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きょうの社説 2009年9月22日
◎「増える空き家」対策 まちなか活性化へ管理強化
増える空き家に対して、石川、富山両県の自治体が空き家を減らし、まちなかを再生す
る取り組みを強化している。金沢市は空き家のリフォーム費用などを助成する新制度の創設を検討し、富山市などは「空き家情報バンク」の充実を図っている。特に地方で空き家が増えている背景に、過疎化の進行や高齢化などがある。市街地では 若い世代が郊外に引っ越し、空き家となるケースも目立ち、まちなかの空洞化が懸念されている。空き家を放置すると火災や倒壊など防犯、防災、景観面などに悪影響を及ぼし、まちづくりの大きな障害となる。各自治体は定住人口を増やす対策と併せて、空き家の現状を十分把握し、管理の強化につなげてもらいたい。 総務省の2008年の住宅・土地統計調査(速報)によると、全国の総住宅数に占める 空き家の割合(空き家率)は13・1%を占め、5年前の前回調査を0・9ポイント上回り、過去最高を更新した。石川県の空き家率は14・6%(前回調査比1・1ポイント増)、富山県は12・3%(同0・7ポイント増)で両県とも増加傾向を示している。 市街地の空き家対策として、金沢市は、来年度に改修などを助成する新制度を創設し、 移住希望者と所有者を結ぶ情報提供などを通じてまちなか定住を促進することにしている。 「空き家情報バンク」をホームページ上に設けている自治体も増えており、富山市は5 月に空き家情報に関して県内の不動産関係の団体と協定を結んだ。貸し手と借り手が十分に条件のすり合わせができるように、きめの細かい情報の収集と発信が求められている。また、現状の空き家に対しては、所有者や管理者と連絡を取りながら、住環境の劣化に歯止めをかけてほしい。 所有者が老朽化した建物を取り壊さない主な理由に「解体費用」が挙げられ、滑川市で は空き家のうち土地・建物を市に寄付したものについては市が解体している。まちの活性化を左右する空き家・空き地問題は、所有者、行政、地域に共通する課題であり、連携して有効活用を促進させたい。
◎日米安保再定義 問われる「対等」の中身
鳩山政権の外交が本格的に動き始めた。その柱である「緊密で対等な日米同盟」の実現
に向けて、岡田克也外相が日米安保体制の再定義をめざす方針を示した。民主党はこれまでの自民党政権と同様、日米同盟を「日本外交の基盤」と位置づけて重視しているが、「対等」な関係とは具体的にどのような状態を指すのか、あいまいなままである。日米安保体制は冷戦後の1996年、従来の「極東」から「アジア・太平洋地域」の安 定維持のための基礎と再定義されたが、安保条約が来年、改定50年の節目を迎えるのを機に、キャンベル米国務次官補も以前、日米同盟の意義を再確認する必要性を指摘した経緯がある。社民党などと連立を組む鳩山由紀夫首相は、同盟の再定義に当たり、「対等」の中身を具体的に語ってもらいたい。 民主党は、アフガニスタンやイラクで展開される米国の対テロ戦に積極的に協力してき た自民党政権を「対米追従外交」と批判し、政権公約で「主体的な外交戦略を構築した上で、米国と役割を分担しながら日本の責任を積極的に果たす」と主張している。 米国の要求を受け入れるばかりでなく、日本として言うべきことはきちっと主張すると いう民主党の外交姿勢を示すものであるが、「緊密」かつ「対等」な関係をめざすとなれば、常識的には、日米安保条約をもっと双務的な内容にする意味にも受け取れる。 端的に言えば、憲法で禁止されていると解釈される集団的自衛権の行使を容認して、は じめて対等の関係になるともいえるのだが、鳩山政権はその点をどう考えているのだろうか。対等の立場で日米同盟を再定義するとすれば、集団的自衛権行使に関する議論を避けて通るわけにはいくまい 民主党は沖縄の普天間飛行場移設を含む在日米軍再編計画の見直しと、日米地位協定の 改定を提起している。内政の政策変更と違って政府間の合意事項の変更は容易ではない。東アジアの秩序維持や国際社会の安定に果たすべき日米同盟の役割を深く考えて、取り組んでもらいたい。
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