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国立新美術館開館記念展 「20世紀美術探検―アーティストたちの三つの冒険物語―」
  2007年1月21日 - 3月19日

  国立新美術館  東京都港区六本木7-22-2
  休館日:毎週火曜日(祝日又は休日に当たる場合は開館し、翌日休館)
  TEL 03-6812-9900 http://www.nact.jp/

 1月20日
国立新美術館のオープニングに行ってきました。

 「この美術館の英語名は THE NATIONAL ART CENTER ,TOKYO というてるんです。 ミュージアムじゃないんですよ。国立新美術館とはどういう美術館かとメディアに聞かれて、公募展のための貸会場で、企画展をするのでも新聞社主催。あくまでも貸会場であると、何回もテレビに出て丁寧に説明しているんですけど、イメージが違うからなのか公募展の部分はカットされてしまうんです。それが無性に腹立たしい。テレビで報道しているのを聞くと、日展や公募展の 『こ』 の字も言わない。それはごまかしだよ。誰がこの広報しているのか、最近不信に思っているんです」

 と藤田さん。ならばカットされた部分をネットでご紹介することに致しましょう。

 開催中の展覧会の詳しい情報は http://www.nact.jp/ から (しかし重いサイトだ)

・・・六本木ヒルズの森美術館や泉屋博古館分館、サントリー美術館など、さまざまな美術館が六本木に集積されて、東京のアート・スポットになると、かなりテレビで報道されていますね。

 でも国立新美術館に来る客と、サントリー美術館に来る客と森美術館の客層はぜんぜん違いますよ。

・・・逆に言えば、六本木にこの美術館が浸透するかどうか、心配な部分はありませんか。

 場所的な問題じゃなくて、ここはどうしたいのかという規定をはっきりさせることですよ。

・・・規定ですか。

 公募展をやることが古くさいというか。「時代遅れなことをやっているんだ」 という意識が、文化庁側の方にすごくあるから貸会場だということを出さないのか。つまり公募団体を見に来るのは公募団体の身内やない。都美術館は、企画展の人数は出すけど公募展の入場者数は出せへんでしょう。
むしろここは都美術館と同じような対応の仕方をしているんだよね。それやから結局美術館なんかどうでもいいと思われるんだよね。施主は公募展のために作りましょうといってるのに、中で動いている人間と意志の疎通がないんだもの。だからもっと等身大の姿を見せるべきなんですよ。

・・・テレビに 「公募展とは何か」 という説明をするのが難しいのですか。

 そう。テレビの人間に美術団体とはどういうものかと説明してもピンとこなかった。まだ新聞社主催の方がわかりやすい。つまり絵描きが絵描きのために団体を作り、絵描きが金を出して展覧会をやるということがもうひとつピンと来ないみたい。むしろテレビは経済効果ばかりあげていて、例えば新しい文化の街づくりとかね。経済の側面から見ているんです。
いちばん初めに放映したのは12チャンネル、美術が作る経済効果というようなタイトルで、経済番組で紹介されました。話としては何故地方の美術館があかんようになったか、強いて言えば努力をしてないんやないかとか、美術館の床が高いとか、普通の議論でいうてたんです。

・・・なるほど。ところで国立新美術館は、建設費が350億かかったと聞きました。膨大な金額をかけたは良いけれども、赤字が出るのではないかと言う噂がありますよね。

 ここの運営費用をどのぐらい見込んでいるのか聞きましたら、まだわからないと言われたんですが、でも80〜100億くらいじゃないかと、僕が計算したところによると、むこう五年展覧会は全部埋まっているので、20億円ぐらいは入ってくるじゃないかと思うんですよ。
それは多分日彫展が野外彫刻展示で埋めたのと、多分日展が企画展示室を全部占めたいと思うのを、結局うまくいけへんから彫刻だけ野外彫刻にするからだと思うんです。それでプラスαされているから、少なくても近代美術館などよりも、運営率はいいんじゃないですか。確実な収入源があるわけですから。

・・・そうすると赤字にはならないんですか。

 いやそれはなりますよ。他の美術館と違ってここは常設展示がないから、お金の取り方をどうするのか、多分貸会場として一括で取るか、それとも全部の収益の光熱費+何パーセントで取るとかすると思うんです。それにまさか各新聞社がこの巨大な空間で閑古鳥が泣くような展覧会はせえへんでしょう。
閑古鳥が鳴くのは文化庁が直轄してやるやつだけですよ。文化庁が直でやる DOMANI とかメディア蔡とかはいいんじゃないですか。自分のところがやって自分ところが損するんだから、要するに問題なのは横浜美術館なんかよりも、圧倒的に効率が悪いことなんです。空調をみればわかるじゃないですか。

