廃病院編:第1話「友達を驚かす奴こそ一番ビビってる」
※注意※ これは『フルメタルパニック:暗闇のペイシェント』を参考にしてアレンジしたお話です。 初投稿なのでダラダラな文章ですが、それでもOKな方はどうぞ。
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それは真夏の江戸にしてはやけに肌寒い夜のことだった。
万事屋の居間にある黒電話が鳴り銀時は電話を取った。 銀時の他に新八、神楽は酢昆布をしゃぶり双葉はピザパンを頬張っていた。トーストにトロケルチーズとケチャップがかけてあるだけだが。双葉はピザが大好物なのだ。 それも極度のピザ好きで一日に一度食べないと気がすまず、さらに三日以上食べないと禁断症状を起こすほどのピザラーである。万事屋に住み始めた頃は勝手に注文して配達ピザを食べていたが最近財布を隠されたためピザパン―双葉曰く「ピザもどき」―で渋々我慢している。 何度か相づちを打って銀時は電話を切った。
「誰からですか」
「三丁目の病院知ってっか?」
新八の問いに銀時は頭をかきながらこたえる。
「それって十年前の大火事で廃墟になった病院ですよね。最近幽霊が出るとかで誰も近寄らなくなったって」
「その幽霊を調べて欲しいんだとよ。ホントにいんのか」 「えぇ!?マジですか」 「ったく、冗談じゃねぇよ。万事屋だからってンな事まで依頼すんなっての」 「あそこ行くんですか?やめた方がいいですよ。僕あの病院の怖い噂たくさん聞きましたよ。それに銀さん幽霊苦手なんだから断った方が…」
新八の一言に銀時はムッとした表情に変わり、口元も急に不安定になる。
「ちょっと新八君なに言ってんの。おお俺ゆゆゆ幽霊怖くないよ。仮にも主人公だよ」
「いや、ビビってんの丸見えなんだけど」
新八の冷めたツッコミを無視して、ソファーに座る神楽と双葉に向き直った。
「神楽、双葉。お前らも来い」
「えー嫌アル。夜遅く起きてたらお肌荒れるアル。明日の昼行けばいいネ」 「昼に幽霊が出るとは思わんが」
ピザもどきを口にしながら双葉は容赦ないツッコミをいれた。
「うっせーよ、ピザ女」
「黙れ酢昆布娘。私は常識的なことを言っただけだ」
ソファーの間のテーブルを挟んで女の火花が散る、といっても一方的に送っているのは神楽で双葉は目も合わせずピザを食べているが。
それでもまだ火花を送り続ける神楽の頭を銀時は軽く叩いた。
“ゴチンッ”
「ほわちゃっ。痛いよ銀ちゃん」
「コラコラ喧嘩すんなって。ほら『みんなで行けば怖くない』だよ」 「銀ちゃん怖いアルカ?」 「だーから違ェっつってんだろ。酢昆布買ってやっから俺についてこい」 「仕方ないネ。そこまで言うならついてってやるアル」
行くよ定春、と巨大な白犬を連れ神楽は玄関へ歩く。
神楽が外に出たことを確認すると銀時はまだソファーに座っている妹を見る。
「おい、お前も来いって」
少し前のこと。
遠方の依頼で万事屋に双葉を残して出張した時、アイツ―高杉が現れ双葉を連れ戻そうとした。その時は銀時が間一髪で駆けつけ高杉はすんなり立ち去ったが、あのまま終わると思えない。 一人になればまた現れるかもしれない。そうなったら今度こそ― ただ、双葉がそこまで気にしているかわからないがまた一人にさせるのもどうかと思う。 そう銀時が考えていると双葉はピザもどきを食べ終えボソリと呟いた。
「真夏の特大ダブローピザ」
「…わーったよ」
兄の溜め息混じりの返事を聞いて双葉も立ち上がった。
かつては江戸一の大病院だったが十年前の大火事で廃墟となり院長だった老夫婦も引っ越してしまい買い手がつかず放置状態。若者がフザけて入ることもあったが『子供の笑い声が聞こえる』『血まみれの少女が襲ってくる』などの怪現象が起こり誰も立ち寄らなくなった。
