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かながわ瓦版/本当にワースト5?
- 2009/09/22
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「アユ群泳、自然豊か」
国土交通省が7月に発表した全国調査で、水質がワースト5位だった鶴見川。1972年の調査開始以来ランキングの常連で、汚い川という“レッテル”を張られ続けている。だが、近年は清流を好むアユやハグロトンボの群れが確認されるほど、水質が改善しているという。国交省京浜河川事務所は「ランキングの水質指標は都市を流れる鶴見川に不利」として、評価方法の見直しに取り組んでいる。
■水はきれい?
「鶴見川の水質はきれいで透明度が高い。日本のすべての川の中でワースト5位という評価は誤解」。鶴見川の環境保全に取り組む市民団体「鶴見川流域ネットワーキング」の小川範和事務局長は訴える。
ランキングの調査対象は全国20万本以上ある川のなかで、1級河川約1万4千本の一部の166本。
北海道や東北など自然が豊かな地域を流れる川が多く含まれており、東京や大阪圏の市街地を流れる一部の河川は不利な状況にある。
小川さんは「わずか166河川のなかでの評価が、全国すべての川のランキングと誤解されている」と話す。
■汚染度高めに
ランキングの水質指標には、微生物が川の汚れをきれいにするために必要な酸素量を示す生物化学的酸素要求量(BOD)が使われている。しかし、京浜河川事務所の担当者は「BODは、下水道が普及する前の時代では有効な指標だったが、下水処理水が流量の大部分を占める最近の都市部の河川では、BODだけで水質を評価するのは難しい」と指摘する。下水処理水にはアンモニアなどを分解したあとに残る硝化細菌などにより、BODでは汚染度が高めになるという。
同事務所によると、鶴見川水系全体の水質は下水処理場が集中する下流部の4地点で計測され、下流域では流量の約6割を下水処理水が占めている。
■美しさを見て
川の水質を正確に知ってもらおうと、同事務所は2005年から、人がにおいをかぎ、水質を観察した評価も加える新指標「水質のふれあい等級」を全国に先駆けて試験導入。同等級は、08年には全国の342地点で調査が行われるようになり、徐々に広まっている。鶴見川は同等級では、水のにおいでは最高の評価、透明度も上から2番目になるという。
20年以上鶴見川支流の早渕川を観察してきた横浜市都筑区の関秀二さんは、今月5、6日、青葉区内の早渕川でアユやハグロトンボの群れを見つけた。関さんは「鶴見川は決して汚い川ではない。ランキングにとらわれず、身近な自然の豊かさ、美しさに目を向けてほしい」と話している。
◆鶴見川 東京都町田市を源流に、横浜市鶴見区の河口から東京湾にそそぐ1級河川。全長42.5キロ。