群馬・長野県境の荒船山(1423メートル)のがけ下で、20日に遺体で見つかった漫画家の臼井儀人さん(51)の死去を受け、人気漫画「クレヨンしんちゃん」の版元である双葉社が21日、都内で会見を開いた。同社の関係者は、臼井さんが所持していたデジタルカメラの最後の画像が、がけの上から下を撮影した写真だったことを明かし「写真を撮る際に足を滑らせたのではないか」と事故による転落死の見解を示した。
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「好奇心旺盛で取材熱心だった」という臼井さん。高さ300メートルの艫岩(ともいわ)から、下をのぞきこんで写真を撮ろうとして、滑落したのか-。
群馬県警は、事故と自殺の両面から捜査しているが、会見した赤坂了生編集局長は「不慮の事故死」との見方を示した。
その理由として、現地を訪れた島野浩二編集局次長によれば、群馬県警からデジタルカメラには30枚の写真が残っており、最後の1枚はがけ上から下を見下ろすように撮った写真だったことを挙げた。さらに、JR大宮駅や高崎駅での防犯カメラに映った臼井さんの様子が普段通りだったことからも、自殺の可能性は低いとみている。また荒船山への登山は初めてだったという。
臼井さんは、照れ屋で子供たちの夢を壊したくないという思いから、同社でも臼井さんの写真を1枚も所持していないという。臼井さんの人柄について、最初の担当編集者だった島野局次長は「笑いが絶えなく朗らかな人。周りの人に気遣いしながら、おごることなく怒ることのない好人物だった」と語った。
また、現在連載中の雑誌「まんがタウン」は、すでに臼井さんからは2回分の原稿をもらっており、11月5日発売の12月号までは掲載し、その後は未定。10月5日発売の11月号では、数ページの追悼特集を行う予定。アニメを放送するテレビ朝日も、今後については「現時点では未定。遺族と相談してから」としている。
葬儀は近日中に近親者のみで密葬を営み、遺族と相談してお別れの会の開催も検討する。