三代川)

 

※"PRESS START 2009"公式サイトはこちら

※"PRESS START 2009"の速報、セットリストはこちら

 

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