・・・ガラス張りで巨大な空間ですものね。日射熱・紫外線を100%カットする省エネ設計と云われれているけれど、ランニングコストが高くつき過ぎるかもしれないということですね。

 あと人件費ね。すごく効率の悪い建物ですよ。横浜美術館が光熱費だけで年間5億とかいうてるんですよ。でもここは多分年間80億とかかかるんじゃないかなぁ。
でも俺がいちばんここで腹が立つのは、学芸員の人たちが、この美術館を現代美術の美術館にしたいんだという思い。ここは公募展の会場ですよ。それをここの学芸員が認識しない限り無理。ここは公募展の人たちを如何に的確に演出していくかに専念していいと思うんだよね。

・・・専念していないということですか。

 していないから、「20世紀美術探検−アーティストたちの三つの冒険物語−」 (国立新美術館開館記念展) をするんじゃないですか。ここは本当は文化庁が直轄して、「日展100年展」 を立ち上げ展にすれば良かったんですよ。

・・・昨日現代美術館のオープニングである評論家の方が云われていたのですが、日展隠しだと・・・。

 そんなことない。逆にいうと、日展隠しどころか、そういうことに関わりたくない人たちばかりなんですよ。だから唯一で最後に自分たちが自主企画できる 「20世紀美術探検−アーティストたちの三つの冒険物語−」 という大展覧会をやりたいということじゃないですか。全部で6000平米で使ってるんですよ。

・・・(本当に大きいので見るだけで疲れる) そうすると企画はこれで最後なわけですね。

 そうです。基本的には、企画展は新聞社の企画だし、貸会場として公募展に貸すわけだから。今の文化庁の予算では、文化庁独自で企画をする余力はないでしょう。

・・・先ほど話されていたように、もう五年間埋まっているのであれば、別に何も問題はないじゃないですか。

 問題はないんです。ですからここの美術館は、他の国公立の中でも、優良美術館になるだろうと。だから日本の美術館というのは、美術館ではなくて展覧会場を皆が欲しているんだということ。だから学芸員がヨーロッパ並の美術館など求めるなと言いたい。単純にそういうことなんです。

・・・藤田さんが怒っているのはそういうことなんですか。

 そう。それにも関わらづ、これが国際美術館です。地域に影響を与えるんです。みんなのための美術館なんですよって、いうなよ。これは昔ながらの公募団体のための美術館なんだよ。日本の新聞社が主催してやり、作家たちが借りてやる美術館でどこが悪い。
テレビが公募展の話をカットするということは、どこかで広報の人たちが、単なる貸会場になるんだということを極力隠したいんからじゃないかと勘ぐってしまいますよ。本格的な美術館が出来るんだという演出ばかりをしたがっている。でもそれは結局、西洋的な美術館を作らなければならないとか、俺達は時代をリードしなければならないとか、いうたら悪いけど、変な劣等感だよね。だからいうねん。
ここはものすごく日本的な美術館ですよ。日本は美術館が大衆化されてないというけれど、日本ほど美術館が大衆化されているところはありません。だからあんな高級レストランはいらんのですよ。

・・・去年、川崎市民ミュージアムの館長(http://www.gaden.jp/info/2006a/061208/1208.htm)に話を聞いたのですが、その時に市民のためのミュージアムだということをかなり力説されていました。これからは市民のためのギャラリーを作って市民のための美術館になるんだといわれていた。ですからこの美術館は、国民のための美術館であるということですね。

 そういうことです。国民のための美術というものを支えてきたのは、全国規模における公募展だという理屈でしょ。だから今の政治家の人たちがいうてることというのは 「税金で作られたものは、あらゆる人間に幅広く開かれるべきである」。日本の今の政治の状態というのは、「この作品が良いから、この作家は良いからという支援は出来ない」。
つまり今の文教行政では 「均等にその場所とか機会を与えることしか出来ないんだ」 ということをちゃんといっている。だから新しい作家を売り出すとか、世界に発信しようなんていう意思はないんです。ないにも関わらづ学芸員はやりたいんだ。何故かというとつまりベネチアビエンナーレのコミッショナーになったりすることが彼らの目標だから。そういうギャップがある。

 美術館が本当に公共のためにあるには、人が一人もはいれへんかったとしても、保つ美術館を作るべきなんだ。文化とそういうもんだから、その時に美術の公共性とは何かということを問うた時に、結局ものやないんだよね。キャッチフレーズは、皆に開かれたスペース。それしかない。
だから九州の美術館は、歴史博物館的な要素を廃止しているじゃないですか。何でもやる。本当であれば博物館というのは、自分たちの歴史観や価値観を主張するところですからね。そうしたら学芸員は、国家の歴史観とは何かを問うべきなんです。でも今の国立の美術館の人たちは、それをいちばんやりたくはない。
自分のことは言いたいけれども、国家としては何かということをいちばん言いたくないんですよ。つまり日本には美術館が好きなやつなんか一人もいてない、一般の人は、展覧会を見に行くんですよ。つまり歴史観がどうの、コレクションがどうの、学芸員活動がどうの、世界に発信する美術がどうの・・、そんなことには興味を持っていない。
展覧会を見に行って観光を楽しむ。森美術館に人が入っているのは、六本木ヒルズという東京に出きた新名所だからですよ。