しかし、今宵は廃病院の前に三人と一匹の人影。
「新八来なかったな」
「臆病者がいても足手まといになるだけだ。全く、どうしようもない駄メガネだ」
本人がいない所でも構わず罵倒を口にする双葉を横に銀時はかつて病院だった廃墟を見上げた。月明かりがあるはずなのにココだけやけに暗く黒いモヤに包まれている…ように見えるのは気のせいか。
「しっかしマジで出そうだな。まぁ俺全然怖くねェけど」
「アァ!」 「おわっ!!…いきなり大声出すな。神楽どったの?」 「銀ちゃん、今あそこの窓からお婆さんが私たち見てたヨ」
すぐさま神楽が指さす窓を見るが老婆などいない。
「なっ!?…誰もいねーじゃんか。な、何お前そんなんで脅かそうとしてんのォ。馬鹿じゃん。んな子供騙しで俺をビビらせようなんざ、ひゃ百年早ェんだよ」
どーみてもビビってんの丸見えだが神楽は反論もせずただ黙りこんでいる。
その顔色は青ざめてるように見えた。
「……私用事思い出したアル。ドラマ見なきゃ。今日最終回ネ。ピン子どーなるか気になるアル。ほら、定春はやく帰るヨ」
ワン、と吠えて定春は神楽を乗せたまま来た道を戻っていった。そして定春は角を曲がり姿も見えなくなった。神楽が戻ってくる様子は全くない。
「んだよ、どいつもコイツも。さっさと調べて帰るぞ。たく、入る前にけェるなんて興ざめもイイとこだ」
銀時はブツブツと文句を漏らしながら薄暗い廃病院の入り口へ足を運ぶ。
「全く度胸のない天人だ。老婆が立ってただけで帰るとはな」
さらりと言った妹の一言に今度は銀時が青ざめた。
足を止め抵抗を感じつつも振り返り、恐ろしい発言をした妹を見た。
「…お前も見たのかァ?」
「あの天人が気づいて私が気づかないわけないだろ」
双葉は普段と変わらない冷めた眼で淡々と真実を告げた。
「おいィィィ!なんでそんな冷静にしてんだ!?フツー廃病院にババァがいたら変だろ!怖ェだろ?!」
「ボケた老婆が道に迷って病院を徘徊しているだけかもしれない。見つけたら兄者が幕府の狗の処へ届ければいい」 「な、なんで俺が屯所に?俺は絶対ヤダからな。得体の知れねーババァの世話すんの絶対ェやだからなッ!」
双葉の考えもありかもしれないが、夜の廃病院に老婆というだけで普通なら寒気を感じるはずだ。だが、どよめく兄の訴えを聞いても双葉は少しも表情を変えない。
「兄者、怖いのか?」
「怖くねェ。俺全然怖がってないもんね。ユーレイ信じてないもんねェ。ほら、さっさと行くぞ」
懐中電灯を手に銀時は先陣を切って歩いて行く…がすぐその足は止まり、額に冷や汗を流しながら銀時はまた振り返る。
「やっぱお前先行け」
兄の情けない一言に双葉はより一層目を細め心の中で溜息をついた。
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双葉ちゃんの容赦ないっぷりに始終ヒヤヒヤしましたwww
続き楽しみにしてます♪
2009/8/2(日) 午後 2:42 [ 閑古鳥 ]
オリジナル小説なんですか?
2009/8/3(月) 午前 6:31 [ 24 ]
コメントありがとうございます。
コメ返信はこちらで
→http://blogs.yahoo.co.jp/doraemonffandkh2/20243949.html
2009/8/29(土) 午後 11:01 [ Karen ]
突然の訪問すみません><
超面白い!
途中に絵とかあっていいです!
文も読みやすくて良かったです!
傑作ポチッ
2009/8/30(日) 午前 11:09