広島大病院(広島市南区)循環器内科の東幸仁准教授の医療チームが、壊死(えし)した足を切断せずに温存する再生医療に取り組んでいる。2002年4月の開始から今月22日までの症例は60症例に達した。患者本人の骨髄細胞を患部の周りに移植して新たな血管網をつくる。
糖尿病などの生活習慣病によって血管が細くなり、末梢(まっしょう)血管が詰まる閉塞(へいそく)性動脈硬化症が進むと、指先が壊死する。感染症などの危険が高まるため、健康な血管がある太ももやふくらはぎから切断しなければならないケースが出てくる。
全国で年間約1万人が足を切断している。東准教授は「患部周辺の血管を増やして、酸素や栄養を循環させる。動脈硬化の症状を緩和することで、切断を回避できる」と説明する。
治療は患者の骨盤から骨髄液を抽出。血管の基になる骨髄細胞を分離し、患部周辺の筋肉50〜60カ所に注射する。本人の細胞を移植するため、拒絶反応は少ないという。治療を受けた患者の8割は2〜4週間で血管が再生し、切断せずにすむ。
東准教授は今後、骨髄細胞を細胞バンクで増殖し、繰り返し移植して効果を上げる方法の実用化も図る。
【写真説明】<左>レーザーを使って計測した移植前の血流。壊死した親指近くは血液の循環がほとんどない<右>移植4週間後の血流。血管が増え血流が改善した(いずれも広島大提供)
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