・・・そういえばテレビで、この美術館には 「ブラッスリーポール・ボキューズ ミュゼ」 (フランス料理界の頂点に立つポール・ボキューズ氏の正統なフランス料理を受け継いだブラッスリーが初出店) というレストランがあるからすごいといってませんでしたか。ランチが1800円 【前菜、メイン(肉or魚)、デザートつき】 するとか・・・。

 結局テレビではそればかりいうてるんですよ。地方から出てきた人や公募展のおじいちゃんやおばあちゃんがそんな高い料理食べますかね。

・・・美術を見るより、食べ物の方が楽しみだという人は多いんじゃないですか。今回のオープニングもブラッスリーポール・ボキューズ ミュゼが作っているのかな?

 でも公募展にしてみたら、ここでパーティーをやるよりも、上野でやる方がずっと安くつくと思うと思いますよ。

・・・また公募展が盛り返すということはあるんですか。

 経営者次第でしょう。二科の事務局長がこれからはインスタレーションも出来るだろうと云っているけれど、そんなことをしても無駄。つまり公募団体というはタブローで攻めているんだから、古い人間なんだから新しがるなよ、と。
現代にシフトする必要はなくて、今だからこそタブローというものすごくオーソドックスなものを充実させることが大事なんです。新しいことを模索していると、あかんようになる。だから潰れていくところもあるかもしれない。やはり経営能力のない人はあかん。

・・・それは藤田さんの持論ですよね。

 そう。それにここではタブローしか展示できませんよ。それ以外のことは幹部の人たちが地方や個展でやらしてあげればいいじゃないですか。自由美術を眺めていると、公募展の良さが逆に見えてきますよ。
作品がでかけりゃいいというものじゃない。適度な無理のない大きさで確実にタブローを自立させていく。それがいつでも求められますもん。公募団体はそれを守るべきです。
でも国画とかは、今までよりも会場出費だけで三倍かかる。会員はそんなに一挙に増えないし出品者数も一挙に増えない。各会員の負担が重くなるわけです。会場費が三倍になるということは、展示費も三倍になるんですからね。すべてが三倍になって五年以降持ち堪えられるかということで、五年過ぎたら以外に辞めようといところは多いかもしれませんよ。
結構きついもの。新制作とか二紀も二倍くらい取ってますからね。みんな必死ですよ。五年経ったら縮小せざるを得ないかもしれない。だから院展が上野に残るというたのは賢明だった。アホやない。それに各団体がブースごとに展覧会をやったら入館料は相当かかりますよ。

・・・公募展をまた見に行くのかなぁ・・・。

 ここ何年間は減るかもしれませんね。だからここのオープニングは、明治40年から昭和33年までの、文展、日展回顧展を全館使ってやるべきだと思いますよ。ちゃんとやることは筋道を通してやって欲しい。何だかんだいうても、この美術館のプライオリティーのナンバーワンは、公募団体展なんだから。
学芸員のプライオリティーが間違ってるんです。それは芦屋美術館が、本当はプライオリティーのナンバーワンは小出楢重なのに具体美術を押し過ぎるとか、川越美術館も相原求一朗なんですよ。府中だって何だかんだいうても牛島憲之なんですよ。でもそれが嫌なんだ。

・・・嫌なのかも・・・。

 でもね。少なくても国民の代表である政治家が、公募団体を支援する組織を作ることによって美術の振興を図るんだと決めた以上は、それは尊重すべきでしょう。それを時代遅れだとかなんだかと学芸員が決めることではないですよ。
しかし今までの美術館というのは、それをさも学芸員が決めてきたように思われている。もっと公共的な美術館・・・人が一人も入らなくてもそれを維持する意味を探さなあかんですよ。

 話がエンドレスになりそうなのでこのぐらいで終了させていただきます。藤田さんありがとうございました。

 今回の藤田さんのお話からわかったことは、テレビの報道というのはこういう風に作られていくんだということです。逆に言えば五年後にマスコミは何でこんな美術館作ったんだと云っているかもしれないしね。
別にオサルスは何かを糾弾したいわけじゃないけれど、日本では言いたいことははっきりと云えばじゃないかと思う次第です。

関連情報 藤田一人インタビュー 2006.8 2003.7

展評の連載記事  「国立新美術館とは何か? 〜あまりにも “日本的” な美術の現実」
http://www33.ocn.ne.jp/~artv_tenpyo/tenpyo.html

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