- ニュルブルクリンクへ
- 山内一典 / “グランツーリスモ”シリーズプロデューサー
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「ところで、山内さん、今度、ニュルブルクリンク4時間レースに出ませんか」
電話の主は国際モータージャーナリストのピーター・ライオン氏。
ぼくはドキリとして一瞬言葉に詰まったのだけれど、たぶん1秒後には「出る、出るよ、出ますとも」と答えていたような気がする。
クルマが好きで、クルマの運転も大好きだったが、「レース」というものからは意図的に距離を置いていた。
なんでかって、それは、自分の人生・・・というか仕事そのものがレースのように勝負の連続なのに、これ以上の勝負なんて引き受けられるかよ・・・と思っていたからだ。
今回、自ら禁じていた、そんな依頼を思わず受けてしまったのは、たぶん「ニュルブルクリンク」という言葉のせいである。
「ニュルブルクリンク」でなければ断っていただろうと思う。
クルマ好きにとって「ニュルブルクリンク」という言葉は、登山家にとっての「アイガー北壁」とか「エベレスト」というのとほとんど同じで、そこには名状しがたい魅力があるのだ。
「そこに山があるから」と言ったのはマロリーだが、クルマ好きなら「そこに道があるから」などと思わず口走ってしまいそうな場所がニュルブルクリンクである。
ぼくはニュルブルクリンクの誘惑に負けた。
引き受けてしまってから、おろおろした。
どれほど危険なコースか、ということは当然ながら知っているし、200台近いクルマが出走する混乱に満ちたレースで起きるであろう、あれこれを想像しようにも、そもそもレースの経験があまりになさすぎる。『グランツーリスモ』PSP版の制作が佳境に入っている中、深夜のオフィスの隅で、ぼくは、こそこそと体力トレーニングを始め、早朝の首都高を走って左足ブレーキングの練習をした。
「モーターレーシングとは、男がズボンを脱がないでする、もっとも楽しいものである」との格言が彼の地ドイツにはあるらしい(メルセデスベンツのテストドライバーから聞いた。本当かどうか知らない)のだが、ぼくにはそれを楽しむ余裕など、どこにも無さそうに思えた。
実際のところ、ぼくが引き受けてしまったのは、単なる個人的なチャレンジではない。
“グランツーリスモ”での運転経験が実車のドライビング・スキル向上に直結していることはわかっていた。また、昨年に行われたGTアカデミーのプロジェクトを通じて、それを客観的に証明することもできたのだが、何にせよぼくがレースに出場する、ということは“グランツーリスモ”を支持してくれている、とびきりクルマ好きなファンの期待を背負うということで、だからこそ、その目標は「いきなり、あのニュルブルクリンク!」でなければならないのだ。
レースに出ました。がんばりました。楽しかったです。
では終わらない、終わらせてはいけない。
げ・・・思っていた通り、やっぱり勝負が増えているではないか。
つづく
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